オリンピックで変わること、変わらないこと
null初めまして。中村ゲール潤子です。フランス在住20年を超えたオリンピックイヤーの2024年夏、我が家も南仏エクサンプロヴァンスから夫の転勤でパリに引っ越すことになりました。
パリジャンたちはオリンピックに興味がない人が多いようで、私の友人たちも皆期間中は海外旅行や南仏旅行に出かけていますが、私は今回のオリンピックでは、パリに来られるスポンサーの方々をご案内するという業務を行うことになりました。
その活動や日々の生活を通して見た、オリンピックを迎えるパリの街の様子を数回に渡ってお伝えしていければと思います。
フランスのエアコン事情
null私が長く住んでいた南仏(エクサンプロヴァンス)は1年のうち300日が晴れといわれるほどで、7月には40℃近くなる日もあり、乾燥して暑い夏が続きます。
南仏に慣れた私にとってここ数日のパリは湿気も多く、肌寒く感じます。今年のパリは特に雨が多く涼しいようですが、かと思えば37℃まで上がる日も! 気温の変動は大きいですね。
よく知られているように、パリはもちろん、気温の高い南仏であっても基本的に家にクーラーはありません。湿気がないので外にいても木陰に入れば涼しいです。フランスの家は石造りで断熱性が高く、日中は外のシャッターまたは扉を閉め切り、家の中を真っ暗にして光を入れず過ごします。朝と夕方の涼しい時間に窓を開け、涼しい空気を入れます。
今年も世界的な猛暑。南仏もどこも40℃近い気温とのことです。さすがに近年は家庭にクーラーをつけることも増えました。でも外気が熱くなったりうるさいというイメージもありあまり好まれません。ちなみにフランスで人気のクーラーのメーカーはDAIKINと三菱電機の製品なんですよ。
開会式の日のパリ
nullさてオリンピック開会式の7月26日。朝からパリは雨、気温は19℃。セーヌ川が雨で増水したら選手団の船が橋の下を通れないとのことでどうなるのか心配されていました。開会式の時間帯が一番雨がひどくなる予報でしたが、参加者は安全対策のために折り畳み傘のみ持ち込みOKとのことでした。
公園などには大型スクリーン、街角のカフェでは大型テレビを設置して開会式を待っていました。オペラ座近辺も珍しく歩行者天国になっていました。いつもならこの時間はまだ開いているはずのお店も閉まっていて、閑散としています。
私たちもテレビ画面が設置してあったレアールのカフェに入って開会式を見ました。カフェにはフランス、ブラジル、イタリア、中国、スロバキア、アフリカ諸国など様々な国から応援に来ている人で賑わっています。皆でどこから来たの?と会話をしながら交流していました。
衣装にも注目!開会式の圧巻のパフォーマンス
null開会式は、芸術監督、舞台演出家のトーマ・ジョリーによるもので、フランス国旗トリコロールに象徴されている自由、平等、博愛など12のテーマで構成されていました。私の印象に残ったものをご紹介します。
開会式はレディー・ガガの「Bienvenue à Paris(パリへようこそ)」という言葉で始まりました。DIORの衣装をまとって「Mon Truc en Plumes(私の羽根飾りのトリック)」の歌を披露。夫によると故ジジ・ジャンメール(元バレエダンサー、歌手、俳優)の曲で、フランス人なら皆知っている歌のようです。
アヤ・ナカムラもDIORの金色の衣装でアカデミーフランセーズとルーブル美術館の間に登場。彼女は今の若者に絶大な人気があり、私たちがいたカフェでも若者から歓声が上がっていました。
日本でも「ナカムラ」って誰?と話題になったようですが、彼女はアフリカのマリ出身で本名はアヤ・ダニオコー(Aya Danioko)。
アメリカのテレビドラマシリーズ「HEROES」の登場人物ヒロ・ナカムラのファンだったので、ナカムラという名前を芸名につけたとテレビで話していました。
彼女の歌の歌詞はフランス語ではないとか、彼女がフランス人代表として開会式に出るのはおかしいなど、賛否両論がありました。英知の象徴であるフランスの国立学術団体アカデミーフランセーズで彼女が歌ったことも、何か意図がある演出だったのかもしれません。
私の姓も中村ですが、フランスのお店などで名前を伝えるとき、以前はN・A・K・A・M・U・R・Aといちいちスペルアウトしていたのですが、今はAya Nakamuraのナカムラよ、彼女が私の名前を取ってつけたのよ。というとすぐにわかってもらえ、フランス人販売員からCoolと言われます(笑)。
最後にパリのシンボル・エッフェル塔で闘病中のセリーヌ・ディオンがエディットピアフの「愛の讃歌」を力強く歌われたのには大感動で、フランス人司会者も皆が涙していました。
私の友人も彼女と同じ病気「スティッフパーソン症候群」で数年前に亡くなりました。また現在も闘っている友人もいます。彼女の姿を通して勇気をもらった人も少なくないと思います。
強い雨が降っていたため残念ながら最後に花火はあがりませんでしたが、雨がパリの街を濡らし、さらにその美しさを増していたように思います。そして雨の中でパフォーマンスを繰り広げる人たちを通して人間が困難を乗り越え、打ち勝つ姿を見せてくれているようでした。たくさんのメッセージや人のドラマが詰まった開会式でした。
開会式でもう一つ感じたことですが、美意識の高さ、デザイン、見せ方の素晴らしさもですが、外国人にメインの場を多く与えていたのはさすがだと思いました。レディー・ガガ(アメリカ)、ラファエル・ナダル(スペイン)、セリーナ・ウィリアムズ(アメリカ)、セリーヌ・ディオン(カナダ)。移民を長年受け入れている国フランスの歴史の重みを感じました。
翌日のニュースで内務大臣が今年の7月8月は皆バカンスを取らず頑張っているとメディアで言っていましたが、オリンピック中、警備にあたっている人たちやボランティアにも感謝です。
次回は、これから旅行をする方にも気になるであろうフランスの物価についてのお話をいたします!
【取材協力】
中村ゲール潤子
大学卒業後、三越パリ店、三越本社日本橋旅行事業部などを経て40歳の時に退職。その後、南仏プロヴァンス大学大学院で経営学を学ぶ。エクサンプロヴァンスで結婚し、日本語教師として高校生や大学生と15年間関わる。現在、フランス人の夫とパリ在住。趣味は旅行、料理、茶道。フランス調理師免許取得。