チャイルドシート・ジュニアシートはいつまで必要?
null自動車の運転者は、チャイルドシート(あるいはジュニアシート)を使用しない6歳未満の幼児を乗せて運転してはならないと、道路交通法第71条の3第3項で決められています。
つまり、5歳までの子どもにはチャイルドシートの使用が法律で義務付けられているのです。
「実はチャイルドシートの必要性は、年齢だけでは区切れません。大人用のシートベルトは身長約140cm以上の体型に有効な働きをするように作られているため、たとえ年齢が6歳を超えていても、140cm未満の体の小さなお子さんが安全に車に乗るためには、チャイルドシートやジュニアシートの使用が推奨されています」(以下「」内、由水さん)
ところが実際は、6歳前後でチャイルドシートもジュニアシートも使わなくなるドライバーが多いことが、統計で分かっています。
JAFの2022年調査によると、チャイルドシートの使用率は、4歳までは8割近いものの、5歳では約5割と低く推移しています。
また、小学生の子どもを車に乗せる場合、チャイルドシートを使用しているかというJAFの問いに対し、「使用していない」とする声が75%にものぼりました(2013年3月実施 JAFユーザーアンケートより)。
「確かに法律による“使用義務”は6歳未満(5歳まで)ですが、事故が起こったとき、チャイルドシートやジュニアシートを使用していないと、たとえ大人用のシートベルトをしていたとしても、サイズが合わないため、かなり危険なのです。
JAFでは、6歳(身長116cm前後を想定)と10歳(身長140cm前後を想定)の子どもをモデルケースにし、ジュニアシートの必要性を検証した衝突テストを行ったことがあります。
6歳児の場合、ジュニアシートを使用していると、車が衝突しても、シートベルトが鎖骨と骨盤にかかって衝撃を受けとめてくれますが、使用していないと、シートベルトが首や腹部を圧迫してしまうことがわかりました。これでは首が絞められ、内臓を損傷する危険性があります。
6歳児よりも体の大きな10歳児の場合でも、ジュニアシートを使っていないと、腰のシートベルトが機能せず、衝突の衝撃で体が前に滑って、首がシートベルトに強く圧迫されてしまいます。
最初にも言いましたが、ほとんどの小学生の体格は、大人の体格用に設定されているシートベルトのサイズに合いません。そのため、事故や急ブレーキの際にシートベルト本来の機能が発揮されないのです。ですから、お子さんの身長が140cm以上になるまでは年齢に関係なく、必ずジュニアシートを使用しましょう」
チャイルドシートの代わりに抱っこではダメ?
null「6歳を超えているから」、「ひとりで座らせておくより安全そうだから」などと、大人が子どもを抱っこして車に乗せるケースも見られますが、これはとても危険な乗せ方だと由水さんは言います。
「体がしっかりしてくると、保護者も安心してしまいますし、さらに泣かれたりせがまれたりするとつい、抱っこしてしまうのかもしれませんが、絶対にやってはいけません。
大人が抱っこしただけでは、衝突どころか時速40kmで急ブレーキをかけただけでも、子どもは前方に吹っ飛び、頭部を激しくぶつけてしまうことが、JAFの実験で分かっています。
チャイルドシートやジュニアシートの“代替策”はありません。走行する車にお子さんを乗せる場合、適切に拘束していないと、本当に危険なのです」
6歳になったからもういいだろうなど、勝手な判断でチャイルドシートを“卒業”させず、子どもの身長を考慮して、使用すべきかどうかを決めるのがよさそうです。
チャイルドシートとジュニアシートの違いは?
nullでは、チャイルドシートを選ぶ際、どんなことに注意すればよいのでしょうか。これまでもチャイルドシート、ジュニアシートと2つの名前が挙がっていましたが、これらはそもそも、どう違うのでしょうか。
「チャイルドシートにはさまざまな種類があり、
チャイルドシートには、成長に応じてさまざまな種類があります。どのタイミングで使い分けたらいいのでしょうか。
「最近の目安としては、月齢と身長で使い分けます。月齢15カ月以上かつ身長76cmを超えたら、乳児用のチャイルドシートは卒業です。幼児用チャイルドシートの準備をしてください。
さらにお子さんの身長が100cmを超えたら、背もたれ付きのジュニアシート(学童用チャイルドシート)への交換時期になります。
ジュニアシートは、車のシートベルトを正しく着用するための補助をしてくれます。何度も言いますが、小学生になっても身長が140cmに達していなければ、ジュニアシートを使いましょう」
チャイルドシートはどう選ぶ?
nullどんなチャイルドシートを選ぶかは、予算や車の大きさ、取り付けのしやすさなどによるため、“これがいい”とは一概には言えないそう。
「チャイルドシートの種類は好みや使いやすさ、生活のパターンで選んでかまいませんが、(E)マークのついた安全性の高いチャイルドシートを選ぶことをおすすめします。
(E)マークとは、国土交通省の安全基準に適合したチャイルドシートに貼られている型式指定マークのこと。国連の安全基準を満たしているという証明になっています。
さらにいえば、最新の安全規則をクリアした「R129適合」と称されたモデルがおすすめです。これまでの安全規則「R44」モデルは、子どもの体重に合わせた構造になっていたのですが、「R129」は身長に合わせた構造のため、より体にフィットしやすいのです。
また、これまでは前後からの衝撃にだけ備えた構造でしたが、「R129」はドア側(側面)からの衝撃にも対応できるようになっています。
そしてもうひとつ、大きな違いが“設置方法”です。「R44」モデルは座面にシートベルトで固定するタイプが多く、シートベルトを通す場所を間違えると、しっかり固定できないケースが多かったのですが、「R129」モデルは「ISOFIX(アイソフィックス)」固定タイプがほとんど。これは、シートベルトを使わず、チャイルドシートと車の固定金具を連結するだけでしっかり固定できる取り付け方法です。
実は、チャイルドシートの問題点として、正しく設置できていないケースが多いことが挙げられてきました。「2022年度 JAF・警察庁 チャイルドシート使用状況全国調査」によると、ユーザーが不正確な取り付け方をして使用する“ミスユース”の中でも、シートベルトの締付け不足が62.5%を占めていることが分かっています。
シートベルトでしっかり固定できていないと、事故が起こった際、チャイルドシートごとお子さんが飛ばされてしまう可能性がありとても危険なのです。「R129」モデルのチャイルドシートは、そういった設置のミスを防げるという意味でも、おすすめと言えます」
旧モデルの「R44」は、2023年の8月に生産が終了されるので、今後新たにチャイルドシートを購入するなら、安全性が高い「R129」モデルがよさそうです。とはいえ、少々お値段が高いうえ、所有している車が「ISOFIX(アイソフィックス)」に適応していない車種である可能性もあるため、しっかりと調べて検討しましょう。
チャイルドシートはどこに設置するのがベスト?
nullでは、チャイルドシートを安全に設置するには、どこに置くのがいいのでしょうか。運転する保護者にとっては、目と手の届く助手席に取り付けたくなりますが……。
「助手席にチャイルドシートを設置した場合、事故が起きてエアバッグが開くと、チャイルドシートやお子さんを押しつぶしてしまったり、エアバッグが開いた勢いでお子さんを傷つけてしまう“エアバッグ事故”の可能性があります。ですから、乳児用のチャイルドシートは後ろの座席に取り付けましょう。
後ろの座席といっても、中央部分は車両のシート形状やシートベルト構造により正しく取り付けられない場合がありますので、避けた方がいいでしょう。安全な乗せ降ろしを考えた場合、歩道側(左側)がベストです」
ジュニアシートの場合、助手席に設定してもいいのだそう。ただし、エアバッグ事故の予防策として、なるべく座席を後ろに下げておくのがおすすめだと言います。
チャイルドシートは、安全性の高いものを選び、適正な場所に設置することが大切です。もし、設置の仕方に不安がある場合は、専門家を頼りましょう。自治体や都道府県警、地方新聞社などが主催し、各地で講習会が多数開催されています。
「JAFでも全国で車に関する様々な講習会を開催しています。チャイルドシート取り付け点検に関する講習会(無料)も実施していますので、最寄りの支部にお問い合わせください」
大切なお子さんの命を守るため、チャイルドシートはきちんと選んで正しく設置し、シートベルトがしっかりしめられる年齢まで活用したいですね。
【取材協力】
【教えてくれた人】
由水雅也(よしみず まさや)
一般社団法人 日本自動車連盟 事業課交通環境係。JAF認定セーフティアドバイザーとして、実技型・座学型の講習会で講師を担当。全国各地で、楽しく学べる交通安全イベントも実施している。事故のない社会を目指し、日々業務に励んでいる。
エディター/ライター。大学卒業後、出版社に勤務し、その後、フリーの記者として主に週刊誌の編集・執筆に携わる。歴史や美術をはじめ、マネー・車・健康・ペット・スピリチュアル・夫婦関係・シニアライフスタイルといった多岐にわたる女性向け実用情報を手掛ける。1児を持つシングルマザーで、趣味は漫画・アニメ鑑賞、神社巡り。