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冬のお家時間に聴きたい!2021年のメモリアル作曲家の2曲【田中泰の親子で楽しむクラシック#1】

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音楽ジャーナリストの田中泰さんが親子で楽しめるオススメのクラシック曲を毎回テーマごとに紹介する連載・第一回目のテーマは「親子で聴きたい今年注目のクラシック」。2021年のメモリアル作曲家である、サン=サーンスとストラヴィンスキーを紹介してもらいます。


“現役東大生の2人に1人が幼い頃ピアノを習っていた”という。さらにはバッハを聴くと牛はお乳をたくさん出し、鶏は卵をたくさん産むという逸話も聞こえてくる。これが真実かどうかは定かでないが、クラシック音楽が人の心を落ち着かせることは間違いない。

穏やかな冬の日にクラシックを聴きながら親子で素敵な時間を過ごしてみるのはいかがだろう。というわけで、まずは今年の“メモリアル作曲家”2人にご登場いただくことにした。

2021年のメモリアル作曲家は、サン=サーンスとストラヴィンスキー

クラシック界では毎年、生没年に付随した“メモリアル作曲家”なるものが話題となるのはご存じだろうか。昨年2020年は生誕250年を迎えたベートーヴェンがクラシック界の主役だった。

そして2021年は、没後100年のサン=サーンス(1835-1921)と、没後50年のストラヴィンスキー(1882-1971)がこれに該当する。今年は1年を通してこの2人の作品を聞く機会が多くなること間違いなし。まさに要チェックの作曲家だ。

1曲目:サン=サーンス『動物の謝肉祭』

フランス近代を代表する作曲家サン=サーンスは、モーツァルトと並ぶ神童ぶりを発揮したことでも知られている。なにしろ2歳でピアノを弾き、3歳で作曲を始めたというのだからびっくりだ。

その彼の代表作として有名な作品が、組曲『動物の謝肉祭』だ。友人のチェリスト、シャルル・ルプークが催すプライベートな夜会のための音楽を依頼されたサン=サーンスが作曲した14曲からなるこの組曲には、他の作曲家たちのパロディが満載。

唯一のオリジナル作品である『白鳥』以外は、スキャンダルになることを恐れて死ぬまで演奏や出版を禁じていたというのだから可笑しい。しかしその音楽の素晴らしさはまさに破格。

今ではプロコフィエフの『ピーターと狼』やプーランクの『ぞうのババール』などとともに、子どもに聴かせたいクラシック音楽として世界中で親しまれている名曲だ。有名な『白鳥』はもちろん、ライオンや象にカンガルーなどの動物たちが生き生きと描かれた音楽は、親子で楽しめる作品の筆頭だ

録音に於いては、マルタ・アルゲリッチ(ピアノ、写真左)が腕利きの仲間たちと一緒に演奏したアルバムをお薦めしたい(写真右)。

マルタ・アルゲリッチ © Susesch Bayat / DG
マルタ・アルゲリッチ演奏のアルバム
サン=サーンス:組曲『動物の謝肉祭』

2曲目:ストラヴィンスキー『火の鳥』

ストラヴィンスキー Photo: Sony Music Entertainment

一方、ロシアに生まれ、フランス時代を経て後半生はアメリカで活躍したストラヴィンスキー(=写真)の音楽は、時代的には難解なイメージの“現代音楽”の範疇に入りながら、今やクラシック音楽のスタンダードとして大人気だ。

1959年4月から5月にかけて来日し、当時日本では評価されていなかった武満徹(1930-1996)の音楽を絶賛。さらには街を練り歩く「ちんどん屋」に興味津々だったという逸話も実に楽しい。

今回は、28歳のストラヴィンスキーの名を世に知らしめたバレエ音楽『火の鳥』に注目してみたい。ロシアバレエ団の主催者ディアギレフからの依頼によって作曲されたこの作品は大成功を収め、後に続く『ペトルーシュカ』&『春の祭典』によってストラヴィンスキーは時代の寵児へと上り詰めていったのだ。

録音に於いては、名曲中の名曲だけに実にたくさんのアルバムが存在する。中にはストラヴィンスキー自身が指揮したものやピアノを弾いたものまで存在するのは、同時代の作曲家ならではの恩恵だ。その中で個人的に愛聴しているのは、同時代の作曲家で指揮者のレナード・バーンスタイン(1918-1990、写真左)がニューヨーク・フィルハーモニックを指揮した1枚だ(写真右)。

レナード・バーンスタイン Photo: Don Hunstein / Sony Music Entertainment
ストラヴィンスキー『春の祭典』(1972年録音)&組曲『火の鳥』(1919年版)指揮:レナード・バーンスタイン

幼いお子さんをお持ちの方には、1940年に制作された伝説のディズニー映画『ファンタジア』の続編として作られた映画『ファンタジア2000』をお薦めしたい。クラシック音楽を美しいアニメーションとともに楽しめる内容はクラシック入門にもピッタリ。特に、灰の中から復活した火の鳥が壮大な音楽を背景に躍動するシーンは、何度観ても感動的だ。

『ファンタジア/2000』。映画『ファンタジア2000』のサウンドトラック

名曲の生まれた背景には必ず物語が存在する。それを知ることによって音楽はさらに親しみやすくなるに違いない。そしてその中から自分にピッタリの1曲を見つけること。それこそがクラシックを好きになる第一歩だ。


 

@梅谷秀司

【著者プロフィール】

田中泰(たなか やすし)

音楽ジャーナリスト/プロデューサー。1957年横須賀生まれ。1988年、「ぴあ」入社以来一貫してクラシックジャンルを担当。2008年、「スプートニク」を設立して独立。J-WAVE「モーニングクラシック」ナビゲーター、JAL「機内クラシック・チャンネル」構成、「アプリ版ぴあ」クラシックジャンル統括&連載エッセイなどを通じ、一般の人々へのクラシック音楽の普及に務めている。一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。

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