何歳からでもマナーは身につく
null今回ご紹介する“お箸の作法”だけではなく、食事に関するマナーは食器の置き方から、食べ終わりの作法までとても多い印象があります。しかも、和食には和食の、洋食には洋食のマナーがありますよね。
著書の中でも千 宗屋さんは、このように説明しています。
「食事は人間の営みの中でも基本的なものですから、マナーやルールとして決まっていることが多いのは当然のことかもしれません。
大切なのは、食卓を囲むその場の人全員がおいしく料理をいただくためにこそ、マナーは存在するということです。それを忘れて重箱の隅をつつくように細かいマナーを指摘するようなことがあっては本末転倒です」(以下「」内は著書より)
自分がどう見られるか、以上に大事なのは周囲の人たちと心地よい空間を共に作ること。そう考えると、おのずから自分の行動も変わってきそうです。
さらに、その食卓の雰囲気は子どもたちにも受け継がれていきます。
「食事の場でのマナーや作法は、学んで身につくというよりも、基本は乳幼児期からの家庭での食卓で覚えるものではないでしょうか。物心つく前から食事を共にしている親や家族の仕草や動作を見て、子どもは疑いなく真似をするもの。
もちろん、外食時や学校での昼食時に、他人の食べ方を見て学ぶことも多いでしょうし、自ら気がついてクセや食べ方を修正してきたという人もいるでしょう。
何歳からでもマナーを身につけることはできるので、そうして気がついた美しい食事の姿を、ぜひ次世代へと受け継いでいっていただきたいと思うのです」
それでは、食事の場で避けたいお箸の使い方をみていきましょう。
避けたい「箸使い」のタブー
null刺し箸
つかみにくい料理を箸で突き刺して食べる行為。
迷い箸
どれを食べようか迷い、箸をあちこちに運ぶこと。
寄せ箸
遠くの器を箸で引き寄せること。
さぐり箸
器の底にある料理を掘り返して食べること。上から順に。
もぎ箸
箸についたご飯粒やおかずを口でもぎ取る行為。
ねぶり箸
食事中に箸先を舐めたり吸ったりすること。
渡し箸
器の上に箸を渡して置くこと。使わない時は箸置きに戻す。
涙箸
箸先から煮物などの料理の汁を垂らしてしまうこと。
ちぎり箸
箸を両手に1本ずつ持ち、料理をちぎること。
指し箸
箸で人や物を指し示すこと。
空箸
一度箸をつけた料理を、食べずに戻す行為。
いかがでしょうか? もしかしたら初めて聞く単語、知らずにやっていたこともあるかもしれません。
和食での、美しい箸の上げ下げ
null続いては、箸の上げ下げについて。あまりやったことがない、という方は、招かれた席などでスムーズにできるよう、自宅でも試してみるとよいでしょう。
イラストにあるように、最初に器を持ってから箸を取り、戻す時は箸を置いてから器を置きます。
(1)器を左手に持ってから、右手で箸を取る。
(2) 左手の人差し指、中指で箸をいったん受ける。このとき、箸先に指をかけないように注意する。
(3)左手に受けた箸を、右手で持ち直す。
今回は、千 宗屋さんの新著から、主にお箸のマナーについてご紹介しました。食事の席は、毎日、毎食のこと。マナーそのもの以上に、食卓を囲む人みんなで和やかに、おいしく食事をするという“思いやり”を心に刻んでおきたいですね。
イラスト/『お茶の若宗匠が教える「人づきあい」と「ふるまい方」 いつも感じのいい人のたった6つの習慣』より
【書籍情報】
お茶の若宗匠が教える「人づきあい」と「ふるまい方」
いつも感じのいい人のたった6つの習慣
著:千 宗屋
定価:1,760 円(税込)
千 宗屋(せん・そうおく)
茶人。千利休に始まる三千家のひとつ、武者小路千家家元後嗣。1975年、京都市生まれ。
2003年、武者小路千家 15 代次期家元として後嗣号「宗屋」を襲名し、同年大徳寺にて得度。2008年、文化庁文化交流使として一年間ニューヨークに滞在。2013年、京都府文化賞奨励賞受賞、2014年から京都国際観光大使。2015年、京都市芸術新人賞受賞。日本文化への深い知識と類い希な感性が国内外で評価される、茶の湯界の若手リーダー。今秋、「人づきあい」と「ふるまい方」を説いた書籍『いつも感じのいい人のたった6つの習慣』を上梓。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授、明治学院大学非常勤講師(日本美術史)。一児の父。Instagram @sooku_sen