今回は、大手しょうゆメーカー『キッコーマン株式会社』が開催する料理講習会「KCC食文化と料理の講習会」にて、東京の老舗すき焼き専門店『伊勢重』七代目の宮本尚樹さんが教えてくれた、おうちすき焼きをワンランクアップさせるプロ直伝のコツを2回に渡ってお伝えしていきます。
(後半)「定番食材の下処理&選び方…お餅や大根おろしを使ったアレンジ」も合わせてお読みくださいね!
プロのコツ1:割り下は黄金比をしっかり守って作る
null「割り下」とは、すき焼きを作る際に必要な合わせ調味料のこと。家庭でプロの味を楽しむためには、次の黄金比を参考にすれば間違いありません。
しょうゆ:みりん:砂糖:水=3:1:1:6
すき焼きをより美味しくいただくためには、この黄金比をしっかりと守って割り下を作る必要があります。なお、割り下を3〜4人前作る際は、黄金比に合わせてそれぞれ以下の分量を用意しましょう。
<材料>3~4人前
・しょうゆ・・・180cc
・みりん・・・60cc
・砂糖・・・60g
・水・・・360cc
作り方は簡単。上記のすべての材料を鍋に入れて軽く煮たたせ、アクを取れば完成です。みりんのアルコール分が飛ぶくらい、軽く煮立たせてください。出来上がった割り下は、すぐに使わず冷蔵庫で一晩寝かせると、カドが取れてまろやかになり、より本格的なお店の味わいに仕上がります。
プロのコツ2:お肉はモモとロースを半分ずつ用意する
nullスーパーやお肉屋さんですき焼き用のお肉を選ぶときは、牛モモ肉と牛ロース肉を半々くらいの割合で選ぶのがおすすめです。牛モモ肉は比較的安価、また牛ロース肉はスジが少なく柔らかいのが特徴なので、この2種類を用意することで、価格・味ともにバランスの取れたすき焼きを楽しむことができます。
なお、お肉の端に脂身がついている場合は、スジのところから切り落としておくと、食べる際に舌触りが良くなって、味わいがワンランクアップします。お肉を盛り付ける際は、お皿一面が隠れるように、お肉を放射状に重ねて盛り付けるようにしましょう。これだけで見た目が華やかになり、一気にお店で出てくるお肉のような雰囲気になりますよ。
プロのコツ3:すき焼きの作り方を押さえておく
nullおうちすき焼きをお店の味に近づけるためには、作り方にもいろいろなコツが必要です。どのようなポイントに気をつけながら作ればいいのか、美味しくいただくためのすき焼きの作り方を見ていくことにしましょう。
(1)まずはすき焼き鍋を熱し、牛脂を溶かして鍋全体になじませる。
(2)鍋の底が隠れるくらいの少量の割り下を入れて、ひと煮立ちさせる。
(3)1人1枚だけお肉を入れて、軽く泳がせるように火を通す。これにより、割り下にお肉の旨味がしっかりと溶け込んで、割り下の美味しさがよりアップ。最初の1枚は卵をつけずにそのままの味わいを楽しみましょう。
(4)ネギ、焼き豆腐、春菊、しらたきを入れ、割り下を足す。この際、ネギの上に春菊をのせるようにすると、春菊に火が通りすぎるのを防ぐことができ、ネギも蒸し焼きのようになって、より甘く柔らかくなります。
すき焼きを作る際、「しらたきとお肉を隣り合わせにするのはNG」と言う人もいるようですが、隣り合わせでもお肉の固さにはまったく影響がないので、気にしなくてOKです。なお、しらたきはそのままだとえぐみが出てしまうので、「アク抜き不要」と記載されているものであっても、必ずアク抜きしてから使うようにしてください。アク抜きは、沸騰したお湯に5分程度しらたきを泳がせるだけでOKです。
(5)ネギ、焼き豆腐、春菊、しらたきに火が通ったら、お肉を加えていきます。すき焼きは煮込むのではなく、火が通るまでサッと煮るのがポイント。火を通しすぎるとお肉が固くなってしまうので注意しましょう。
(6)すき焼きは一度にすべての材料を煮込むのではなく、先ほどの(4)(5)を何回かに分けて食べごろを楽しむようにすることで、味わいがワンランクアップします。なお、割り下が煮詰まったときは、お水ではなく昆布ダシを足すようにすると、味が薄まることがないので、すき焼きの美味しさを最後まで楽しむことができますよ。
いかがでしたか? ご紹介したすき焼きをより美味しく食べるためのコツを参考に、ぜひお店のようなプロの味わいをご自宅でも楽しんでみてくださいね。次回は、しらたきや長ネギなど定番食材のワンランクアップ術や、味に飽きてきたときのアレンジレシピをご紹介します。どうぞ、お楽しみに!
フリーライター。2011年よりイギリス在住。