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「ピンクハウス」の普遍的なデザインと神縫製にときめきが止まらない!【本日のお気に入り】

こんにちは!漫画家兼イラストレーターの新里碧(にっさとみどり)です。
昨年突如として、「ピンクハウス」沼に足を踏み入れました。
「ピンクハウス」それは、1980年代〜1990年代に流行した、リボンとフリルが満載のファッションブランド。
40代になり、今なぜ「ピンクハウス」に惹かれたのか。
その魅力と共にご紹介します。
(とはいえ、まだまだ「ピンクハウス」初心者ということをご容赦ください。“ピンクハウス先輩方”は温かい目で見ていただけると嬉しいです)

小学生の頃の私にとって、「ピンクハウス」は“マンガのキャラが着ている服”だった

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「ピンクハウス」それは、憧れのマンガの服。

1990年代初頭、すこしバブルのギラギラが残った時代。

当時小学生だった私が好きだったマンガ『ミラクルガールズ』の主人公の双子の一人 “みかげ”がいつも着ているリボンがたくさんついたシャツと引きずるほどに丈の長いスカート。

頭脳明晰なみかげ×フリフリのドレスのような服という組み合わせが、すごくマンガ的で、小学生の私はすっかり魅了されていました。

もちろん、作品内にブランド名が出てくるわけではないですし、小学生がブランド名を知るわけもありません。

でも、街を歩いていると、たまに“みかげの服”を着ている女性を見かけました。

それが、私と「ピンクハウス」の最初の出会い。

ただ、現実の世界で「ピンクハウス」を着た人を見ても、自分とはかけ離れ過ぎていて、着たいと思う発想すらありませんでした。

 

“年相応”の呪いからの解放

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30代と40代の心境の変化。

30代の頃は婚活真っただ中ということもあり、「30代でこの服は“イタい”と思われるかも」という“見えない世間体”に怯えていました。

それが、40代になり、コロリと逆の考え方になりました。

顔にうかぶシワも、全然へこまない下腹部も「もう受け入れて生きていくしか無い!」と半ば諦め、残りの人生は自分の楽しいことを最優先にすることにしました。

“姿の見えない誰か”のために外見や生き方を曲げて死んでいくより、自分の好きな服を着て幸せな人生を送りたい。

ぼろぼろの古着も、派手な柄の服も好きなものは好き。そんなマインドになりました。

同い年のミューズ青木美紗子との出会い

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青木美紗子さんの著書『まっすぐロリータ道』(光文社)に衝撃を受ける。

そんなことを思っているさなか、同い年の正看護師兼モデル青木美紗子さんの『まっすぐロリータ道』(光文社)を読みました。

なんとなく興味から手に取った本でしたが、“自分の軸を「世間」という他人に明け渡さない”という言葉に、ハッとさせられました。

自分の人生を他人の物差しで測ることの愚かさ……!

日本ロリータ協会の会長であり、外務省“カワイイ大使”として、日本の“カワイイ文化”を海外に広める活動もしている青木美紗子さん。

自分の“好き”を貫く姿勢がとにかくカッコよく、すっかりファンになりました。

『まっすぐロリータ道』は、ロリータファッション好きに限らず、ルッキズムや自己肯定感の低さ、同調圧力に悩む全人類にお薦めしたい本です。

そんな青木美紗子さんのインスタを眺めていた時、目に留まったのが「ピンクハウス」の服でした。

青木美紗子さん本人の可憐さはもちろんですが、「『ピンクハウス』の服ってこんなにかわいかったのか!」と感じさせる、圧倒的な存在感がありました。

それまで“マンガのキャラの服”だった「ピンクハウス」が、同い年の共感できる人が着ている服に変わり、強い引力に引き寄せられるかのように興味を持ちはじめました。

そして…、「ピンクハウス」沼へ

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「ピンクハウス」の服に詰まったスゴい仕事たち。

まず、私の目を引いたのがシルエット。

全体的にボリュームが大きく、ふんわりとしているのに、少しローウエストでリラックスしたシルエット。

一見ドレスっぽいのに、プリンセスの衣装にはならない絶妙なバランスなんです。

ドレスアップのギリギリまで攻めた普段着。

そして、次に驚愕したのがディティールの細かさ。近くで見るとわかる、圧倒的な仕事量!

ユニクロのシンプルな服に慣れていると、ほんとうに目がビックリします。

シャツにたくさん並ぶタックとレース、スカートの裾に施されたピコフリルと編み込むような装飾、スカートのパッチーワークと縫い付けられたワッペン。

要素が多くて、どこを見ていいのか……。

“ピコフリル”という糸でできたループや、ミリ単位でびっしり並んだ細かなタック、通常の服よりも狭いピッチで並んだボタン。

プリントによっては、京都の職人さんによる手染め。

機能性だけではない、美しさを追求した装飾的な要素の圧倒的なパワーを感じました。

無くても生きていけるけど、あると人生が豊かになる、まさにアートやお菓子と同じような存在、それが「ピンクハウス」!

それに気がついたら最後、取り憑かれたように「ピンクハウス」の服や歴史、現行品から古着まで、起きている時間はほぼ「ピンクハウス」について検索する日々が始まったのです……。

ふんわりカワイイ“今の「ピンクハウス」”、芯のあるカッコよさ“金子功時代”

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今のピンクハウスと金子功さん時代の「ピンクハウス」の印象。

好きなものを調べる、知ることに最高の喜びを感じる私のオタク気質と「ピンクハウス」の相性がめちゃくちゃ良く、「ピンクハウス」沼へどんどんはまっていきました。

そんな中、ざっくりと“今の「ピンクハウス」”と“金子功さん時代の「ピンクハウス」”のそれぞれの魅力に気がつきました。

そもそも、「ピンクハウス」は1973年にデザイナーの金子功さんが立ち上げたブランド。

金子功さんは、文化服装学院で「KENZO」の高田賢三さん、コシノジュンコさんらと同期で「花の9期生」と呼ばれていたそう。

金子功さんは1994年に「ピンクハウス」を去り、現在は株式会社メルローズの傘下で数名のデザイナーによりブランドが続けられているとのこと。

最近の「ピンクハウス」の服は特に、“ピコフリル”という糸でできたループがフチについていることが多く、服のエッジが立っていないので、ふんわり柔らかな印象があります。

また、カラーもパステル系など明るい色味が多く、柄のモチーフもかわいい動物系からスイーツ、花やフルーツなど様々。

本能に訴えかけてくるような「かわいらしさ」があります。

新作が発売になると担当したデザイナーさんたちがインスタライブをするのですが、私はそこでデザイナーさんのデザインの開発秘話や思いを聞くのが好きで、どんどん欲しくなってしまう魔力を感じています。

対して、金子功さん時代の「ピンクハウス」は、とにかく「かっこいい」。

たくさんのリボン、クマや花の柄がプリントされた生地の重なり……。

かわいいモチーフが集まっているはずなのに、和服を思わせるようなシックな色味で構成され、堂々たる姿は、芯のある「かっこよさ」を感じさせます。

かわいいものが、ある一定の限界(量)を越えた先にあるかっこよさ。

ボリュームのあるソバージュヘアのモデルさんが、ボリュームのあるワンピースにさらに重ね着をして足元は意外とごつい革靴を合わせ、肩幅に開いた足で堂々と立つ。

当時のビジュアルは今見てもすごくかっこいい。

何が言いたいかというと、どっちも違って、どっちも素敵なんです!

私は今の「ピンクハウス」も以前の「ピンクハウス」もどっちも推しで、姉妹ブランドも含めて全ピンクハウスの箱推しです。

そしてさらに、すごいのが、昔の服も今の服も同じように組み合わせて着ることができるところ。

古着で購入した90年代初頭のワンピースに、昨年買ったブラウスを組み合わせる、といったコーディネートも違和感なくしっくりくる。

ここまで普遍的な個性を貫いているブランドはあまり無いのではないでしょうか。

いざ、「ピンクハウス」へ!

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昨年末、覚悟を決め、表参道にあるフラッグシップショップ『Timeless Pink House』へ行きました。

大事なことを書き忘れていましたが……、「ピンクハウス」の服は、とにかく高い!!

少し前に終わった大きな仕事の売上を握りしめ、おそるおそる階段をのぼり、店内へ足を踏み入れました。

表参道のフラッグシップショップ「Timeless PinkHouse」。遠くから見てもわかる、縫製の良さ!そしてディティールの洪水!優しい店員さんにたくさん試着させてもらいました。

遠くから一目見ただけで、そこに並んでいる服が手のこんだ美しい服だということがわかり、いっきに気分が高揚しました。

ひとつひとつのディティールを手に取ってまるで美術品のように眺め、RGB3色の掛け合わせでしか色を作れないスマホの画面では再現できないオリジナルプリントの華やかさにうっとり……。

優しい店員さんに、気になる服をたくさん試着させていただき、1時間ほどかけてブラウス2枚を購入しました。

普段のジーパンにも合わせやすそうな生成り色の無地のブラウスと、インスタライブでデザイナーの佐藤さんが「旅先のフランスで見た白鳥をモチーフにした」と語っていた白鳥柄のブラウスです。

最近は、オンラインやサッと試着してサッと買うことが多かったので、たくさんの服にじっくり向き合うとても貴重な時間でした。

1年仕事を頑張った自分へのご褒美として、宝物のようなお買い物体験をしました。

ビンテージの「ピンクハウス」、ウエスト細すぎ問題

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細すぎるウエストに絶望。そしてウエスト出しのやり方。

「ピンクハウス」の歴代のデザインを調べれば調べるほど欲しくなる、金子功さん時代のかっこいい「ピンクハウス」。

フリマサイトやオークションサイトを眺めていると、スカートが比較的安価(5,000円前後から見つかる)で買えることがわかり、手始めにスカートから購入してみました。

すると…、なんということでしょう、ウエストが信じられないほど細くて全く入りませんでした。

よく見てみると、ビンテージ系の「ピンクハウス」のボトムスはほぼ全てウエスト60センチ!

身長165センチ、ボトムスはM~Lサイズ、ジーパンは27インチを履いている私には、とうてい入らず呆然としました。

憧れの「ピンクハウス」の、ふんわりした夢のようなスカートが目の前にあるのに履けない……。

私の体型ではあと20キロくらい痩せないと履けない……。

(ライザップ行って10キロ減ったのに、あと2ライザップ必要……)

泣き寝入りしようとしたのですが、色々調べた結果、ポケットの内布を切ってウエスト出しをする方法を知り、挑戦することにしました。

ちなみに「ピンクハウス」のスカート、ワンピースはほぼ全部が両ポケットありです。素晴らしい。

ウエスト出しの作業は初めてでしたが、普段から裁縫は好きなので抵抗なく順調に進められるはずが、恐ろしく頑丈に作られている「ピンクハウス」。ウエストの縫い目がなかなかほどけなくて苦労しました。

さすが「ピンクハウス」の神縫製。

30年前の古着が型くずれもせずに、たくさん古着市場に出回っているわけです。

そんなこんなで、その後数着購入したスカートも全てウエスト出しをしました。

後に、お店で聞いたところ、当時も店頭でウエスト出しのお直しを受けていたそうで、古着市場にもたまに「店舗にてウエスト出し済み」のスカートがあることがわかりました。

ちなみに、現行の「ピンクハウス」はウエストがゴムかサイズ展開があり、幅広いウエストサイズの人が着られるようになっています。

「ピンクハウス」何から挑戦する?

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「『ピンクハウス』気になるけど、何から始めたら良いかわからない」「普段の服に合わせにくそう」

私も最初そう思っていました。

私が実際に買って着てみて、「これはおすすめ出来る!」と思った服をご紹介します。

“ザ・「ピンクハウス」”っぽくない、カラーのものを集めてみました。

中古で購入した「ピンクハウス」の姉妹ブランド「インゲボルグ」のデニムのブラウス。手持ちのLeeのフレアスカートと合わせたらセットアップっぽくなりました。右は昨年表参道で購入した生成り色のブラウス。「ピンクハウス」にも「ピンクハウス」以外にも合わせやすい万能ブラウスです。
中古で購入したブラウス2点。白いセーラー襟のブラウスはフリルやタックなどのディティールがすごい。首の開きも広く、丈も長いので重ね着にも。白と濃いグレーのピンストライプのフード付きブラウスは、フリルのかわいさとフードのカジュアルさがなんともマッチしている。素材と縫製の良さで、かわいいけれど、きちんとして見えるのもすごい。
中古で購入した水玉のスカートとワッペンがたくさんついた黒いスカート。どちらもほぼモノトーンなので合わせやすい。ドット柄はすごくシンプルながらも、着るとふんわり広がるシルエットが出るのは、細かく均等に入ったギャザーの技!黒いスカートはワッペンがたくさんついてカジュアルな雰囲気ながらも、デニムのような生地感で独特の意志を感じるスカート。
中古で購入したクローバーとスミレ柄のスカート。金子功さんが去った後の「ピンクハウス」のもの。金子功さん時代から継承したものと独自に進化していったディティールが組み合わさったような面白さを感じます。右は今年買ったエプロンがドッキングしたワンピース。たまにこういったドッキング系のワンピースが登場するようなのですが、1枚で「ピンクハウス」らしい重ね着を楽しめるのでおすすめです。

現行の「ピンクハウス」は、普段着で店舗に行って、フリルの少なめなブラウスやドレープ少なめのスカートなど、まずはいつもの服にも合わせやすそうなアイテムから挑戦するのがおすすめ。

実際に着ると意外と似合うもの、意外と似合わないものがあるので、とにかく試着してじっくり選んでほしいです。

また、毎シーズン、フリフリ系ではない、Tシャツやデニム系のカジュアル路線のものもありますので、気になった方はぜひオンラインサイトをチェックしてみてください。

古着で購入する際おすすめなのが、デニム素材のブラウスやモノトーンのアイテム。

形やサイズ感が多少「なんか昔っぽい?」と感じても、素材がベーシックなものだと、合わせやすいです。

実際私もデニムのリボン付きブラウスを持っているのですが、「ピンクハウス」以外の服にも合わせやすくてお気に入りです。

またスカートもウエスト細すぎ問題が解決すれば、すごくおすすめです。

贅沢に生地を使ったドレープのスカートは履いた瞬間にときめくこと間違いなし!

昔の「ピンクハウス」のスカートは、フリルがついていないものやモノトーンのドット柄、シックな色合いの柄物も多いので、シンプルなTシャツにも合わせやすいです。

また、「ピンクハウス」の姉妹ブランド「インゲボルグ」のビンテージはリボンがやや小さめだったり、モノトーンだったり、ポリエステルだったり、大人っぽい雰囲気のものがみつかります。

古着はフリマサイトでも掘り出し物がありますが、転売で高額になっているものも多いので、オークションサイトやリサイクルショップ系の古着チェーン、「ピンクハウス」やロリータ専門の古着業者が狙い目です。

ロリータ系古着専門店の「クローゼットチャイルド」は池袋店が広く、試着は出来ないのですが実物を見て買えるのでおすすめ。「タイムマシンで昔の『ピンクハウス』に行きたい!」という気持ちが少し満たされます。

さて、めくるめく「ピンクハウス」の世界、いかがでしたか?

まだまだ「ピンクハウス」初心者の筆者ですが、「ピンクハウス」が沼る理由が少しでも伝わっていればと思います。

ファストファッションでは味わえない、細かなディティールや縫製、職人の技術の結晶とも言える「ピンクハウス」の服をぜひ一度体験してみてください。

新里 碧
新里 碧
取材漫画家/イラストレーター/アーティスト
芸大を卒業後、広告業界を経て独立。2018年、自身の体験を元に描いた『アプリ婚 お見合いアプリで出会って1年で婚約→結婚しました』(小学館)発売。旅と工作が大好きな新米キャンパーです。
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