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「炊飯器」は価格と美味しさが比例する!?【家電のプロ】に選び方を聞きました

こんにちは、家電ジャーナリストの岩崎です。2020年まで“白物家電”専門サイト『家電 Watch』編集長を務めており、さまざまな家電製品に触れる機会がありました。この連載「家電のプロに聞く!失敗しない家電選び」では、家電を選ぶ時にチェックしておきたいポイントを詳しくお伝えしていきたいと思っています。

そろそろ新米が出回る季節ですね。今回は、炊飯器の選び方をご紹介したいと思います。炊飯器は炊き上がったご飯に好みがあるために、選びにくい家電の1つですね。

そこで今回は、炊飯の仕組みと加熱方式、内釜の関係をご紹介します。仕組みを知ることで、選び方の幅が広がるのではないでしょうか。

炊飯の仕組みと値段のワケ

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炊飯器は容量や発売年にもよりますが、高価なものは10万円程度、安価なものであれば1万円以内です。値段の違いを見ていく前に、まずは炊飯の工程を考えてみましょう。

そもそもお米は乾燥した穀物ですので、まずは十分に浸水させる必要があります。そして徐々に加熱し、沸騰前後は強火で一気に加熱します。このとき内釜には水もまだ多くあり対流が起こります。加熱が進むと、内釜の中の水分がなくなり対流が起こらなくなります。ですがそのときのお米は、外側にだけ火が通って芯はまだ生煮えの状態。米の周りには水分もまだ多く残った状態ですので、米の芯まで加熱し、余分な水分を飛ばすために火を弱めて加熱を続けます。そして最後に火を切って蒸らすことで、米の中の水分を安定させて完成です。

つまり炊飯は「はじめチョロチョロ、なかパッパ、赤子泣いてもフタとるな」という歌にもある通り、工程に応じて火加減を調節する必要があります。ですので、ご飯の美味しさを左右する炊飯器の性能のなかで、ユーザーが選べるものは、主に加熱方式と、内釜の厚さや素材ということになります。

高価なモデルは、内釜の素材や厚さ、加熱方式について研究を重ね、より美味しいご飯が炊けるように作られています。またその研究結果を最大限に発揮できるよう、お米の銘柄炊き分けなどもできるようになっています。

加熱方式と内釜の厚さ・素材が美味しさを左右する

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先ほどお話したとおり、ご飯の美味しさを決める要素のうちユーザーが選べるものは、主に加熱方式と、内釜の厚さや素材です。

まずは加熱方式ですが、電気炊飯器の場合は、価格が安い順にマイコン、IH、圧力IHがあります。マイコンは、底にある電熱線で鍋の底だけを加熱します。IHは、電磁力を使って内釜そのものを発熱させるため、側面も加熱できます。圧力IHは、内部を密閉して圧力をかけた上でIHによる加熱を行います。鍋底と側面からの加熱に加えて圧力をかけるので、しっかりと米の内側まで加熱できる点がメリットです。炊飯の途中で大きく火入れするときは、できるだけ高火力の方が、ふっくらした炊き上がりになるからです。

内釜の厚さや素材について考えるときは、「長時間コトコトと煮物を作るときに選ぶお鍋」をイメージすると分かりやすいと思います。特に炊飯の後半で、米に火を入れつつ水分を飛ばす工程では、素材の蓄熱性も大切ですし、さらに遠赤外線効果があるとなお良いとされています。

大手メーカーの電気炊飯器の内釜は、厚さが1.5~10mmとだいぶ幅があり、およそ価格に応じて厚くなる傾向です。内釜の厚さは、基本的には厚い方が良いとされています。しかし厚さがあると重くなりがち。毎日のお手入れを考えると、厚くても重すぎないものを選びたいものです。内釜の厚さはWebサイトなどに表記されていることもありますが、重さが分かる資料等はあまりないので、厚さのあるモデルを購入したい場合は、ぜひ店頭で手に取って確かめてみてください。

素材は、もっとも安いモデルで採用されているのはアルミです。軽く扱いやすいのがメリットですが、蓄熱性はあまりありません。中~高価なモデルでは、銅や鉄といった金属、土鍋、炭、セラミックのほか、複数の素材を重ねて加工した多層構造のものなど、各メーカーが工夫したさまざまな素材の内釜があります。さらに内釜の内外をコートしたり塗装を施すことで、耐久性をアップさせたり、蓄熱性や遠赤外線の発生を高めたりもしています。また加熱方式がIHの場合は、電磁力による発熱効率が良い素材かどうかも考える必要があります。

ですが素材について、どれが良いと言い切ることはできません。炊飯は、内釜の素材のほか、内釜の厚さ、加熱方式以外にも、内釜の形状や採用されている温度調節プロセスなどが合わさって完成するものだからです。とはいえ内釜にこだわるのであれば、素材はアルミ以外のもの、厚さもできるだけ厚い方が良いと言えるでしょう。

圧力IHは厚みがあるぶん、ふんわりお米を炊き上げます。

炊飯は、欲しいメニューがあるかどうかで決める

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炊飯機能は、大きく分けると「好みの食感やお米の銘柄に合わせて炊く機能」「炊き込みご飯やおかゆといったメニュー機能」「無洗米や雑穀米といった素材に合わせて炊く機能」「ケーキや煮物など、炊飯以外のメニュー機能」の4種類があります。

食感や銘柄に合わせて炊く機能は、従来の少量炊きや早炊きといった機能に加え、最近はさまざまな機能を持つモデルがあります。ご飯の食感や硬さを選んで炊飯できるモデル、米の銘柄を選ぶとそれに合わせて最適な炊飯してくれるモデル、糖質カット機能のあるモデル、スチームによる炊飯ができるモデルなどです。特にご飯の硬さが好み通りでないと気になるという人には、食感や硬さを選べるものや、それを記憶できるモデルが特におすすめです。

炊き込みご飯やおかゆといったメニュー機能では、炊き込みご飯やおこわ、おかゆといった従来のメニューに加えて、炊飯後に冷凍するのに適した冷凍ご飯モード、お弁当に適したお弁当モードを搭載するモデルがあります。

無洗米や雑穀米といった材料を炊き分ける機能は、普通米のほか、無洗米、玄米、雑穀米、麦ご飯などを炊けるものがあります。雑穀炊飯の機能は、毎日同じものを食べているのであれば水加減なども慣れてきますが、日によってさまざまな雑穀を使い分けているような場合には、あると便利だと思います。

炊飯以外のメニュー機能では、パン、ケーキ、煮物・煮込み、蒸し物、温泉卵・ゆで卵などを作ることができます。炊飯器でこれらを作るときは、材料を投入するだけで調理してくれるので手軽にできて便利ですね。とはいえ、炊飯器を占領されてご飯が炊けずに困ったり、煮物などでニオイが残り、次の炊飯に影響が出ることも。自分が使うかどうかをよく考えて選びましょう。

これらの機能は、機能がたくさんあるほど価格は高くなる傾向があります。ですので、自分が使いたい機能があるものを選ぶと良いでしょう。

炊飯器ケーキは簡単にできるので、子どものおやつにもぴったり。

容量、お手入れ、保温といった基本機能も忘れずに

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容量とサイズは、調理家電の選び方の基本のポイントです。食べる量を作れるか、キッチンに収まるかは、とても大切ですね。

炊飯器の容量は、家庭用のものだと3合、5.5合、1升(10合)のサイズが一般的です。ここは食べる量に合わせて決めればよいでしょう。ただし数年以内に、お子さんの進学などでお弁当作りが始まる予定がある場合は、その分量を考慮した方がいいかもしれません。ちなみに炊飯器の耐久年数は一般的に3~6年といわれていますので、その点も考慮するといいでしょう。

お手入れのしやすさという点で見ると、毎日の洗浄箇所として内釜、内ぶた、蒸気孔があります。清潔性が気になる方は、これらが外しやすいか、洗いやすい形状かも見ておくといいでしょう。なかには内ぶたが外れないモデルがあり、こちらは拭き掃除するしかありませんので、注意が必要です。

またお手入れモードを搭載しているモデルがあります。こちらは、炊飯以外のメニューを作ったあとのニオイを取るのに効果的です。そのほか、炊飯時に出る蒸気を減らしたり、蒸気自体が出ないモデルもありますので、設置場所次第で選んでもいいでしょう。

保温時間はモデルによって異なりますが、大手メーカーのものは12~40時間の保温が可能です。とはいえ保温時間が長くなるほど、ご飯の美味しさは損なわれてしまいますので、自分の生活スタイルにあった時間の保温ができるモデルを選ぶと良いでしょう。

秋は炊き込みご飯を作りたくなりますよね。

今回は、炊飯器の選び方について、炊飯の仕組みをご説明しながら紹介しました。製品の価格の幅が広いので、まずはある程度の価格帯と容量から考えて選んでみるといいと思います。

岩崎綾
岩崎綾

家電ジャーナリスト、フリーランス編集者。2020年まで“白物家電”専門サイト「家電 Watch」編集長を務め、独立。以降、さまざまな編集やコンサルティング等で活躍中。https://iwasaki.works/

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