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良質な脂質やビタミン類が摂れる!「いくら」の栄養情報と、食べる際の注意点を解説します

いくら丼やお寿司でおなじみのいくら。魚卵だけに栄養満点なイメージですが、具体的にはどんな栄養素が含まれるのでしょうか。また、塩分やカロリー、コレステロールなどが気になる人や小さい子どもなど、食べる際に注意したほうがいい人や食べ方についてなども管理栄養士が解説します。

いくらの栄養情報

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いくら100gあたりに含まれる栄養素

・エネルギー:252kcal
・たんぱく質:32.6g
・脂質:15.6g
・ビタミンA:330μgRAE
・ビタミンD:44.0μg
・ビタミンE:9.1mg
・ビタミンB1:0.42mg
・ビタミンB2:0.55mg
・ビタミンB6:0.06mg
・ビタミンB12:47.0μg
・カルシウム:94mg
・カリウム:210mg
・DHA:2,000mg
・EPA:1,600mg

カロリー高めなのでたくさん食べるときは注意!

脂質を多く含んでいる魚と同程度のエネルギー(カロリー)ですが、お寿司の軍艦に盛られているものが10~20g程度なので、1食あたりそれほど多くの量を食べるものではありません。

とはいうものの、いくら丼では80g~150g程度にもなり、多く食べるとエネルギーの摂りすぎにもつながるので注意が必要です。

その他の代表的な魚類と100gあたりに含まれるエネルギーの量を比べてみましょう。

・いくら:252kcal
・ぶり:222kcal
・さんま:287kcal
・しろさけ:124kcal
・たら:72kcal
・たい:160kcal

抗酸化ビタミンA、E

いくらには、特に抗酸化作用のあるビタミンAやEが豊富に含まれています。いくらの親であるさけと比べると、その量も桁違い。

いくらとしろさけ各100gあたりに含まれるビタミンA(レチノール活性当量)/Eの含有量

いくら:330μgRAE/9.1mg
しろさけ:11μgRAE/1.2mg

また、カルシウムとリンの吸収を助け、丈夫な骨に欠かせない栄養素であるビタミンDの量も、魚介類の中ではトップクラスです。

EPA、DHAがたっぷり

いくらは脂質が多く、オメガ3系多価不飽和脂肪酸のEPAとDHAの含有量は魚介類の中でも上位に位置しています。

いくら40gほどでオメガ3系脂肪酸の食事摂取基準の量を満たすことができるので、良質な脂質が不足がちなときに少量を和えものに使ったり、トッピングしたりするのもおすすめです。

いくらにはどんな効果効能が期待できる?

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抗酸化作用をもつ成分

いくらの色素であるアスタキサンチンは、自然界に広く存在するカロテノイドの一種で、活性酸素を取り除き、酸化の働きを抑える物質として知られています。

さらに、豊富に含まれているビタミンAやビタミンEにも抗酸化作用があるため、過剰な活性酸素を無毒化することで、様々な病気の予防やエイジングケアの効果も期待できるのではないでしょうか。

生活習慣病の予防にもお役立ち

また、必須脂肪酸のDHA・EPAもしっかりと摂ることができます。DHA・EPAは、血液をサラサラにする効果や生活習慣病予防、認知症予防などに効果があるといわれています。

食べるのに気を付けた方がいい人は?

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子どもはいくら大好きだけど…?

一般的に売られているいくらは、生の状態を醤油漬けや塩漬けにしたものです。まず塩分の量が多くなりがちなので、一度にたくさんの量を食べることは避けたほうがいいでしょう。

また、子どもはまだまだ胃腸の消化力も未発達。免疫も未熟であり、万が一の食中毒によるリスクもあります。体も小さいため、食べた量が少量でも影響を受けやすいと言えます。

アレルギー特定原材料に準ずる21品目に指定されている食品でもあることから、個人差はありますが、3歳を過ぎてから、異変がないか様子を見ながら少量を与えるようにすることが大切です。

エネルギーが高めの食品であることも考慮し、上記に問題がない場合でもたくさん食べさせることは避けましょう。

妊娠中はいくらを食べてもいいの?

いくらに豊富に含まれているビタミンAは、肌や粘膜を守り免疫力を高める働きをもつ一方で、摂りすぎると過剰症になることでも知られています。

特に気をつけたいのが妊娠中です。お腹の赤ちゃんの発達にとって不可欠な栄養素ですが、不足しても摂りすぎてもよくありません。

妊娠初期における、うなぎやレバーなどの動物性食品やサプリメントの摂りすぎはビタミンAの過剰摂取につながり、器官形成異常のリスクも指摘されています。

妊娠後期から授乳期には付加量もありますが、耐容上限量も設定されており、日常的にビタミンAを多く含む食品に偏りすぎないように注意も必要です。

また、妊娠中は免疫力が下がっていることと、食中毒による赤ちゃんへのリスクを考慮して、生ものは避ける方がよいと考えられています。特にいくらは、塩分も高いため、控えておいた方がよいでしょう。

塩分が気になる人は注意!

いくらの食塩相当量は100gあたり2.3g。いくらを100g食べることはまれではありますが、「日本人の食事摂取基準」では、1日の食塩相当量の目標量は成人男性7.5g未満、成人女性6.5g未満とされており、高血圧や心疾患をもつ人だけでなく、食べすぎには注意が必要です。

コレステロールも多め

また、いくら100gに含まれるコレステロールは480mg。鶏卵の370mgと同程度です。現行の「日本人の食事摂取基準」では、食事から摂取するコレステロールについて上限値は設定されていませんが、LDLコレステロールが高い人で、飽和脂肪酸やコレステロールの摂取量が多い人は、それらを含む食品を控えめにすることが推奨されています。

意外とプリン体は少なめ

また、痛風発作再発リスクを高めるプリン体は、あらゆる生物の細胞内に存在し、ほとんどの食品に含まれています。治療には、1日のプリン体摂取量が400mgを超えないようにするのがのぞましいとされています。

一般的にレバーやたらこといった細胞数の多い食品には特に多く含まれているため、いくらもプリン体を多く含んでいるイメージですが、意外とそれほど多くは含まれていません。いくらは、100g中50mg以下の「極めて少ない」に分類されます。これは、同じく「極めて少ない」に分類されている米飯に含まれているプリン体よりも圧倒的に少ない数値でもあります。

撮影/黒石 あみ(小学館)

 

【参照】

・文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
・厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
・「食材図典Ⅲ」小学館
・「脂質異常症」eヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-004.html
・「プリン体」eヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-032.html
・「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」
https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001086/4/Clinical_Practice_Guidelines_of_Hyperuricemia_and_Gout.pdf
・「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」付録
https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0052/G0000210/0035

(最終参照日2022/12/20)

大槻 万須美
大槻 万須美

管理栄養士・フードスタイリスト。楽しく食べて健康に。大学卒業後、食品メーカー勤務を経て管理栄養士の道に進む。
食の大切さを伝えるため、コーチングを取り入れたバレエダンサーやアスリートのパーソナル栄養サポート、親子クッキングや離乳食講座などの料理教室、レシピ・コラムの提供、栄養講座、研究機関協力など幅広く活動。
現場の生の声から多くを学びながら、おとなと子どもの食育サポートに力を注いでいる。

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