子どもが泣いたりしたら…
null「泣くより笑った方が楽しい。もちろん泣くことが、感情表現として大事なときもあります。でもワケもわからず泣くことってありますよね、そういうゾーンに入ってしまうときが。例えば『このお菓子が食べたい!』と強く思ったとします。でも歯磨きをし終え、夜遅くにそう言われてもダメよって。すると、どうにかしようと泣いたりするんです。そういうときに、『だめだめ!』と強く言っても仕方ないから。なんとか面白い方に発想を転換しようと、『(子どもの顔をのぞきこむような仕草で)笑ってんじゃないの~?』とか言って(笑)。するとご機嫌で過ごしてくれたりしますね」(以下「」内、蒼井優さん)
なんて賢いママ! ではパパとママで、子育てについて、明確に分担を決めているのでしょうか。
「特に決めていません。やる人がやる、子どものやりたいことをやる、という感じで。お風呂なら、まずお父さんとお母さんのスケジュールを言って。『この時間ならお父さんと入れるけど、この時間だとお父さんはお仕事に行っちゃうからお母さんと入る。どっちがいい?』と聞くと、子どもがどちらかを選びます。どっちじゃなきゃイヤというわけじゃなく、結局どっちでもいいみたいですけど」

ベランダ菜園で植物に触れる
null自宅で植物を育てているという蒼井さん。種類はいろいろ、それでいて毎年オリーブの実がたくさんなるそうで、「でもあく抜きを出来たことがなくて。今年こそは!と思っているんですけど」というから、かなりのベテランです。
「植物を育てていると、やっぱり癒されます。春になると、冬を越せなかったかも?と思うような子たちが生きていて。勢いよく芽吹くのを目にすると、やっぱりパワーをもらえます。本当は地植えしてあげられたらいいなって思ったことも。いっとき、家の近所にちっちゃい土地を買って小さな小屋を建てて……みたいなことを考えたこともありますけど、現実的じゃないと思って止めました」
都会で暮らしながら、植物との暮らしを実現する。ベランダ菜園は多くの人にとって現実的な選択です。
「朝、この時期だとアオムシの卵がないかを見て。葉っぱを食べちゃうので探すんですけど、ウチは毎年、何十匹と蝶々になる。アオムシを育ててます(笑)。育つのを観察し、蝶々になったら窓からさよならするんです」

好き嫌い克服のための鉄板技とは?
null出産を経て、2023年のNHK連続テレビ小説『ブギウギ』で女優業を再開した蒼井さん。子育てとの両立のためにどんな工夫をしているのでしょうか。
「子育てしながら働くことにはやっぱりうしろめたさみたいなもの、自分のなかで折り合いがつかない部分があります。でも、じゃあ他のお母さんが働いていることをそう思うか?というと、まったくそうは思わない。もちろん、ずっとお子さんといらっしゃるママもスゴイです。でも働きながら子どもに愛情を伝え続けるママもスゴイ。だから自分もこれでいい。そのぶんたくさんの愛情を伝えよう!と」
お料理に割く時間も限られるはず。困ったとき、必ずつくる定番料理なんてあるのでしょうか。
「むしろもう、ずっと困っています(笑)。いちばん簡単なのはオムライスでしょうか。あまりによくつくるので、あっという間に出来ます。あと時間があるときにストックをつくっておく。それと昆布とカツオで出汁を取って冷凍しておくと、それなりの食材が揃っていればなんとかなります」
忙しいなか、昆布とカツオで出汁を取る!? 無理無理!とつい驚きの声が出ます。
「いやいやいや、とっても適当なので。ただ出汁を取ったという自信だけで、味は知りません(笑)。お米を研いだりする間に出来るし、意外と簡単なんです。沸騰したら美味しくなくなっちゃうから、わりと気を張るくらいで。それをお味噌汁に使ったり、煮物をつくったり。さっさとつくったものでも、なんとなく自信を持って出せます。気の持ちようが違うんです」
料理上手なママの日常が伝わります。そんな蒼井さんには、子どもに野菜を食べさせる技があるのだとか。
「コツがあるんです。野菜の味に集中すると『おいしくない……』ということになるし。そこでまず私が先に食べ、『(野菜を噛む)音を聴いてみて。すっごくいい音がするから』と子どもに噛む音を聴かせると、『私のも聴いて!』ということになります。それで別の野菜を食べ、『どっちがいい音がすると思う?』なんて聞くと、また食べてくれます。口の中の音って、本当に楽しいみたい。これ、私の鉄板です(笑)。この間も、お友達と『子どもたちに野菜を食べさせようの会』があって。ママが『音を聴かせて!』というと、やっぱり子どもはみんな野菜を食べます。子どもがある感覚に集中しているとき、味覚に集中するなら聴覚と、他の感覚に意識を持っていかせると意外と親のストレスが減ります。そうしてみたら、なんとなく上手くいっただけなんですけど」
決して音に敏感な特別な子だから、というわけでもなさそう。野菜嫌いの克服法、もっと早く知りたかった……。

子どもの未来を考える映画「アンパンマン」
null最後に改めて、今回の映画『それいけ!アンパンマン チャポンのヒーロー』について聞きました。
「アフレコの現場では、スタッフ&キャストのみなさんに、ジャムおじさんのような懐の深さで受け入れていただきました(笑)。私の演じたチャポンは、心から‟この子の強さを信じたい”と思うキャラクターです。こんなに勇気のある子に声を吹き込めるのはとても幸せなことで。男の子の役や空を飛んだりすることは実写ではなかなかないので、声優として経験できたことがとても嬉しいです。
声優さんのお仕事は大変だと思いますが、自分の声しだいでどんなキャラクターにもなれる、楽しく夢があるなと感じました。それで出来た映画は、私たち大人もとても考えさせられるテーマを描いているので、子どもが大人になったときに観たら、感じるところが変わると思います。子どもの未来を考えることが出来る作品でもあると思っているんですよね」
取材・文:浅見祥子 写真:黒石あみ(小学館)

蒼井優さん。
【PROFILE】
蒼井優
1985年生まれ。福岡県出身。99年にミュージカル『アニー』で舞台デビュー。その後、岩井俊二監督の『リリイ・シュシュのすべて』で映画デビューを果たす。初主演作『花とアリス』、李相日監督の『フラガール』ほか、『オーバー・フェンス』、『家族はつらいよ2』、『スパイの妻〈劇場版〉』、『るろうに剣心』シリーズ、『斬、』、『ある船頭の話』、『宮本から君へ』、『ロマンスドール』などの映画、NHK連続テレビ小説『ブギウギ』、Netflix『阿修羅のごとく』などのテレビドラマがある。

映画『それいけ!アンパンマン チャポンのヒーロー!』
映画『それいけ!アンパンマン チャポンのヒーロー!』
配給:東京テアトル 2025年6月27日全国公開
監督:橋本敏一 脚本:葛原秀治 声の出演:アンパンマン/戸田恵子 ばいきんまん/中尾隆聖 チャポン/蒼井優 他 原作:やなせたかし(フレーベル館刊)
【あらすじ】いつものようにパトロールをしていたアンパンマンは、空から落ちてきた不思議な男の子・チャポンと出会います。自分がどこから来たのかわからないチャポンは、アンパンマンたちと一緒に過ごすなかで、誰かを助け笑顔にする喜びを知り、「ヒーローになりたい!」と願い、アンパンマンを兄のように慕うように。しかし……出生の秘密を知るばいきんまんが現れて……!?
©やなせたかし/フレーベル館・TMS・NTV ©やなせたかし/アンパンマン製作委員会2025

映画ライター。映画配給会社勤務を経て、フリーランスに。二児の母。
『ビーパル』(小学館)、『田舎暮らしの本』(宝島社)などの雑誌、「シネマトゥデイ」などのWEB媒体で映画レビュー、俳優&監督インタビューを執筆。
『バカ卒業 ~映画「釣りバカ日誌」のハマちゃん役を語ろう~』(小学館)、『芸能マネージャーが自分の半生をつぶやいてみたら』(ワニブックス)を担当。