今回は、アイロンと衣類スチーマーの違いと、選び方をご紹介します。
衣類スチーマーが登場して、あっという間に人気になったことで、「スチーマーのようにも使えるアイロン」も増えました。その結果、アイロンとしてもスチーマーとしても利用できる2Wayの商品も登場しています。
アイロンと衣類スチーマーを、機能や使い方の違いから説明していきましょう。
プレス面の有無や大きさ
nullアイロンと衣類スチーマーの最大の違いは、プレス面です。
そもそもアイロンは、衣類を高温と圧力でプレスしてシワをとることが目的です。一方、衣類スチーマーは衣類をプレスすることなく、蒸気の力で布のシワを伸ばすことが目的です。アイロンには大きなプレス面がありますが、スチーマーの場合はプレス面がないものや、あっても小さいものが多いです。
例えばワイシャツは、特にえりやカフスはパリッとプレスされている方がかっこいい仕上がりになるので、形状記憶加工のないワイシャツではアイロンのプレス面は重要です。
ですが最近のワイシャツは、形状記憶加工のあるものが主流です。またワイシャツだけでなくさまざまな衣類に「シワになりにくい素材」が導入され、しかもお手頃価格で買えるようになっています。衣類の素材が進化し、価格も安くなったことは、衣類スチーマーが人気になった大きな要因です。
ですのでプレス面の有無は、どういった素材のシワを伸ばしたいのかで決まってきます。天然素材でできたシワになりやすい素材であればプレス面はあったほうがいいですし、合成繊維が入ったシワになりにくい素材の服がほとんどであればプレス面はなくてもいいでしょう。
とはいえアイロンや衣類スチーマーは、一度買うと壊れない限りはあまり買い替えないもの。メーカーのいう平均寿命は5~7年とされていますが、あまり使用頻度が高くないご家庭では20年以上同じものを使い続けているという話も聞きます。
また服の素材は流行にも左右されますので、将来どんな素材の服を着ているかは正直分からないところです。このほかに服が変化する要因としては、「転職で仕事が変わり、着る服が変わった」「幼稚園でどろんこになっていた子どもが進学し、制服を着るようになった」などがあるでしょう。判断がつかなければ、プレス面がありつつスチーマーとしても利用できる2Wayタイプがいいでしょう。
プレス面を備えたアイロンや2Wayタイプの場合は、プレス面の素材や形も見ておきましょう。アイロンはプレス面の滑りが良いと使いやすいもの。耐久性と滑りの両方が優れている素材はセラミックですが価格が高い傾向があります。コストバランスが良いのはチタン系、安価なのがフッ素コートです。長く使えるかどうかの判断にはアイロンがけの頻度も重要ですので、日常的にアイロンがけをしているような場合は、お財布に余裕があればセラミック系がおすすめです。
アイロンのプレス面の形状は、オーソドックスな三角形のもののほかに、上下両方が尖っている木の葉型のものがあります。木の葉型はアイロンを前後に動かしても引っかかりにくく使いやすいですが、三角形のものよりプレス面が小さいので、お好みで選ぶといいでしょう。
2Wayタイプのプレス面は、小さいながら効率的にプレスできるように工夫されており、さまざまな形があります。これらを選ぶ場合は、ぜひ店頭で台の上においた布の上を滑らせて、使いやすいかを実物で試してみてください。またスチーマーに一応プレス面もついているようなタイプは、円形や楕円形のものが多く、圧力をかけてしっかりプレスするという用途では作られていませんので、注意してください。
スチーム量とスチーム持続時間
nullアイロンと衣類スチーマーで、プレス面の次に大きな違いはスチームの量です。
スチーマーは、服のシワを伸ばせるだけの大量のスチームが発生する点が大きな特徴です。一方、元々のアイロンのスチームは布を少々湿らせることが目的で、その後にプレスもすることで、合せ技でシワを伸ばします。
現在はスチーマーの人気によって、アイロンもスチーム量が大きいものが増えています。スチーマーとして利用するのであれば、一概にはいえませんが目安としては1分間のスチーム量が15g以上のものを選ぶといいでしょう。
衣類スチーマーのスチームは、基本的にはショットタイプです。トリガーやボタンなどのスイッチを押すと、スチームが霧吹きのように1回発射されます。ですが服1着分のスチームとなると、何度もボタンを押さなければならず、手が痛くなってしまいます。ですので、スチーム噴射ボタンを押しっぱなしにできる機能の有無は、実は非常に重要です。家庭で使うような大型のスチーマーは多くがこの機能を搭載していますが、宿泊時などに携帯するタイプのスチーマーにはないものもあるので、1回でたくさんの服にスチームを当てる方は注意しましょう。
また同じように、スチームの持続時間も注意して見ておきたいところです。この持続時間は、水を温める機構で変わってくるのですが、持続時間以降は、次に水が温まるまで待たなくてはならず、作業が中断してしまいます。家庭で複数の服にスチームを当てるような場合はできるだけ持続時間の長いものを選びましょう。中断する時間の長さは、一番最初に電源を入れてからスチームが噴射可能になるまでの、立ち上がり時間で見ることができます。スチーマーの場合は、多くの製品が1分以内となっています。
スチーム持続時間というと、水タンクの容量に目がいきがちです。もちろん水タンクは大きい方が作業の中断が少なくなりますが、同時に本体も重くなってしまいます。アイロンと違ってスチーマーの場合は、「スチームを当てている時間=スチーマーを持っている時間」で、しかも片手で持ち続けなければなりません。ちなみに1分間に15gのスチームが出るモデルの場合、10分間に150mlの水を消費します。家庭用スチーマーの場合、容量は最大で400ml程度です。どのくらいの重さなら耐えられるかは人によって違うと思いますが、一度に複数の服にスチームを当てるような場合は、重すぎないものをおすすめします。
温度調節機能
nullアイロンもスチーマーも、温度は衣類の製品表示に書かれた温度を超えないことが重要です。
繊維の種類ごとに、最適とされる基本的な温度は、綿・麻などは200度C前後の「高温」、絹・毛・ナイロン・ポリエステルなどは150度C前後の「中温」、アクリル・ポリウレタンなどは100度C前後の「低温」が目安です。複数の素材の混紡は、基本的には使われている素材のうち最も低い温度のものに合わせます。
多くのアイロンには温度調節機能がついていますので、製品表示どおりに合わせて使いましょう。一方、衣類スチーマーで蒸気の温度を調節できるものは、あまり多くありません。特にスチーマーを、低温が良いとされる合成繊維にかけることが多い場合には、温度調節機能はあったほうがいいでしょう。アイロン・スチーマーの2Wayタイプの場合は、プレス面温度の調節機能はあっても、蒸気の温度調節はできないモデルもありますので、間違えないようにしましょう。
使い方の違い
nullアイロンは、アイロン台などのしっかりとした台の上で使います。アイロンは衣類に熱と圧力をかけてプレスすることが目的だからです。一方、衣類スチーマーは服をハンガーに吊り下げて使います。衣類スチーマーで最も有名なメーカーのティファールが、衣類スチーマーの使い方を動画で紹介しているので見てください。
スチーマーの使い方
このとき服に強いシワがある場合は、シワを伸ばすように服を引っ張りながらスチームを当てていきます。そのため、服を吊り下げるのは、ある程度頑丈な場所がいいでしょう。
服を吊り下げられる場所はある程度決まってしまっていますし、スチーマーは大きく動かす必要があることから、電源コードはアイロンよりも長い方が使いやすいです。製品を見ても、アイロンよりも衣類スチーマーの方がコードが長いものが多いので、選ぶ際にはあまり気にしなくてよいでしょう。ただし、壁のコンセントから服を吊り下げられる場所が遠い場合などは、先に距離を測ってから製品を選ぶようにしましょう。
2Wayタイプも実は2種類
nullアイロンとスチーマーを兼ねた2Wayタイプは、特徴がアイロンに寄ったタイプと、スチーマーに寄ったタイプがあります。基本的にはパッと見の形がアイロンに似ているか、スチーマーに似ているかで判断していいと思います。
アイロンに似たものは比較的プレス面が大きめでプレスに適しており、スチーマーに似たものはプレス面がかなり小さいものが多いです。長時間持ったままスチームを当てる場合には、スチーマータイプの方が持ちやすいです。アイロンタイプはプレス面の温度調節ができるものが多く、スチーマータイプは電源コードが長いものが多いです。ここまでにご紹介してきた、それぞれの特徴と同じ傾向があります。
2Wayタイプを選ぶ場合は、2Wayといってもいろいろあるので、自分の使い方がアイロン的なのか、スチーマー的なのかも考えて選ぶといいでしょう。
家電ジャーナリスト、フリーランス編集者。2020年まで“白物家電”専門サイト「家電 Watch」編集長を務め、独立。以降、さまざまな編集やコンサルティング等で活躍中。https://iwasaki.works/