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捨てるとこなし「あんこう」のコラーゲン豊富な身&栄養満点なあんきもの栄養情報を詳しく解説

あんこうは、鍋料理でおなじみの冬の味覚。また、蒸したあんきもはおつまみとしてもよく食べられていますね。あんこうは、身と肝の部分で含まれる栄養素に大きな違いがあります。特にあんきもはカロリーが気になるという人も多いかも。身と肝それぞれの栄養情報を管理栄養士が詳しく解説します。

あんこうの基礎知識

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あんこうの旬の時期って?

あんこうの旬は11月から2月ごろ。春の産卵の時期を控え、冬に栄養を蓄えた状態がおいしいといわれます。
あんこう鍋や、あんこうから出る水分だけで煮るどぶ汁など、寒い時期に旬を迎えるあんこうならではの料理が人気です。

捨てるとこなし!あんこうのさばき方

あんこうは、1.5m前後と身が大きくてやわらかくぬめりもあるため、まな板と包丁ではうまくさばけません。口に鉤をかけて天井からつり下げる「つるし切り」というあんこう特有の方法がとられます。

あんこうは、捨てるところがない魚といわれ、身(柳肉)以外にも、皮、肝臓(あんきも)、卵巣(ぬの)、胃(水袋)、エラ、ひれ(とも)の「あんこうの七つ道具」と呼ばれる、背骨を除くほとんどの部位が食されます。

つり下げて、内臓を傷つけないようにしつつ、身をそぐようにさばいていくと、最後に残るのは唇だけになるそうです。

あんこう・あんきもの栄養情報

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あんこう(生)100gあたりに含まれる栄養素

・水分:85.4g
・エネルギー:54kcal
・たんぱく質:13.0g
・脂質:0.2g
・ビタミンA:13μg
・ビタミンD:1.0μg
・ビタミンE:0.7mg
・ビタミンB1:0.04mg
・ビタミンB2:0.16mg
・ビタミンB6:0.11mg
・ビタミンB12:1.2μg
・カルシウム:8mg
・カリウム:210mg
・DHA:23mg
・EPA:6mg

あんきも(生)100gあたりに含まれる栄養素

・水分:45.1g
・エネルギー:401kcal
・たんぱく質:10.0g
・脂質:41.9g
・ビタミンA:8,300μg
・ビタミンD:110.0μg
・ビタミンE:14.0mg
・ビタミンB1:0.14mg
・ビタミンB2:0.35mg
・ビタミンB6:0.11mg
・ビタミンB12:39.0μg
・カルシウム:6mg
・カリウム:220mg
・DHA:5,100mg
・EPA:3,000mg

あんきもにはビタミンAがたっぷり!

あんこうは、身の部分とあんきもと呼ばれる肝臓とは、栄養価がまるで違います。あんこうの身は水分が多く、全体的に栄養価はそれほど高いとはいえませんが、脂溶性ビタミンであるビタミンA・D・Eを含んでいます。

一方、「あんこうの価値は肝で決まる」とも呼ばれるほど珍重されているあんきもは、栄養価が高く、特にビタミンAが桁違いに多く含まれています。ビタミンD・Eも豊富です。

ひれや皮にはコラーゲン

あんこうのたんぱく質含有量は、一般的な魚の6~7割程度ですが、ひれや皮の部分にはたんぱく質の一種であるコラーゲンが豊富に含まれています。ひれや皮まで余すことなく食べられるのがあんこうならではの特徴ともいえます。

コラーゲンを多く含む食品には、他に鶏の手羽、牛すじ、鶏皮、フカヒレなどがあります。

脂質、DHA&EPA

あんきもは脂質が多く、オメガ3系多価不飽和脂肪酸のDHAとEPAの含有量が桁違い。それほど多くの量を食べるものではありませんが、魚の中でもDHAとEPAを豊富に含むまいわしと比べて数倍にものぼります。あんきもはなんと2g程度でオメガ3系脂肪酸の食事摂取基準の量を満たすことができるんですよ。

あんこうに期待できる効果効能

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身の部分はダイエット中の人でも安心

あんこうの身は水分量が多く、超低カロリー。ダイエットの強い味方になります。鍋料理にして野菜をたっぷり食べるのがおすすめ。

一方のあんきもはダイエット中に摂りたいDHA・EPAやビタミン類も豊富ですが、4割が脂質でありカロリーも高いので、食べすぎないように注意しましょう。

コラーゲンはどんな働きをする?

あんこうの皮やひれの部分に豊富に含まれているコラーゲンは、人体のたんぱく質全体の約30%を占めるといわれ、皮膚や腱・軟骨などを構成しています。

コラーゲンの美容・健康効果は、現在も多くの研究が進められていて、その有効性については十分証明されているとはいえませんが、ビタミンCとビタミンAがコラーゲンの再構築に関わっているといわれています。

あんこうにはビタミンAが含まれているため、ビタミンCを含む食品を同時に摂ると効果がアップすると考えられます。あんこうの唐揚げなどにレモン汁を絞って食べる方法は理にかなっているといえますね。

あんきもは特に女性の健康管理にもお役立ち

特に栄養素が豊富なあんきも。貧血予防にも重要な役割を果たす鉄、亜鉛、銅、また、骨を丈夫にして骨粗しょう症を防ぐビタミンD、強い抗酸化力で細胞の老化を遅らせるといわれているビタミンEなどを含んでおり、特に女性の健康管理にパワーを発揮してくれます。

また、体内で合成できないため食物から摂取する必要のある必須脂肪酸のDHA・EPAが豊富。血液をサラサラにする効果や生活習慣病予防、認知症予防などに効果が期待できるといわれています。

妊婦さんはあんきもの量に注意!

あんこうにはビタミンAが豊富に含まれていますが、このビタミンAは、肌や粘膜を守り免疫力を高める働きをもつ一方で、摂りすぎると過剰症になることでも知られています。

特に気をつけたいのが妊娠中。お腹の赤ちゃんの発達にとって不可欠な栄養素で、胎盤を通して赤ちゃんにも供給されるのですが、不足しても摂りすぎてもよくありません。

妊娠初期における、あんきも・レバーなど動物性食品やサプリメントの摂りすぎによるビタミンAの過剰摂取から、器官形成異常のリスクが指摘されています。

妊娠後期から授乳期には付加量もありますが、耐容上限量も設定されており、日常的に摂りすぎないように気をつけましょう。

痛風の人が気になるプリン体

あんきもにはプリン体が多く含まれており、特にあんきもの酒蒸しは、100g中300mg超の「きわめて多い」に分類されています。

あんきもだけでなく、肉や魚など高プリン体食材を多く摂取すると血清尿酸値は上昇し痛風発作再発リスクが高まるため、プリン体を多く含む食材は少量におさえることを心がけましょう。また、プリン体は水溶性なので、溶出した煮汁をとらないようにすることで、プリン体の摂取量を抑制できるといわれています。

撮影:黒石 あみ(小学館)

 

【参照】

・文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
・厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
・「全国お魚事典」山田吉彦著 海竜社
・「旬を味わう魚の事典」 坂本一男監修 ナツメ社
・「からだにおいしい魚の便利帳」藤原昌高著 高橋書店
・「旬の野菜と魚の栄養事典」吉田企世子/棚橋伸子 監修 X-Knowledge
・「食材図典Ⅲ」小学館
・「コラーゲン」eヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-011.html
・「プリン体」eヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-032.html
・「高尿酸血症・通風の治療ガイドライン」
https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001086/4/hyperuricemia_and_gout_digest.pdf

(最終参照日2022/11/22)

大槻 万須美
大槻 万須美

管理栄養士・フードスタイリスト。楽しく食べて健康に。大学卒業後、食品メーカー勤務を経て管理栄養士の道に進む。
食の大切さを伝えるため、コーチングを取り入れたバレエダンサーやアスリートのパーソナル栄養サポート、親子クッキングや離乳食講座などの料理教室、レシピ・コラムの提供、栄養講座、研究機関協力など幅広く活動。
現場の生の声から多くを学びながら、おとなと子どもの食育サポートに力を注いでいる。

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