1:失礼のないよう、コートは玄関の前で脱ぐ
null相手の家についたら、ピンポンをするまえに一呼吸。寒い季節はコートやダウンを羽織っていることが多いですが、玄関に入る前に脱いでおくのが良いようです。
「家の前に到着したら、コートは脱いで手に持ち、帽子や手袋は取り、傘なども畳んでからインターフォンを押します。反対に、汗ばむ陽気でジャケットなどを脱いで歩いてきた場合には、玄関前でいったん羽織るなど、訪問先の相手と対面する前に、失礼のないよう敬意を持って今一度身支度を整えたいものです。
そうすることで、玄関に招き入れられたあとにもスマートに行動できます。とはいえ、極寒の地や酷暑の夏、大雨の時などに、決められたことだからとマナーにとらわれすぎるのは、むしろ違和感があります。そこは臨機応変に、常識的な判断を優先すればよいと思います。
上司や目上の方の自宅などに招かれた場合は、スマートフォンがマナーモードになっていることを確認しておくことも、現代における心がけでしょう」(以下「」内は著書より)
スマートフォンのマナーモードは確かに気をつけたいところ。玄関先でわたわたとしないように、早めに準備しておくとよさそうです。
2:相手にお尻を向けない。靴は前を向いたまま脱ぐ
null靴を脱ぐとき、いつもどちらを向いてるでしょうか? もしかしたら“あとで揃えなくてよいように”と、玄関の方に体を向けて、後ろ向きで脱ぐ方もいるかもしれません。でも、これだとお尻を相手に向けることになってしまいます。
「玄関に入り、“お上がりください”と促されたら靴を脱ぎます。その時、前を向いたまま脱いで上がり、相手になるべくお尻を向けないようにかがみこんで、靴の向きを変えます。玄関を上がる時からお尻を向ける人をよく見かけますが、お尻を向けることは相手や家に対して失礼な態度であり、敬意を欠いた横着なふるまいに見られます。靴を揃え直す際には玄関の中央を避け、続いて上がる人のじゃまにならないよう端に寄せましょう」
相手にできるだけお尻を向けず、続く人の邪魔にならないように。そうした”相手に対しての気配り”を基本に考えるとスムーズに行動に移せそうですね。
3:裸足で他人の家に上がらない。バッグに靴下をしのばせて
null「人間の足の裏というのは、思っている以上に汚れているものです。汗や脂はもちろん、サンダル履きなどで外を歩いた場合は、埃や細かな砂なども付着していることがあります。一日履いていた靴下を見れば明白でしょう。
そんな状態で他人の家に上がることは、足裏の脂や汚れで廊下や床、畳を汚してしまうということ。裸足で他人の家に上がることは絶対に慎みましょう。これは、思いやりのマナーの第一歩として覚えておきたいことです。
盛夏などでサンダル履きだった場合は、あらかじめ靴下を持参し、玄関先で身につけます。スリッパをすすめられたら、靴下を着用してから履くようにしましょう」
茶席に招かれた場合、客は茶室に入る前に足袋を履き替えるといいます。
「これは、道中の汚れを持ち込まないという配慮を表すもので、これもまた、招いてくださった相手先への心づかいなのです」
昔より気温が高くなっている昨今。夏場はサンダルという方も多いかもしれません。自分ももちろんですが、子どもが一緒のおでかけの場合、子どもの分の靴下も持参しておきたいですね。
4:客間の上座は、入口からいちばん奥
nullそれほどかしこまった席ではなくても、客として訪れた際には、”どこが上座”かは知っておきたいところです。
「かつては、家の中のいちばん日当たりのよい場所に、客を迎えるためだけの表座敷や応接間がありましたが、現代ではおそらくリビングルームとして使われているのではないでしょうか。客として招かれ、リビングや座敷に通された時、どこに座るのがふさわしいのかを心得ていることは、大切なことです。
まず、どんな部屋であっても入口からいちばん遠い奥が上座、手前側が下座ということを、基本形として覚えておきましょう。和室であれば床の間の前が上座となります。これは、茶菓子などを運んで出入りする際にじゃまにならないという、実質的な理由もあります。
ちなみに、床の間とは掛軸や花を飾るための特別な空間です。腰かけたり、荷物を置いたりする行為はもってのほかです」
リビングでは2〜3人掛けソファが上座
関係性や状況によっては、「上座・下座」の基本に加え、柔軟に対応したほうがよい場合もあるようです。
「上座に座るか下座に座るかは、訪問先の方との関係性によって決まってきます。基本は“上座に客”ですが、“こちらにお座りください”と案内されたら素直にしたがうのもひとつの正解です。ただ、頼みごとをする場合やお礼で伺う場合、上司や先輩の家に挨拶に行く場合は、自ら下座に座るほうが自然でしょう。洋間では、長椅子(ソファ)が上座になり、1人掛けの椅子は格としてはその下になります。会社の応接間などに通された際には、来客は長椅子、と覚えておくと迷わずにすみます」
今回は、千 宗屋さんの新著から、人の家を訪れる際に知っておきたいことについて、いくつかご紹介しました。
いろいろなマナーがありますが、基本は「その場に同席する人どうしが、気持ちよく過ごせるように」ということ。昔から培われてきたその基本を知っていれば、どんな場面でも慌てず、堂々とふるまえそうですね。
イラスト/『お茶の若宗匠が教える「人づきあい」と「ふるまい方」いつも感じのいい人のたった6つの習慣』より
【書籍情報】
お茶の若宗匠が教える「人づきあい」と「ふるまい方」
いつも感じのいい人のたった6つの習慣
著:千 宗屋
定価:1,760円(税込)
千 宗屋(せん・そうおく)
茶人。千利休に始まる三千家のひとつ、武者小路千家家元後嗣。1975年、京都市生まれ。
2003年、武者小路千家15代次期家元として後嗣号「宗屋」を襲名し、同年大徳寺にて得度。2008年、文化庁文化交流使として一年間ニューヨークに滞在。2013年、京都府文化賞奨励賞受賞、2014年から京都国際観光大使。2015年、京都市芸術新人賞受賞。日本文化への深い知識と類い希な感性が国内外で評価される、茶の湯界の若手リーダー。今秋、「人づきあい」と「ふるまい方」を説いた書籍『いつも感じのいい人のたった6つの習慣』を上梓。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授、明治学院大学非常勤講師(日本美術史)。一児の父。Instagram @sooku_sen