「整理する技術」は3段階ある!
E子:私、本当に整理整頓が苦手で……。性格が向いてないんですかね?
冨山さん(以下、敬称略):そんなことはないですよ! 整理できない理由として、ずぼらだからとか、意識ややる気が低いからと言われがちですが、そうではありません。行動科学では「正しいやり方を理解していない」からだと定義しています。
掃除ができていないから、結果的に「ずぼらだな」と言われるだけです。正しい掃除の仕方をしらないだけであって、その人がずぼらなのではないのです。
Y子:私も整理整頓が苦手で、よく同僚に指摘されます。でも、そもそもなぜ整理が必要なんでしょうか?
冨山:時短で働いている方はなおさら時間の使い方が重要です。探し物をしているうちに帰る時間が近づいてくる、なんてことがないようにしたいですよね。
行動科学において、“整理する技術”は3段階あります。まずは、必要なものと不要なものを分けます。
2つ目に、残った必要なものを、どこに何をしまうかすべて決めます。これを“定物定置の法則”といいます。
3つ目は、“仕組み化”を取り入れます。正しい整理の仕方を知ったとしても、やったりやらなかったりするときれいな状態になりません。掃除しようと考えなくてもいつでもきれいな状態になっている、というのが理想です。
いつまでたっても捨てられない書類やノートは…?
Y子:記者時代のノートに、1箇所くらい重要な電話番号が書いてあるかもしれないと思うと、それで捨てられなくて、机の引き出しのひとつはそんなノートで埋まってしまっています。
E子:デジタルではなく、紙で育った世代の“あるある”ですね。
冨山:ノートも必要ないのであれば、シュレッダーしてしまうことを、行動科学ではすすめています。大切な思い出ということであれば、とっておいてもいいのですが……。
Y子:10年間、1度も開いていないノートもあります。
冨山:通常、「1年使用していないようであれば処分しましょう」と言っています。“いつか”が来ない可能性が高いようであれば、処分しましょう。必要・不要のほかに“思い出”という分類もあります。それは「思い出ボックス」を作って入れましょう。
「すぐシュレッダー、すぐデータ保存、すぐ捨てる」
Y子:掃除の時間が決まってたら、いざその時になると「急ぎの仕事しちゃえ」となっちゃうんですよね。
冨山:机のうえに関係ない資料があっても、気にならないのですか?
Y子:「狭いところでもいいや」って思っちゃいます。整理すると、仕事の効率は本当に上がるんでしょうか?
冨山:確実に上がります。「いまここ」に集中してほしいので、これまでやこれからの資料は目に届かないところにしまっておきましょう。
その方が生産性が上がり、品質が上がると言われています。思考もクリアになります。
モノがあっても気にならないという人にとっても、視界では捉えているので、実際には気になっているはずです。脳をクリアにするためにも、机周りはきれいにしておいた方がいいと言われています。
そのためには、物を捨てるところから始める必要があります。自分の中で「これ必要?」と問いてほしいのです。
「必要かもしれない」は、必要ではない可能性が高いので、捨てる勇気がなければ「とりあえずボックス」にしまっておきます。
1週間、あるいは2週間や1カ月と期限を決めましょう。その間1回も開かなかったらもう不要なものとして決定するので、思い切って捨てましょう。
“捨てる”というのは習慣です。1回捨ててみて「大丈夫だ」と思えたらどんどん捨てられるようになります。
「すぐシュレッダー、すぐデータ保存、すぐ捨てる」というのが行動科学の考え方です。
片付けタイムはいつがいい?帰る前?休憩中?
E子:編集部のSさんの机はきれいなんですけど、毎日帰る5分前に“要らないものを捨てる”と決めているそうです。日中はいくら汚くしても仕事中だからOKと。ただ業務終了の5分前にはきっちり片付けて帰るようにしているそうです。
Y子:帰るときは、もう時間がなくて走りださなきゃ!みたいな感じだから、片付けられないなぁ。「あっ帰っちゃいます!? あの件なんですけど〜」みたいに、帰るぎりぎりになって話しかけられちゃったりすると「もう片付けはいいや!」と諦めてしまいます。
冨山:Y子さんの場合、帰らないといけない時間が迫っているときはアドレナリンが放出されていて仕事モードになっているのでしょう。戦いモードになっているときは「片付けしよう」という気分になかなかならないですよね。
そのためには、仕事のピークを前倒ししましょう。そうすると帰る時間の直前は、穏やかな気持ちで片付けができるはずです。
それが難しいようであれば、午後の仕事の山をひとつ登り終わった15~16時頃に、休憩時間のかわりに、片付けタイムを設けましょう。
Y子:それならできるかも!
冨山:行動科学的には就業時間の終わりに片付けるのが理想的なのですが、実は私も休憩時間に片付けるタイプなんです。
仕事がひと段落した。でもぼーっとするのは気が引ける。そんな時に要らない書類をシュレッダーにかけていると無になって、だんだん疲労が回復していくんですよね。仕事と仕事の合間のリフレッシュタイムに机の片付けをするのもおすすめです。
デスクトップがカオス?整理整頓するには
冨山:パソコンのデスクトップの整理ができない人も多いですよね。
E子:はい!見てください。この通りです。カオスです。
冨山:けっこうすごいことになってますね。デスクトップに書類を保存しないほうがいいですね。
E子:面で保存したくなっちゃうんですよね。机の上にうわっと並べるイメージで、デスクトップに広げたくなる。頭の中が階層化されていないんです。
冨山:書類をフォルダ分けにするのは面倒ですか?
E子:やろうとはするんですが定着しないんです。職種にもよりますが、アラフォー世代にはデスクトップに広げちゃう人が多い気がします。
冨山:デスクトップに保存する人としない人は、本当に分かれます。面で見るメリットがないのであれば、習慣を変えてもいいタイミングかもしれないですね。
フォルダ名や書類名は会社名や日付で統一するといいですね。すぐ検索できる状態にしましょう。そうでないと、探すのに時間がかかってしまうので。
E子:例えば富山さんだったら書類にどんな名称をつけますか?
冨山:私だったら、「小学館_kufura_原稿_第1回_20171110」ですね。そうすると検索すると必ずひっかかりますね。「小学館」でも「kufura」でも「原稿」でも。
いただいた書類そのままの名称で保存すると、わからなくなることがあります。ですので自分ルールで名称をつけ直すようにしていますね。そうすると絶対になくなりません。
いつでも検索できるようなファイル名にしておけば、あえてデスクトップに広げる必要がなくなるはずですよ。
フォルダに入れておいてもなくならない、大丈夫だと思えるようになると、どんどん捨てられるし、どんどんフォルダに入れられるようになりますよ。
年末の大掃除に取り入れたい“書類を整理するコツ”を教えていただきましたが、いかがでしょうか?
せっかくキレイにした机まわりが新年早々リバウンドしないよう、行動科学の“整理する技術”の3段活用を、ぜひ試してみてくださいね!
構成・文/kufura編集部