どれも繊細で美しい「練りきり」
nullつい先日、創業74年の和菓子店「紀の国屋」が廃業のニュースが流れ、改めて“若者の和菓子離れ”が指摘されていましたが、寂しいですね……。和菓子の魅力を多くの人に知ってほしいと思います。
今回ご紹介する「一炉庵(いちろあん)」は、娘(料理家の祐成二葉さん)を通して知った和菓子屋さんです。ある時、買ってきてくれたのですが、そのおいしさに感動。練りきりは餡とのバランスが非常に良く、甘さが控えめなところもいい。総じて上品な味わいと見た目の和菓子がそろいます。
そしてこの繊細な細工の美しさ。和菓子の魅力はこの繊細さですよね。そして四季折々のモチーフを楽しめるところ。もちろん洋菓子にも季節を感じさせるものはありますが、日本人の繊細な感性が反映された和菓子はやはり格別だと思います。
とくにこれから梅雨の季節、夏と続き、日本は恒例のジメジメシーズンに入ります。この時期、私などバターやクリームで作られる洋菓子を食べる気が失せてしまうんですね。
でもおいしい甘いものが食べたい!というときは和菓子をいただいています。キンと冷やした緑茶と楽しむ、ジメジメシーズンの和菓子、いいものですよ。
こちらはくず桜。柏餅の季節の終盤から真夏にかけて作られる夏の和菓子です。くず桜と言うと大味なお店も多いのですが、「一炉庵」のくず桜は中の餡と生地のバランスが良く、非常に繊細。きめ細かく丁寧な仕事をしているのがよくわかります。
夏目漱石が通ったお店だけに、猫モチーフのおまんじゅうが
null明治36年(1903年)創業。文豪・夏目漱石が通い(店内には漱石による書が飾られています)、あの名作『吾輩は猫である』に出てくる猫は、こちらのお店で飼われていた猫だと言われています。
そのためでしょうか。かわいらしい猫のおまんじゅうがあるんですよ。こちら、お客様用のお茶請け菓子としてもおすすめです。包装紙をはがすとこのおまんじゅうが現れて、すごく喜ばれるんです。
食べる宝石「琥珀糖」もあります
nullそしてこちらはここ何年とブームの琥珀糖。“食べる宝石”と言われるこのお菓子のことを若い人は最近のお菓子と思っているかもしれませんが、実は江戸時代に生まれたれっきとした和菓子。
最近でこそブームでいろいろなところで売られるようになりましたが、それでもなかなか見つけられないというお声も聞いたのでご紹介。「一炉庵」では販売していますよ。
和菓子はその季節季節を感じながら食べられる、究極のおしゃれスイーツ。“和菓子離れ”などもったいない! 普段、自宅でいただく分にはお作法など気にせず、ぜひ“食べて楽しむ”ことを優先してください。
※価格は祐成さん購入時のものです
祐成陽子
祐成陽子クッキングアートセミナー校長。
食べること、作ることへの“好き”が高じて、1965年、主婦の経験を生かし、料理教室をスタート。1987年には、日本初のフードコーディネーター養成学校を設立。輩出した生徒数は4,000人超え。卒業生には、タレントで国際薬膳師でもある麻木久仁子さん、人気フードコーディネーターSHIORIさん、料理家のほりえさちこさんなどがいる。