そこで、前回の【災害トラブル編】に続いて、JAF(日本自動車連盟)でJAF認定セーフティアドバイザーを務める由水雅也さんに、ドライブ中におこりがちなトラブルとその対処法を教えてもらいました。
ドライブ中によく起こるトラブルとは?
null「どんなに気をつけて車に乗っていても、突然起きるトラブルは避けられません。そんなとき、いちばん大切なのは慌てないことです。安全な場所に停車させて救援を呼ぶなど、二次災害を起こさないよう、落ち着いて対処しましょう」(以下「」内、由水さん)
では実際、どんなトラブルが多いのでしょうか。
「JAFで、年間のロードサービス救援件数(四輪)を調べたところ、一般道路で最も多いのが過放電によるバッテリー上がりで、高速道路の場合は、タイヤ関連のトラブル(パンク、バースト、エアー圧不足)でした」
JAFロードサービス 主な出動理由(2022年度)
これらの統計データによると、一般道路、高速道路ともに多いトラブルが、バッテリー関連とタイヤ関連であることがわかります。
「どんなトラブルにも言えることですが、日頃の点検や確認が最大の予防策になります。特に、バッテリーやタイヤのトラブルは事前の点検で防げることが多いです。高速道路を走る前や遠出をする前などは、自分で確認するか、自信がない場合は、自動車販売店やガソリンスタンドでチェックしてもらうのがおすすめですよ。また走行中に不安があった場合には、JAFに救援要請しましょう」
それでもトラブルに見舞われた場合、どうしたらいいのでしょう。
バッテリートラブルの対処法
null「バッテリーのトラブルで最も多いのが、過放電によるバッテリー上がりです。これは、バッテリーの電圧が低くなってエンジンが始動できない状態です。
原因としては、バッテリー自体の故障・寿命の他、電装品の過剰使用、長時間放置、発電機のトラブルなどです。具体的には、エンジンをかけずにCDプレイヤーなどのオーディオ機器を使用したり、室内灯をつけっ放しにしたりすると起こりやすいといえます」
バッテリーが上がるとエンジンがかからなくなるので、すぐにJAFなどに救援を要請しましょう。
「ブースタ・ケーブルをお持ちで、救援車がある場合は、以下の方法でも対応できます。
- 救援車をバッテリーの上がった車(故障車)の近くに止め、エンジンを停止させておく
- 故障車と救援車のバッテリーの『+』端子同士を、赤いブースタ・ケーブルでつなぐ
- 救援車の『-』端子と、故障車のエンジン本体のフックまたはバッテリーの『-』端子を、黒いブースタ・ケーブルでつなぐ
- 救援車のエンジンをかける(可能ならアクセルを踏んでエンジンの回転数を上げる)
- 故障車のエンジンをかけてみて、かかったら救援車のエンジンを止め、ブースタ・ケーブルをつないだときと“逆の順番”で外す
『+』と『-』の接続位置と順番を間違えないように注意しましょう」
バッテリーが上がった原因がわからないときは、ほかの部分が故障している可能性もあるので、無理せず専門家に任せましょう。
「バッテリーの寿命は2~3年と言われています。エンジンをかけて車を動かさないと充電されないので、定期的に乗ることが大切です。そして、月1回はガソリンスタンドなどで確認してもらうのが理想的。6カ月や1年といった定期点検の際にはしっかり見てもらい、必要ならば充電・交換をしてもらいましょう」
雨が降った後は要注意⁉ タイヤトラブル&対処法
null・意外と気づきにくいタイヤのパンク
「タイヤは走る・曲がる・止まるといった、車の動きの土台となりますから、トラブルが起こると命の危険にさらされます。そんなタイヤのトラブルのなかでも最も多いのがパンクです。
原因はさまざまですが、道路を走っていて落ちていた釘が刺さるなど、不可抗力なケースもあります。特に雨が降った後は要注意。雨で路肩にゴミが流れ、その中に釘が落ちていることがあるからです。
パンクの場合、すぐに車が走れなくなるわけではなく、少しずつ空気が抜けていくため、なかなか気づけないものです。釘が刺さりやすい路肩側を走る左後ろのタイヤを中心に、日頃から念入りにチェックしておくことが大切です。
万が一、パンクをした場合は、すぐに車を路肩に止めてJAFなどの救援を呼びましょう。釘などの異物が刺さっている場合、抜くとパンクを加速させるので、刺さったままにしておくのがおすすめです。
これまでは車にスペアタイヤが搭載されていることが多かったのですが、最近は搭載されていない車が多く、その代わりに、応急処置用の「パンク修理キット」を搭載している車が増えています。
これは、補修液をタイヤの内部に流し込み、コンプレッサーで空気を送って穴の補修と空気圧を調整できる道具。救援がすぐに来ない場合でも、このパンク修理キットで応急処置をすれば多少は走行できるので、可能なら用意しておきましょう」
パンク修理キットは、カー用品店や通販サイトなどで5,000円前後で購入できます。修理キットを使って直しても、それはあくまで“応急処置”なので、後で必ず新しいタイヤに交換してもらいましょう。
・バーストは大事故につながる恐れも
「タイヤのトラブルとしてもうひとつ多いのが、バーストです。これは、パンクのように、ゆっくりと空気が抜けていくのではなく、瞬間的にタイヤが破裂して一気に空気が抜ける現象です。車のコントロールが取りづらくなり、深刻な事故につながる可能性も高く、とても危険です。
バーストする原因は、経年劣化や積載量オーバー、無理な加減速、障害物を踏んでしまうなどがあげられますが、多いのが空気圧の低下です。
タイヤの空気は風船と一緒で、走行距離にかかわらず、自然に抜けてしまいます。空気圧が低くなるとタイヤが熱を帯びやすくなり、バーストする危険性が上がります。
空気圧が低下しているかどうかは、見た目にはわかりません。ガソリンスタンドなどに設置されている専用の機械(エアゲージ)で調べられますよ。
一般的に、運転席のドアの開口部に、その車に適した空気圧が記載されているので、月1回は確認し、低下していたら空気充填機で空気を入れましょう。空気圧は高すぎてもバーストの原因になるので、あくまで適正値を守るように心がけてください」
空気圧の点検と空気の充填の方法は次の通りです。セルフのガソリンスタンドしかない場合は自分で行わないといけないため、覚えておくと便利ですね。
空気圧の測定の仕方と充填の仕方(エアタンク型の場合)
- エアバルブのキャップを外す
- エアゲージのホースの先をエアバルブに押し当てて空気圧を測定する
- 必要に応じて空気充填機でメーカー推奨空気圧に調整する(空気を入れる場合は「+」ボタン、空気を抜く場合は「-」ボタンを押す)
- エアバルブのキャップを取り付ける
知っておこう!そのほかの、よく起こるトラブル&対処法
nullバッテリーやタイヤ関連のほかには、どんなトラブルが多いのでしょうか。
・キー閉じ込み
「JAFのロードサービス出動理由としては、キーの閉じ込みも多いです。2020年度までは3位以内に入っていました。
しかし、スマートキー(スマートエントリーシステム。車に近づいたり、触れるだけでエンジンの始動・停止、ドアの開閉といった操作ができる鍵)の普及の影響か、ここ数年は減少。
最近ではスマートフォンから操作できる車も出てきて、鍵を車内に置き忘れても、ドアの開閉などができるようになりました」
とはいえ、油断は禁物。スマートキーの電池切れで操作できなくなるケースや盗難の可能性もあるので、鍵は肌身離さず持っておくようにしましょう。
・燃料切れ
高速道路上で特に多いのが、燃料切れトラブルで、これが意外に面倒なことになるといいます。
「高速道路を走行中に燃料切れになると、ゆっくりと速度が落ちはじめ、アクセルペダルを踏み込んでもエンジンが思うように反応しなくなります。しかし、エンジンが動いている間はフットブレーキとハンドルは操作できるので、焦る必要はありません。後続車に注意しながら少しずつ道路の左側に寄せて止め、JAFなどの救援を呼びましょう。
燃料切れになった場合は、単に燃料を入れるだけではエンジンがかからない車種もあります。また、ガソリンスタンド等も統廃合が進んでおり、予定していた場所で給油ができないこともありますので、燃料は常に余裕をもたせておきましょう。
高速道路上での燃料切れは、道路交通法(第75条の10)違反となりますので、注意が必要です」
・ハンドルロック
救援を要請する必要はないまでも、問い合わせが多いのが、ハンドルロックだといいます。
「ハンドルロックとは、盗難防止のためにハンドルが回せなくなる機能です。エンジンを切ってキーを抜いた状態でハンドルを回そうとするとハンドルが動かなくなります。
車を止めて降りてみたら、タイヤがまっすぐになっていなかったため、タイヤの向きを直そうと、エンジンをかけずにハンドルを回そうとして、うっかりロックされてしまうというケースが多いようです。
ハンドルロックがかかると、ハンドルが動かないだけでなく、エンジンをかけようとしても、キーが回らなくなってしまいます。こうなって“エンジンがかからない”と焦る人が多いようです。
こういう時は、ハンドルを左右どちらかに回しながら、同時にキーを回します。すると、キーが回ると同時にハンドルロックも解除されます。エンジンスタートスイッチを押すタイプの車でも、ハンドルを左右に動かしながら、スイッチを押すとハンドルロックは解除されます」
・踏切内での立ち往生
JAFの出動要請件数はそれほど多くないものの、対処法を覚えておきたいのが「踏切内での立ち往生」です。
「踏切前後の運転は、普段以上に注意をし、無理をしないことが大切です。それでも、万が一、渡っている最中に遮断機が下りてしまった場合、すぐに車を降り、踏切の外へ逃げて警報機側に設置されている非常ボタンを押します。
あるいは、車で押し切って脱出する方法もあります。遮断棒は車で押すと折れずに斜め上に上がる構造のため、押し切れる場合もあります。
非常ボタンがない、あるいはすぐに見当たらない場合は、身の安全を確保したうえで、車に搭載している発炎筒を使って危険を知らせるようにしましょう。列車に自分の車の存在を知らせることが大切です」
これらの対処法を知っておけば、いざというとき、落ち着いて行動できるはずです。それと同時に、日頃から点検と確認を心がけていきたいですね。
次回は、知っておきたいチャイルドシート事情をお届けします。
【取材協力】
【教えてくれた人】
由水雅也(よしみず まさや)
一般社団法人 日本自動車連盟 事業課交通環境係。JAF認定セーフティアドバイザーとして、実技型・座学型の講習会で講師を担当。全国各地で、楽しく学べる交通安全イベントも実施している。事故のない社会を目指し、日々業務に励んでいる。
エディター/ライター。大学卒業後、出版社に勤務し、その後、フリーの記者として主に週刊誌の編集・執筆に携わる。歴史や美術をはじめ、マネー・車・健康・ペット・スピリチュアル・夫婦関係・シニアライフスタイルといった多岐にわたる女性向け実用情報を手掛ける。1児を持つシングルマザーで、趣味は漫画・アニメ鑑賞、神社巡り。