最近庭にアースオーブンを作りました。きっかけは庭の土が掘り返してみると黄土色で、明らかに表面とは違う土質だったので、これを何かに活用できないかと考えたのが始まりでした。
アースオーブンとは、稲わらや砂、レンガなど身近にある素材で手作りした石窯のこと。友だちの家でも何度か見かけたことがあるのですが、「自分の庭の土でアースオーブンが作れたら最高だね」と、すっかり庭でピザやパンを焼く妄想が膨らんでいました。
せっかくなので極力家にあるものを使って、実験がてら作ってみることにしました。携帯で検索した数少ない情報をたよりに細心の注意を払いながら作ったアースオーブン、果たして仕上がりは?
先ずは土を練って粘土作りから
nullアースオーブンの主な素材は粘土です。まずはここ数年、放置気味ですっかり笹が伸び放題だった中庭の土を掘り返すところから始めました。引っ越してきた当初、50センチほどの深さの土を全て掘り起こして、ほぼ取り除いたと思っていた笹の根っこはすっかり元どおりになって、地中を縦横無尽にはびこっていました。その根っこと格闘しながら、土を掘り下げていくと、黄土色の土が出てきました。
黄色くてきれいな土とはいえ、硬さはカチコチで、“粘土”というにはまだまだ粘度が足りなそうだったので、小さく刻んだ稲わらと水を加え、娘と一緒に裸足でふみふみ。土の上で飛び跳ねたり、踊ったり、おかげで足もズボンも泥だらけになりました。稲わらには納豆菌が付着しているため、混ぜ込んでしばらく置いておくことで菌が繁殖し、土に粘りが出るそうです。しばらく練ったら、土を掘った穴に入れて、シートをかけて数週間そのまま置いておきました。
土台は崩れ落ちたコンクリートを再利用
null土台は何年か前の台風で崩れ落ち、玄関先に転がっていたコンクリートのブロックを積み上げ、見るからに頑丈な土台が出来上がりました。その土台の上に耐火レンガを敷き詰めていきます。
耐火レンガはホームセンターで買いました。レンガを18枚ほど敷き詰め、その上に窯となる部分を作り上げていきます。
そこで問題勃発。窯の入り口部分はレンガでアーチにするのですが、細かい作り方の情報がなく、どうやったらアーチ型になるのか(半円の木型を作ればいいようなのですが、それも大変そうなので)、何かいい方法がないかとあれやこれやと思案しました。
それで夫が思いついたのが土のう袋作戦。土のう袋をおいて、その上にアーチを作る、という強行作戦に出たところ、結果、成功しました! 夫はそれが相当嬉しかったようで、誇らしげに何度もアーチの美しさを熱弁していました。
土のドームを作る
null窯の入り口のアーチができたら、今度はいよいよ窯となる部分を作っていきます。まずは砂でまん丸の砂山を作って、その表面を濡れた新聞紙で覆っていきます。この新聞紙がのちのち、上にのっかる粘土との剥離材の役割を果たすので、重要な作業行程。一見、子どもの砂遊びのようにも見えますが、大人たちのかなりの本気モードに娘も近づけず、遠くから見守っていました。
濡れた新聞紙の上に、地中で数週間寝かせておいた粘土を10センチ程度の厚さで練りつけていきます。厚さを均一にするのが意外と難しく、こっちを直したら、逆が膨らんでるのが気になり、今度は叩きすぎてへこんでしまったり、終わりの見えない作業が続きました。そうこうしているうちに、どんどん表面が滑らかになり、美しい曲線を描きだし、なんだか愛おしくなってくるのでした。ドームの中にはまだ砂が入っているとはいえ、ここまでくると完成形が目に見えてきて、それだけで満足。
土を塗ったら表面の乾燥に入ります。太陽の光で一気に乾かすとヒビが入ってしまうというので、シートをかぶせ、ゆっくり乾かすことにしました。雨が降って濡れてしまうと壊れてしまうので、簡易的な屋根もつけました。
夫は仕事から帰ってくると、私たちに顔を出すより先にアースオーブンのところに寄り、表面を撫で回し、ヒビが入っていないか毎日、入念にチェック。ある時は真っ暗になっても戻ってこないと思っていたら、暗闇の中で粘土を練り、ヒビ割れた部分に粘土を塗り重ねているのでした。まるで我が子を可愛がるかのような気持ちの入れよう。そのおかげもあって、塗り直しを繰り返し、さらに2週間ほど乾かし、ついに火入れの日を迎えることができました。
いよいよ火入れ
null火入れの瞬間は緊張です。薪を焚べ、少しずつ火の位置を変えながら、窯に火が回っていくのを見守りました。じわじわと窯の表面が温かくなっていくのに感動!
後々調べた情報によるとアースオーブンの開口幅は内径の1/2〜2/3、内側ドームの高さの63%が理想とありましたが、大きなピザを焼きたいという願望の方が先に立ち、ちょっと間口を大きく作りすぎたようです。間口が広い分は蓋をすることで何とかカバーすることにしました。
なにはともあれ、火入れ成功! 初夏に土台を作り始め、完成の頃には秋になっていました。記念すべき最初の料理は豪勢にチキンの丸焼きと鯛のアクアパッツァにしました。出来上がったチキンはナイフを入れるとほろほろと崩れる柔らかさで、鯛のアクアパッツァは魚の油とオリーブオイルが贅沢に混じり合って、絶品でした。もう少し慣れてきたら、念願のピザやパンにも挑戦したいと思っています。
次回は、移住してから来月で7年目になる今、あらためて日々感じていることをお届けします。
【著者】
清土奈々子
都内から階段100段を登った高台の一軒家「野ざらし荘」に移り住み、夫と3歳の子と暮らす。編集・ライター、ギャラリー「野ざらし荘」運営、子ども向けワークショップのコーディネーター、絵描きのtoiとともにユニット「村のバザール」を組みライブイベントの企画やウェディング装飾、デザインワークなど行う。ミュージックビデオなど映像制作も。
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