子育て世代の「暮らしのくふう」を支えるWEBメディア

【お米のプロに聞きました】「いつもと違うお米が美味しくない!」ツヤがない&味が弱い…、状況別・おすすめの食べ方

今年の新米が出回るまであと数カ月。備蓄米をはじめ、いつもと違う米を食べるなどして、なんとか乗り切っている人も多いのではないでしょうか? 

予想以上の騒ぎとなった令和の米騒動ですが、この局面を乗り切るべく、五ツ星お米マイスターの西島豊造さんが、古米を美味しく食べる方法を伝授。普段と違うお米を買って、「ツヤがない、味が弱い」と悩んでいる人も必見です!

古米臭がする、好みの味じゃない、硬い…どうしたらいい?

null

最適な温度と湿度で保管されている政府備蓄米ですが、いつもの炊き方で食べてみるとなんだか味やニオイが気になる……と感じる人も。その場合、どうするとよいか、古くなった米を美味しく炊くための方法を前回の記事では詳しく紹介しました。

備蓄米の保管期間は約5年。つまり一番古い備蓄米は「令和2年」のもの。新しい令和6年の備蓄米から順に放出されたため、これからは令和2〜3年など、古い備蓄米に出合う確率が上がっています。

「同じ倉庫で保管されているので、そこまで差はないと思っていたのですが、やはり令和3年以前の米はちょっと違う。明らかに乾燥していて、やや硬くなっているため、購入後の保管状態が悪いと、古米臭と呼ばれるイヤなニオイを感じることがあるかもしれません」(以下「」内、西島さん)

しかしながら、20年以上、五ツ星お米マイスターとして多種多様な米を見極めてきた西島さんは、古い米でも工夫次第で美味しく食べることは可能だと話します。

そこで、「もし、ツンとするような古米臭を感じたらぜひ試して欲しい!」という、究極の3つの方法を伝授します。

“再精米”で一皮むけば、美味しさがグンとアップ!

null

通常の米と比べて、「備蓄米は劣化スピードが早い」と、西島さん。そこで、古くなった米に有効な「再精米」という方法があるとのこと。

「備蓄米や古米を手ですくってゴシゴシこすると白い粉が付く場合、それは品質が低下しているサイン。その場合は、米の表面の酸化した部分、劣化した部分、乾いてしまった部分を削り落とすことで、古くなった米を復活させることができるんです。このひと手間で、ツヤが蘇り、古米臭も軽減され、粘りや甘さが復活する可能性がありますよ」

ビニール手袋をして、ザルに米をゴシゴシ擦りつける。手をグーにすると研磨しやすい。

まず、金網のザルに備蓄米を入れ、水をかけずに米を金網にゴシゴシこすりつけます。2分程度こすりつけると、ザルの下に白い粉や砕けた米が落ちてきます。まさに、この白い粉がニオイや黄ばみの原因です。

「通常の古米なら1分程度こすればやわらかく炊き上がるのですが、令和3年以前の米の場合は、やや強めに力を入れて2分程度ゴシゴシと米の表面を研磨してください。

強めにこすると手が痛くなるので、厚手のビニール手袋をして行うとよいですよ。軍手などの布手袋は米が布の間に挟まってしまうので、ビニール製がおすすめです」

これは昔からの知恵で、精米してしまった米が古くなった際に、再度精米する方法だそう。まずはこの方法から試してみましょう。

黄金比は「7:3」!新米と古米をブレンドしてみよう

null

上記の再精米でも味が復活しない場合、次に試して欲しいのが「ブレンド米」とのこと。いつもと違う米を買って、「好みの米じゃなかった」、「なんだか物足りない」と感じている際にもこの方法は有効だそう。

この際に覚えておいて欲しいのは「7:3」という比率。たとえば、普段食べ慣れている米があるけれど、節約のために手頃な備蓄米も買ってみたと想定して、ブレンドの仕方を紹介します。

【備蓄米7:家庭の米3】

備蓄米を食べてみたらそこまで違和感を感じないけれど、もう少しツヤとやわらかさが欲しい時は、家庭の米を3割ブレンド。

【備蓄米5:家庭の米5】

炊きたての美味しさを目指すというよりも、備蓄米をお弁当に使いたい時は同量でブレンドを。

【備蓄米3:家庭の米7】

備蓄米の味が好みではなかった。もっと好みの味にしたい時は、家庭の米を7割ブレンド。

「備蓄米1:家庭の米9、または備蓄米9:家庭の米1だと、もはやブレンドしない時と差があまり出ず、ほとんど変化が分かりません。なので、比率は7:3がおすすめ。ブレンドする比率を変えたり、2種類でなくもっと複数の米を混ぜたりすることで、味や食感は変わります。この機会に自分好みのブレンドを見つけてみるのもおすすめです」

ニオイや味が気になる場合は「料理」で変化を!

null

もしも、再精米、ブレンド米でもダメだった場合、残された最後の方法は「美味しい食べ方で逃げるしかない!」と西島さん。

「特に厄介なのは米の中に染み込んでしまった古米臭。ニオイが強くてブレンドしても効かない場合は、料理で味を変えるしかありません。料理によっては、硬めの備蓄米や古米の方が相性がよく、美味しく仕上がるものもありますよ!」

再精米やブレンド米をはじめ、西島さんが推奨する美味しい炊き方を試してもうまくいかなかった場合、まずは炊き上がったごはんの状態をチェックしてください。そして以下に当てはまるごはんの状態に合う料理を選んでみましょう。

(1)古米臭がする、味がない、硬く感じる、ボソボソしている、ツヤがない

一番厄介な古米臭がする場合がこちらです。このイヤなニオイがすると食欲も減退……。とにかく、ニオイを消すためにごはんを1粒ずつコーティングする必要があります。

→オムライス、ドライカレー(ピラフのようにご飯に味付け)、スープカレー、リゾット、ドリアなど。

備蓄米のオムライスはベチャッとしにくいという利点も。
カレー味で米一粒一粒をコーティング。

(2)味が弱い、ツヤがない、少し硬く感じる

こちらは、幸いなことに古米臭はそこまでしないけれど、米自体の味が弱く、少し硬くてパラパラ感がある場合です。甘味や粘りはないですが、逆にチャーハンやカレーなど、パラパラしたごはんが合う料理にはもってこい。水分を足して雑炊などにしてもGood。

→チャーハン、カレー、どんぶり、ビビンパ、おじや、雑炊、お粥など。

もともと硬めなので、チャーハンがパラパラに。
カレーや丼物は濃い味付けなのでぴったり。

(3)粘りや甘味が弱い、味が弱い

ごはん単品で味わう白米としては実力不足だけど、でもそこまで悪くもないという場合は、調味料や具材を上手に使ってカバーを。

→お茶漬け、ちらし寿司、卵かけごはん、混ぜごはんなど。

夏は冷たいお茶でサラッと食べても美味しい。
濃厚な卵かけごはんにしてフォローを。

【NG】おすすめしない食べ方

備蓄米や古米は、特に冷めると粘りがなくなり、ボソボソ感が強くなる傾向に。そのため、以下のようなごはんそのものを味わう料理には不向きです。

→おにぎり、炊き込みごはんなど。

冷めるとより一層、ボソボソ感が出てしまう。
米の旨味を味わう、ごはんが主役の料理は不向き。

「実際にいろいろと試してみたところ、いつもの米でオムライスを作るとベチャベチャになりがちですが、古米だとパラパラしているので、思った以上に上品に仕上がりました。カレーもスパイスの香りなどで古米臭を消せるので、圧倒的に美味しくなりますよ」

炊き上がりの状態で適した料理を探るとはナイスアイディア! これは普段から使えそうなテクニックですね。

 

備蓄米や古米は最後まで美味しく食べ切るための工夫が必要とのこと。味や風味が気になる人は、ぜひこの3つの方法を試してみてください。

 

【取材協力】

西島豊造

五ツ星お米マイスター。東京・目黒区にある米店『スズノブ』の3代目。北里大学獣医畜産学部畜産土木工学科を卒業後、北海道で水路などの農業土木の設計に携わり、1988年に家業の米店『株式会社 鈴延商店』を継ぐ。五ツ星お米マイスターの資格を取得し、膨大な米と土に関する知識を活かし、新しい米の時代を作るべく産地と消費者をつなぐパイプ役として、産地の特徴を活かした地域ブランド米作りに力を注ぎ、全国を奔走する。

岸綾香
岸綾香

ライター&エディター。『女性セブン』(小学館)で約 20年、料理、家事、美容、旅、タレント取材など、実用記事を中心に幅広いジャンルで取材&執筆を行う。『kufura』では2017年のローンチより、料理やヨガなどを中心に動画記事を350本以上作成。好きなものは絵本、美術館、音楽フェス、自転車。週刊誌で鍛えられた体力&根性で 40代から子育て奮闘中。

pin はてなブックマーク facebook Twitter LINE
大特集・連載
大特集・連載