2025年は「ムーミン」シリーズが誕生して80年目!
null2025年は、フィンランドの芸術家トーベ・ヤンソンが生み出した「ムーミン」シリーズの最初の小説、『小さなトロールと大きな洪水』が出版されてから80周年。
この記念年に合わせて、今年は次々と新装版やグッズが発売されていて、ムーミンファンは目が離せません。
その中でも私が気になった、本とグッズを3つご紹介したいと思います。
1:ムーミン最初の小説『小さなトロールと大きな洪水』の英語版、80周年記念特装版
null1945年に出版された小説『小さなトロールと大きな洪水』。この小説が、後に続いて8作品が発表される、ムーミン小説の始まりです。
表紙には、ぼんやりとあやしく浮かび上がる花の間を抜け、ほの暗い森に入っていくムーミンママとムーミントロールの姿が描かれています。この80周年特装版は、装丁の美しさはもちろんのこと、見逃せない付録が2つ付いています。
ひとつは、トーベ・ヤンソン自らがデザインした、切り取って組み立てるとムーミンやしきのペーパークラフトにもなるポスター。思わず見入ってしまうほどの愛らしさです。
実物を切り取るのはもったいなくてとてもできないので、カラーコピーしたものを組み立ててみました。ちゃんとムーミンやしきができあがりました! ムーミンやしきの入口の階段下についている扉や窓辺に揺れるカーテン、壁にあしらわれた貝殻の飾りなど、小さな部分まで遊び心を忘れない、トーベの細やかな愛を感じます。


もう一つの付録は、巻末に収録されている、トーベ・ヤンソンの手帳から引用されたムーミンのキャラクターたちに関する設定メモです。このメモはなんと、この『小さなトロールと大きな洪水』の80周年アニバーサリーエディションで初めて公開された貴重なもの。英語ではありますが、興味のある方はぜひどんなことが書いてあるのか読んでみてくださいね。
この記念特装版は、amazonなどのオンラインショップで買うことができますよ。
2:ムーミン80周年限定 北欧になじみ深い、フルーツコーヒー
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左からコーヒーアソート(トランク)1,458円、りんごコーヒー、木いちごコーヒー各594円(税込)。
さっとお湯に溶かすだけで、本格ドリップコーヒーが味わえる、INIC coffeeのシリーズのひとつ「MOOMIN &TABLE(ムーミン & テーブル)」から、ムーミン小説誕生80周年を記念した2種類のコーヒーとアソートが限定発売されています。


ムーミンやしきを訪れるお客さんのトランクケースをイメージしたというコーヒーアソートは、カラフルでかわいらしいデザイン。中身のパッケージもちゃんとムーミンです。
りんごコーヒーはほんのりとした甘み、木いちごコーヒーはさわやかな酸味のある味わい。2つとも軽めでやさしい味の飲みやすいコーヒーでした。
りんごも木いちごも、フィンランドではよく食べられている果実です。ムーミンの物語にもお酒になったり、ジュースになったりして登場していますよ。コーヒーは、ムーミン一家も大好きで、日々の生活に欠かせない飲みもの。ムーミンの物語が生まれたフィンランドは、世界でも有数のコーヒーの消費国です。
3:ロルバーン ポケット付メモ
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表紙の金の箔押しが豪華な「ロルバーン ポケット付メモ 」1,320円(税込)。
80周年を記念して、いつもはなかなかお目にかからない絵柄のグッズも登場しています。こちらの「ロルバーン」のノートの表紙を飾っているのは、最初のムーミン・コミックス「ムーミントロールと地球の終わり」のイラスト。
「ムーミントロールと地球の終わり」は、1947~1948年にかけてスウェーデン語系の新聞『ニィ・ティド』紙に連載されたコミックスで、1946年に発表された小説『ムーミン谷の彗星』をベースにして描かれたもの。


今よりまだ少し細長い顔のムーミントロールやスノークのおじょうさん。素朴な愛らしさがありますね。
この「ムーミントロールと地球の終わり」のアートを使ったグッズは、今年他にもいろいろ出ていますので、ぜひ探してみてくださいね。
ムーミンの世界の魅力
null愛らしいキャラクターたちが多くの人を惹きつけている「ムーミン」シリーズですが、そのアートは、豊かな物語の中から生まれてきたものです。小説には、主人公のムーミントロールをはじめとする個性的な登場人物たちが、胸躍る冒険を繰り広げたり、美しい自然の中で自分を見つめ直したりする姿が丁寧に描かれ、長い間世界中から愛され続けてきました。
ムーミンシリーズの最初の小説『小さなトロールと大きな洪水』の原稿は、第二次世界大戦のさなかに書き始められました。物語の冒頭で、ムーミンママと小さなムーミントロールは、行方不明になったムーミンパパを探し、安心できる場所を求め彷徨っています。
途中で、後に「スニフ」と呼ばれる小さな生きものも合流し、彼らは共に危険がたくさん潜んでいる幻想的な夜の森を歩いていきます。
トーベ・ヤンソンは、戦争に疲れた自分の心を癒やすため、ムーミンの物語を書いたと語っています。ちょっぴり不安で怖くて、どきどきするような危険な冒険をかいくぐりながら、でも最後には、離れ離れになった家族と無事巡り会い、安心して暮らせる家と場所を見つける――。この物語は、平和な世界を心から待ち望んでいたトーベの願いを反映しているのです。
暗く辛い戦争の時代にも、画家になりたいという自分の夢を諦めず、人々が自分らしく生きることのできる平和な世界を望んだトーベ。ムーミンシリーズはそんな彼女の強くやさしい眼差しで描かれた、すべての人のための文学作品です。
(C)Moomin Charactors™

内山さつきさん
内山さつき
東京都生まれ。旅・物語・アートをテーマに活動するライター、編集者。特に北欧にまつわる本や雑誌の執筆・編集を行っている。ユニットkukkameri としてもWEBサイト「kukkameri Magazine」や『フィンランドでかなえる100の夢』(Gakken)などでフィンランドの魅力を発信している。「トーベとムーミン展」では展示協力・図録の編集を担当。著書に『トーベ・ヤンソンの夏の記憶を追いかけて』(東海教育研究所)。
Instagram @satsuki_uchiyama















