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えっ!「お雑煮」のお餅、四角か丸かの境界線は「関ヶ原」だった!? お出汁(だし)や具材、知ってると楽しい全国お雑煮マップ

伝統的な和食を作る家庭がどんどん減っているなか、「お雑煮」は各地域・家庭ごとの味が残された希少な郷土料理ではないでしょうか。

出汁(だし)に使う素材、入れる具材、お餅の形状など、「お雑煮」という言葉で思い浮かぶ姿や味は人それぞれ。その豊かな食文化のルーツと魅力について、数々の出汁商品が大人気の茅乃舎さんが詳しく教えてくれました。

白味噌、あご出汁、具がブリ?全国のお雑煮を食べ比べてみると…

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「お雑煮」と一言に言っても、地域によって出汁や具材の組み合わせはそれぞれです。

茅乃舎さんは、お出汁を大切にする日本の和食文化を残していきたい……という思いもあり、長く食べ継がれてきた「お雑煮」の多様性にあらためて着目。

日本各地のお雑煮のなかから特徴的なものを5つピックアップし、それぞれの特徴と伝承の理由などを教えてくれました。

茅乃舎は、福岡県にある久山町の里山に佇むレストラン「御料理 茅乃舎」が創業の地。……ということもあり、まずは「博多」のお雑煮からご紹介。

 

博多雑煮は「あご出汁+丸餅」

ごろっと大きな具材が入っている博多風雑煮は「あご出汁」で、お餅は「丸餅」。

今回使ったのは、福岡旅行のお土産としても大人気の「博多限定 茅乃舎あごだし」。焼きあごとあご節の2種を贅沢に重ね使いし、真昆布や煮干しなどを加えたお出汁で、たっぷりの具材に負けない力強さが!

具材はブリ、かまぼこ、かつお菜、小芋、干しシイタケ、金時人参、柚子など、色とりどりで豪華です。もともとは博多の商人が、自分のお客様のために作った「おもてなし料理」だったということから、具沢山になったそう。

関東風雑煮は「かつお出汁+角餅」

もともとは江戸時代に武士が作っていたものがルーツという「関東風雑煮」。武士にとって大切な「勝負事に勝つ」ということに験(げん)を担いだ中身になっています。

ベースになるのはすまし汁、「かつお出汁」で作られていて、スッキリとキレのある味わい。

これは、味噌を使うと「味噌=ミソをつける」(失敗をしてしまい、面目を失う)となってしまわぬように、縁起を担いだため。

お餅は角餅。角餅は別名「のし餅」とも呼ばれていて、これも「敵をのす」(敵を倒す)と縁起をかついでいるといわれています。

関西風雑煮は「昆布出汁+味噌+丸餅」

関東とは対照的に味噌ベースなのが「関西風雑煮」。味噌は白味噌、合わせ味噌など、家庭によってそれぞれで、お出汁は昆布出汁、お餅は丸餅。

今回の関西風雑煮では甘い白味噌を使い、具材は金時人参、小芋、柚子を香りづけに。肉類は入れていません。お出汁は京都店限定で販売している「京都限定 茅乃舎おだし」を使用。

京都の料亭などでも使われている鮪節をベースに、真昆布と利尻昆布を合わせた繊細な味わいのお出汁です。まろやかで優しい汁に、柚子が香る上品な味わいが、まさに関西風。

出雲雑煮(島根)は「鰹と昆布の合わせ出汁+丸餅」

丸い餅の上にのせられた「岩海苔」が主役の、島根県出雲地方で食べられている「出雲雑煮」。この海苔は、日本海に面した十六島(うっぷるい)という半島の岩場に自生する岩海苔を収穫して使っています。

岩海苔を取るのは命がけの作業のため、大変貴重なものとされていて献上品としても使われてきた歴史も。

鰹と昆布の合わせ出汁をベースに、具材は丸餅とシャキシャキとした食感が特徴の十六島海苔、セリだけのシンプルなお雑煮です。岩海苔ならではの磯の風味と出汁の相性が抜群。

鮭雑煮(新潟)は「煮干し出汁+角餅」

西日本のブリに対して、東日本では鮭が具材ではよく使われているそう。新潟で食べられている「鮭雑煮」は、煮干しベースのお出汁で、具材は鮭といくらがメインに、大根、人参、里芋といった根菜やこんにゃくやかんぴょうなども入り、見た目も華やか。

かんぴょうは「細く長い」ことから、長寿につながる縁起の良い食材と言われています。

日本の「お雑煮」マップはこんなに多様です!

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「お雑煮」という言葉は室町時代の文献にも残っているそう。当時はお正月だけに食べるものではなく、武家や上流階級の人たちの中でお客様をもてなす料理で、なんと500年も前から続く食文化なのです。

今回、茅乃舎ではお雑煮を3つの視点「お餅の形と調理方法」「だしと味付け」「海・山・里の食材」で調査してみたところ、こんな分布図が完成!

まずはお餅。角餅と丸餅との大きな分かれ目は、関ヶ原近辺から北は石川県、南は三重や和歌山の付近で分かれるようです。

そして出汁と味付け。全国的にはすまし汁が多く、関西と四国の一部では味噌仕立て。この分布図では、山陰に小豆汁仕立ての地域がありますが、その他にも小豆汁が食べられている場所は、全国に点在しているそう。

具材も、お祝いだからと縁起のいいものを具沢山に入れるところもあれば、お肉は入れないというエリア、またシンプルにお餅だけという地域も。ここにも地方それぞれの食文化が根付いています。

「お雑煮」と一言にいっても、各地域、家庭ごとにほんとうに様々な味で作られていることがわかります。

「料理のプロ」が考える「これからのお雑煮」とは?

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長い歴史のなかで様々に変遷してきたお雑煮。では令和のいま、新しいスタイルで食べるにはどんなお雑煮がいいのでしょう?

そんなお題に、料理家で管理栄養士の長谷川あかりさんとフードライターの白央篤司さんが、それぞれ新しいお雑煮のアイディアを教えてくれました。

長谷川あかりさん(写真中央)と白央篤司さん。

長谷川あかりさんが提案してくれたのは「翌日アレンジ クリーム雑煮」。

お雑煮をたくさん作った翌日の、残りを使ったアレンジメニュー。「和のお出汁と品はが良いので、ちょっと贅沢に生クリームを入れたり、バターや小麦粉などでとろみをつけてみては」というもの。これは新鮮! 和風のホワイトシチューといった感じでしょうか。

「クリーム雑煮」にすることでごちそう感も増すので、子どもも喜ぶのでは?と長谷川さん。若い世代の料理家さんの新しい提案、試してみたくなりました。

白央さん作のウィンナー雑煮と山菜雑煮。

白央さんからは「トムヤムクン雑煮」のアイディアが。

「お正月も3日目になると、ちょっとエスニックなものが食べたくなる」という経験から、レトルトのトムヤムクンスープなどに焼いたお餅を入れて、パクチーをのせて仕上げる、という提案。

おせちに始まる、お正月メニューの「和の味」に飽きてきた口にぴったりだそうです。

また白央さんは、寒い時期になるとお正月に限らずよくお雑煮を作るそう。

ウインナー雑煮や山菜雑煮など、簡単・時短で調理できて、1つのお椀で野菜やタンパク質と主食が一気に取れるお雑煮は、つまり「餅入りスープ」。もっと気軽な感覚で、自由に作ってみては?と話してくれました。

茅乃舎では、日本の食文化の多様性を代表する料理「お雑煮」を題材にしたwebコンテンツ「お雑煮という奇跡」公開しています。

こちらのweb記事を参考に「我が家のお雑煮」のルーツを考えてみるのも楽しそう! お正月に限らず、もっと自由にもっと気軽に「お雑煮のある食卓」を楽しんでいけたら、という思いになりました。

 

【取材協力】 久原本家 茅乃舎

北本祐子
北本祐子

大阪生まれ。IT系出版社に勤務後、「女性にもITをもっと分かりやすく伝えたい!」とIT系編集・ライターとして独立したはずが、生来の好奇心の強さとフットワークの軽さから、気が付けばトレンドライターとして幅広いジャンルを取材・執筆するように。商業施設や店舗の出店や話題の新商品など、時流にまつわるできごとをさまざまな切り口で伝えています。

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