2024年の「食トレンド大賞」の結果は?
null今年の大賞は「こねないパン」。2位「パリおにぎり」、3位「カニカマ・魚肉ソーセージ」、4位「グリークヨーグルト・アサイー」、5位「クラフト紅茶」、調理器具「せいろ」、トレンドワード「ザクザク」という結果になりました。
2024年の食トレンド大賞の結果について、クックパッド広報 兼 食リサーチャーの小堀彰子氏に解説してもらいました。あわせてクックパッドに掲載されているレシピも紹介します。
大賞「こねないパン」
「こねないパン自体は日本では10年近く前に登場してブームになりました。その後は外食や時短などで、家でパンを作ること自体が少なくなっていましたが、コロナ禍で在宅時間が増えた2020年~2023年に手作りパン自体の検索値が上がる傾向にありました。こねないパンはレシピ検索頻度が今年の年明けあたりから上がり始め、昨対比で429.9%と大幅に伸びました。
こねないパンとは、耐熱容器の中で材料を混ぜて作る手法のパンで、従来のパン作りに必要とされてきた“こねる”作業を省略したものです。発酵も簡略化しているものもあり、早いものだと混ぜるところから焼き上がりまで30~40分程度でできあがるので、炊飯よりも早くできると注目を集めました。
また、力が必要な生地をこねる作業が軽減されるので、力の弱い高齢者や子どもが気軽に楽しめるレシピが多くあり、年代を問わず作る人が増えています。
さらに大きな上がり幅を見せたのが8月です。2024年の食に関する一番大きなできごとは、8月中旬頃からのコメ不足とコメの高騰。こねないパンもその影響を受けて、米不足からパンを食べることが増える中、2022年以降の小麦粉の価格上昇に伴い、専門店のパンの価格も上がっており、自宅で手作りパンにチャレンジする人が増えたことで人気となりました。オーブンを使う料理は12月ぐらいからは本格的になってくるので、人気はまだしばらく継続するとみています」(以下「」内、小堀さん)
レシピ「作業時間5分!こねない基本のパン」(♪♪maron♪♪ さん)
【材料】
- 16×20cm耐熱容器1台分
- 強力粉…250g
- ドライイースト…4g
- A.砂糖…20g
- A.水…180g
- B.塩…4g
- B.お好きな油…20g
【作り方】
- 耐熱容器にAを入れてレンジ【600w】30秒加熱する。
- ドライイーストと強力粉を分量の半量加えて、均一に混ぜたらBを加える。
- 残りの強力粉を加えてひとまとまりになるまで混ぜたら、レンジ【600w】20秒加熱する。
- そのままスプーンの背で平たくのばす、または6等分に丸めて容器の中で10分程度発酵させる。(※時間があればひとまわり大きくなるまで発酵させてください)
- 予熱したオーブン【180℃】20〜25分加熱する。
2位「パリおにぎり」
専門店ができたり、カフェで提供したりとパリでおにぎりブームが起こっていることや、五輪開催も相まって、スーパーマーケットや専門店でも「パリ風おにぎり」がイベントの時期に“観戦めし”として発売されて話題になりました。
「日本にはない発想の華やかな見た目と、チーズやドライトマト、オリーブなど意外な食材との組み合わせのおいしさに、おにぎりのさらなる可能性を見出した方も多かったようです。
これは手巻き寿司に近い発想ではないかと思っていまして、好きな具材を使ってごはんと合わせておにぎりにしたら、食べてもおいしかった。だったらこんな具材でも挑戦できそうと、アレンジの幅が広がりました。
結論としては、おにぎりのポテンシャルの高さがすごかったということですが(笑)。今、パリでは丼ものも流行っているので、パリおにぎりに続く『パリ丼』が出てくるかもしれないですね」
レシピ「スモークサーモンとディル★パリおにぎり」(元外交官夫人のレシピ さん)
【材料】 2個分
- ご飯…180g
- スモークサーモン…50g
- クリームチーズ…30g
- ディル(オイル漬け可)…少量
- 天かす…大さじ2
- 白ごま…大さじ1
- 麺つゆ…小さじ1
- 焼きのり…1/2枚
【作り方】
- ご飯をボウルに入れ、焼きのり以外全て入れ、サックリと混ぜる。
- ラップしておにぎりにする。出来上がり。
3位「カニカマ・魚肉ソーセージ」
価格・供給が安定している「練り物」は、物価高騰の際に重宝する食材。肉、魚より長く保存ができ、冷蔵庫に常備できることも人気の理由となっています。50年の歴史を持つ人気商品の「カニカマ」と、ローリングストックができる「魚肉ソーセージ」が注目されました。
「カニカマは長く安定した人気のある食材ですが、今年は特に人気が伸びました。カニカマは誕生して50年経っており、日本かまぼこ協会さんによると、戦後日本の『食品の三大発明』として、インスタントラーメン、レトルトカレーと並びカニカマが含まれるそうです。
カニカマ人気も一番の要因はシンプルにおいしいからだと思います。メーカーさんの企業努力により、様々な価格帯の商品が展開されていて今では高級カニカマも登場しています。
さらにカニカマのすごいところは包丁が不要ということ。同じ練り物でもちくわやかまぼこは包丁を使いますが、カニカマは、そのままでも加熱してもおいしく食べられる。使い勝手が広いことが人気の理由でもあると思います。
練り物が伸びた理由として、価格が上がった豚肉の代わりに使える食材ということもありますが、魚肉ソーセージに関しては、台風や地震の続いた8~9月に保存の効く食材として認知が高まった背景があります」
レシピ「簡単☆きゅうりとカニカマのサラダ」(こたろう☆彡 さん)
【材料】 2人分
- きゅうり…1本
- カニカマ…1/2パック(4〜5本)
- ◎ポン酢しょうゆ(味ポン)…大さじ1
- ◎マヨネーズ…大さじ2
- 白ごま(すりごまでも)…大さじ1
【作り方】
- きゅうりは、ななめ薄切りにしてから細切りにしてボウルに入れる。
- カニカマは細かくほぐして、(1)のボウルに入れる。
- ◎の調味料を、きゅうりとカニカマのボウルに加える。
- よく混ぜ合わせたら、白ごまを振って出来上がり。
レシピ「ほうれん草とギョニソのにんにく塩麹炒め」(発酵家族 さん)
【材料】 4人分
- ほうれん草…100g
- 魚肉ソーセージ…1本
- にんにく…1かけ
- 油…大さじ1
- 塩麹…小さじ2
【作り方】
- ギョニソは縦半分に切って薄切り、にんにくはみじん切り、ほうれん草は長さ3cmに切る。
- 油をフライパンに入れにんにく、ギョニソを入れて弱火で炒める。
- ほうれん草を加えて炒める。
- ほうれん草がしんなりしたら火を止めて塩麹を加えて混ぜる。
コメ不足やコメの高騰、食品の値上げが反映された1年
null2024年の食に関する一番大きなできごとは、8月中旬頃からの「コメ不足」と「コメの高騰」。米だけではなく、豚肉・野菜・調味料など、さまざまな食品の値上げも話題となりました。
ごはんの代わりとして炊飯よりも早くできる「こねないパン」や、保存の効く練り物など、「食トレンド大賞」も今年の世相を反映した結果となりました。
小堀さんによると、秋以降に検索数が爆上がりしているのが「だし」。手軽にできる粉末だしを使っていた人たちが、この数年に浸透してきた袋入り高級だしへシフト。だしを前面に出した専門店も登場し、だしそのものに対する関心度も上がってきているようです。
だしと共に急上昇しているのが、家庭料理の定番「煮物」。今秋は葉もの野菜の価格が高くなっており、価格が安定しているれんこんや里芋といった根もの野菜が注目されて、煮物のレシピ検索が増えているのかもしれませんね。
取材・文/阿部純子