熱中症かも?と感じたら
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おすすめは首のアイシング。
今回お話を伺ったのは、熱中症に詳しい救急医学のエキスパート・伊藤敏孝先生です。
伊藤先生によると、熱中症かも?と感じたら、まずは日陰やコンビニなど涼しい場所へ避難。できれば座るなどして体を休ませながら、首まわりを冷やすとよいのだとか。
「火照った体を冷やしたいときは血管を冷やしてみてください。全身をめぐる血が冷えるため、体温が効率的に下がります。このとき、首・脇腹・足の付け根など、大きな血管が通っている部位を冷やすこと。
中でも首は、火照りを感じる頭や顔に近く、服を着たままでもしっかり冷やせます」(以下「」内、伊藤敏孝先生)

首を冷やす方法で、先生のイチオシは「アイシング」。
アイシングとは、氷や冷水などを使って体の部位を冷やす方法です。スポーツでケガをしたときの治療や疲労を回復させるイメージがありますが、熱中症対策にもなるんですね。
「スポーツで行うアイシングも、ケガや疲労で火照った部位を冷やすという意味があります。
なぜアイシングがいいかといえば、氷はコンビニやスーパーなどでも手軽に手に入ります。外出先で暑さを感じたり、自宅から持ってきたネッククーラーや保冷剤がぬるくなってしまったときにも、ネックアイシングを知っているとよいでしょう」
「ネックアイシング」の方法と気を付けること
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筆者は、氷は『セブンイレブン』で。ビニール袋とフェイスタオルは自宅にあったものを使いました。
ネックアイシングをするときに、必要なものは3つ。どれも身近で揃えられるものばかりです。
<用意するもの>
- 氷
- ビニール袋
- タオル(手拭いや大きめのハンカチでもOK)



方法も、とても簡単。
<ネックアイシングの方法>
- 氷を用意する(外出先の場合はコンビニやスーパーで購入)
- 氷をビニール袋に入れ、首の後ろと両脇の3点に合わせてタオルなどで包む
- タオルを首に巻く
これだけです。
袋を直接あてても!ただし冷やしすぎはNG

気温33度の晴天を歩いて帰宅後、汗が止まらないので袋ごとのネックアイシングにトライ。タオルで包むよりすぐに冷えるので、やはり汗のひきが早かったです。
出先などで、ビニール袋やタオルがない場合もあります。その際は、購入した氷をパッケージのまま首に当ててもOKとのこと。ただし、冷やしすぎは避けましょう。
「アイシングは、冷たくて気持ちいいと感じるくらいにとどめます。また、氷を首に直接あてると低温やけどのおそれもあるので、できるだけタオルなどに包むことをおすすめします」
溶けてすぐの氷水は飲んでもいい

カップタイプをハンカチなどに包んで首にあてても。
また、氷から溶けてすぐの水を飲むのも有効なのだとか。
「溶けたばかりなら冷たい水ですので、外と内から火照りを冷やしてくれますよ。ただしお腹が弱い方は、冷たいものの摂りすぎも冷えすぎる原因になります。ご自身の体調と相談のうえ、飲んでください」
なお、溶けてから時間が経った水は雑菌などが繁殖している可能性もあるので、処分しましょう。
コンビニやスーパーでも購入できる氷で、すぐに実践できるネックアイシング。公園遊びの途中、なんだか子どもが元気がないかも? 外出先でクラクラしてきた……など。誰もに起こりうる夏場の体調不良に備えて知っておくと安心ですね。
熱中症予防・対策で「それNG!危険!」な行動とは?
nullこのほかにも、伊藤先生から熱中症予防・対策に関するアドバイスをいただきました。日頃、うっかりやってしまっているものもあるかも!? 本格的な夏が来る前に再確認を!
1:水風呂に入る
「熱中症対策にはとにかく体を冷やせばいいだろうと、水風呂に入る方もいます。これはやめましょう。体の表面だけが冷え、体内は熱いままになってしまいます。また、急激に全身を冷やすことで、血圧が上がる危険性もあります。実は、サウナの水風呂もあまりおすすめできません」
ちなみに手のひらや足の裏を冷やすのも、あまり意味がなく、過度に冷やすのはNG。
「四肢抹消は血流があまりないので、冷やしても全身のクールダウンにはつながりません」
2:水分の摂りすぎ
熱中症への備えには、“水分補給・塩分補給・体を冷やす”の3つが有効です。ただし“水分補給”は、かならず“塩分補給”とワンセットで行うこと。
「脱水になるからと、水分だけをとりすぎるのはやめましょう。たとえば部活や運動時にスポーツドリンクを飲む方は多いと思います。スポーツドリンクはナトリウム濃度が体内よりかなり低いため、摂りすぎると動けなくなってしまったり、ひどいと意識障害が起こる“ペットボトル症候群”に陥る場合もあります。
飲む量の目安は、500mlのペットボトル1本程度まで。それ以上の水分を摂るなら、塩分が含まれたものや塩分を別で摂ってください。
麦茶なら塩あめと一緒に。コンビニなどで手に入るソルティ味のドリンクもいいですね。脱水対策や予防には、やはり経口補水液がベストです」
3:朝ごはんを食べない
「朝、いそがしいからとごはんを食べない方もいます。飲まず食わずだと脱水状態になりやすく、熱中症につながる場合もあります。簡単なものでかまいませんので、朝ごはんを食べましょう。たとえばお味噌汁や、サラダのドレッシングにも塩分は入っていますよ」
要は、規則正しい生活が大事ということ、と伊藤先生。
ちょっとした不調がきっかけになるかもしれない熱中症。いつもに増して健やかに過ごせるよう、日頃の体調管理をしっかりと、元気に過ごしていきましょう!

【お話しを伺った方】
新百合ヶ丘総合病院 救急病院 救急センター センター長・伊藤敏孝先生
救急医学のエキスパート。救急医。外科医。防衛医科大学卒業後、横浜市みなと赤十字病院救急部 部⾧を経て現職。「救急車を断らない」を理念に掲げ、地域医療に貢献している。メディア出演も多数。TV 番組で熱中症に関するコメントを行うなど、メディアでの熱中症対策の啓蒙・啓発も積極的に行っている。

朝ランが日課の編集者・ライター、女児の母。目標は「走れるおばあちゃん」。料理・暮らし・アウトドアなどの企画を編集・執筆しています。インスタグラム→@yuknote