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暑さにも要注意!備蓄米など「古米」を美味しく食べる炊き方&保存法【問い合わせ殺到!お米のプロに聞きました】

「備蓄米の放出」という、過去に類をみない事態にまで発展している“令和の米騒動”。ついに令和2年の米まで登場し始めましたが、みなさん備蓄米や古米をどのように食べていますか? 

やはり古くなった米は、新米と違ってそれなりのケアが必要。でも、その方法さえしっかり守れば、古米でも美味しさがワンランクアップ! そこで、備蓄米をはじめとする「古米」の美味しい食べ方をお米のプロに聞きました。

【保存】備蓄米&古米は「冷蔵庫の野菜室で保存」が必須!

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『kufura』の記事でもおなじみの五ツ星お米マイスターの西島豊造さんは、令和の米騒動の救世主。備蓄米の放出が始まると、一般の方から「どうしたら美味しく食べられるの?」という質問が相次ぎ、「古くなった米の食べ方を提案しないとどうにもならない!」と、備蓄米や古米に関する情報を発信しています。

まずは、古くなった米の保存法から。今年は6月から、すでに30℃を超える猛暑日が続いていますが、このような暑さの中、家庭でどのように古米を保管すればよいのでしょうか?

「まずは備蓄米ですが、これは主に令和2〜6年の過去5年間に採れた米。それを約500億円もの予算をかけて、日本全国に約300カ所ある倉庫で、緊急時に備えて玄米の状態で国が保管しています。この倉庫は15℃以下の低温、湿度は60〜70% という、米にとっては最高の状態。いわばここで米は冬眠しているんです。

米は精米して空気に触れた瞬間から劣化が始まります。店頭に並ぶ備蓄米は、冬眠から起こされて、急速に劣化がスタートした状態。ただでさえ古い米なので、鮮度が落ちるスピードも早い。そのため、常温に置いておくとイヤな古米臭がしたり、カビが生えたりする恐れがあります。そのため、家庭でも冷蔵保存が100%必須です」(以下「」内、西島さん)

この際に最適な場所は、冷蔵庫の「野菜室」とのこと。通常の冷蔵室は冷えすぎる恐れがあり、さらに開閉回数も多いので、温度が安定しにくい。そのため、古米の保存には野菜室がベストだそう。

野菜室に保存する際は、買ってきた袋ごと入れるのではなく、2合、3合など、家庭で使いやすい“1回で研ぐ量”に小分けして、密閉できるチャック付きの保存袋などに入れ、空気を抜いて保管を。

チャック付きの保存袋に入れて野菜室へ。
1合、2合、両方保存しておき、使い分けると便利!

野菜室の一番底に敷き詰めておく。

「野菜室の底に敷き詰めるように並べると、米が冷えて庫内を保冷する効果もあり、上に野菜を置けば米がクッション代わりになりますよ」

西島さんはこのような方法で実際に保存しており、いまや日本の夏は暑すぎるので、備蓄米や古米に限らず、冷蔵保存をおすすめしているそう。

ちなみに、精米した米の保存期間の目安は、常温だと夏場は2週間程度ですが、冷蔵だと約1カ月半は持つとのことです。

 

【研ぎ方】「令和3年以前」の米は、研ぐ回数を40〜60回に

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そして、研ぐ際も「令和3年以前」の米は、特に注意が必要だと西島さんは続けます。

「私が試食した結果、令和4〜6年の備蓄米は、いつも通りの研ぎ方でOKだったのですが、令和3年以前の備蓄米は、研ぐ回数を増やした方が美味しく炊けることが分かりました」

ちなみに、西島さん推奨の「令和3年以前の米の研ぎ方」は、以下の通り。

【令和3年以前の米の炊き方】

(1)正確に計量する

(2)2回すすぐ

1回目は冷たい水(最初の水を米が吸水するため、ミネラルウォーターや浄水された冷たい水がおすすめ)を米全体が浸かるまで素早く注ぐ。表面の汚れを浮かすようにして数回軽くかき混ぜ、すぐに水を捨てる(この間10秒程度)。

2回目は水道水でOK。素早く水を入れ、汚れを浮かすように数回かき混ぜて、水を捨てる(この間10秒程度)

(3)40回研ぐ

ほぼ水を切った状態の米の中に、ソフトボールを握るような形に指を広げて差し込み、そのままシャカシャカと一定のリズムとスピードで40回かき回す。米同士の摩擦で表面を研磨するイメージで。

(4)2回すすぐ

水道水を入れて数回かき混ぜ、研ぎ汁を薄めてから水を捨てる。これを2回繰り返す。

(5)20回研ぐ

1回目と同様に20回研ぐ。

(6)2回すすぐ

同様に2回すすぐ。水がほぼ透明になればOK。

通常は「2回すすぐ→20回かき回す→2回すすぐ→10回かき回す→2回すすぐ」ですが、令和3年度以前の米は「2回すすぐ→40回かき回す→2回すすぐ→20回かき回す→2回すすぐ」という流れになります。

それでもニオイが出る場合は、1回目の研ぐ回数を40回→60回に増やしてみましょう。

「研ぐ回数はこれが限界で、これ以上研ぐ回数を増やすと、米粒が割れたり、傷がついたりして、炊き上がった米がベタついたり、団子のような塊になったりしてしまいます。そもそも備蓄米は乾燥して割れやすいので、ザル研ぎやザル上げはしないようにしてください」

さらに、すぐに炊くのではなく、「1時間以上浸水させる」のもポイント。米が乾燥しているので、たっぷり吸水させてから炊くことで、ツヤがアップして軟らかくなります。夏場は雑菌が増える可能性もあるので、浸水時間は最大で9時間以内に留めてください。

「炊き上がりにツヤがない、硬いと感じる場合は、炊く時の水分を増やしてみましょう。各家庭の炊飯器の性能にもよるので、炊飯器をパカッと開けた時にツヤがあると感じるまで、水は増やしてOKですよ」

【炊飯後】「炊飯器で保温」はNG!ニオイや黄ばみが出る場合も

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炊飯器で保温すると、ニオイや黄ばみの原因に。

炊き上がり後は、どんなに上手に炊けたとしても、「炊飯器の保温機能は使わない方がいい」と西島さんは話します。

「今回の備蓄米は産地や品種、ブレンド比率が分からないため、保温時間をどれくらいにしてよいのか判断がつきません。炊飯器で保温を続けると、古米特有のニオイがして、ごはんが黄ばむ可能性があります」

数時間で食べ切るなら、炊飯器のスイッチを切って、そのまま保存してもよいですが、すぐに食べないのであれば、ごはん専用の保存容器にふっくらと入れ、冷凍庫で保存するのがおすすめだそう。

「日本のお米は世界一うまいので、どんなお米を買っても本来はまずくないんです。昔の人たちは、古米を美味しく食べる知恵を持っていましたが、新米の味に慣れてしまった私たちは、令和3年以前の米をいつも通り炊いたのでは、違和感を感じる可能性があります。

だけど、少し工夫すれば、古米を美味しく食べることは可能です。新米が出るまで、あと数カ月。こんな時だからこそ、米と向き合い、とにかく上手に使い切ってほしいですね」

当たり前にその年収穫した米が買えた頃が懐かしいですが、振り返っても仕方がありません。今ある米に感謝して、美味しく食べることが大切ですね!

 

約3000年前、稲作が始まった弥生時代から米と共に歩んできた国だからこそ、手に入る米をムダなく、美味しく、工夫して食べ切るのが、今の時代を生きる私たちの使命かもしれません。ぜひ、備蓄米や古米のある方は、西島さんのテクを試してみてください。

 

【取材協力】

西島豊造

五ツ星お米マイスター。東京・目黒区にある米店『スズノブ』の3代目。北里大学獣医畜産学部畜産土木工学科を卒業後、北海道で水路などの農業土木の設計に携わり、1988年に家業の米店『株式会社 鈴延商店』を継ぐ。五ツ星お米マイスターの資格を取得し、膨大な米と土に関する知識を活かし、新しい米の時代を作るべく産地と消費者をつなぐパイプ役として、産地の特徴を活かした地域ブランド米作りに力を注ぎ、全国を奔走する。

岸綾香
岸綾香

ライター&エディター。『女性セブン』(小学館)で約 20年、料理、家事、美容、旅、タレント取材など、実用記事を中心に幅広いジャンルで取材&執筆を行う。『kufura』では2017年のローンチより、料理やヨガなどを中心に動画記事を350本以上作成。好きなものは絵本、美術館、音楽フェス、自転車。週刊誌で鍛えられた体力&根性で 40代から子育て奮闘中。

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