冬になると作りたくなる干し野菜
null朝夕と凍てつく寒さの冬でも、日差しが差し込むと家の中にいるより外の方が暖かかったりして、その貴重な数時間の陽射しを無駄にできないと、晴れた日にはここぞとばかりに輪切りにした林檎やサイコロ状に切った大根、細切りにした人参、ついでに塩漬けした魚などを庭に広げて天日干ししています。
林檎は干せば干すほど甘みが凝縮されて、生で食べるのとは違った美味しさがあります。干し林檎は持ち歩くのにも便利で、「お腹空いたー、お腹空いたー」と連呼する子どもにさっと出して喜ばれるので、非常食代わりにカバンに忍ばせています。
また三浦大根はこのあたりの名産で、近所の友達にもらったり、直売所で驚く安さで売られているのでついつい買ってしまって、家に2〜3本あるなんてことも。野菜や魚の消費が追いつかないときには、使い道を考えるのはさておき、「とりあえず干す」ことにしています。
干し加減でいうと、夏の強い陽射しの方があっという間に水分が飛んで効率よく”干し野菜”ができるのですが、湿気が多いこのあたりだと、そのまま置いておくとすぐにカビが生えてしまったり、虫がわいてきたり……。案外保存が難しく、冬の方が色々調子がいい気がしています。干し大根は戻して切り干し大根やピリ辛のハリハリ漬けにしたり、カクテキを作ったり、使い道色々。今年はキムチ作りのために、白菜もたんまり干してみました。
ヤンニョムの材料探しの旅
nullキムチといえば、韓国料理の素ともいえる、合わせ調味料「ヤンニョム」が鍵を握ります。
去年は夫が一人でキムチ作りに挑戦していましたが、今年は私が材料の買い出しを買ってでて、材料を見ていたら、出汁をとるためのシジミや昆布などのほかにも、アミの塩辛や粉末唐辛子が必要とのこと。シジミや昆布は近場で手に入れられるとして、アミの塩辛がどこで買えるか、しばし考えを巡らせてみても、近所で買える場所が思い浮かばず、せっかくなら横浜中華街まで行ってみよう、と娘と電車で食材探しの旅に出ることにしました。
食材探しの旅といっても電車に乗って1時間もかからない距離なのですが、最近はめっきり車生活になってしまい、電車に乗るのは年に数えるほどなので、娘も「大冒険だ!」とご機嫌で電車に揺られて行きました。中華街は何もかもが異国情緒に溢れ、しばらく行けてなかった海外への旅欲が少し満たされました。エッグタルトを食べたり、肉まんを頬張ったりと、ちゃっかりお腹も満たしました。
もちろんアミ探しも忘れず、いくつか食材店を回ったのですが、なぜか肝心のアミの塩辛がさっぱり見当たらず、店のおばちゃんには、「この中華街中探しても見つからないよ」と言われる始末。時期が悪かったのか、韓国食材を中華街に買いにきたのがそもそもの間違いだったのか、と落ち込みそうになりつつも、それでもわずかな望みを託して入った次の店で数百グラムのアミが冷凍庫の片隅に置かれているのを発見! 最後の最後にミッションを達成できてホッとしました。ついでに粗切りと粉末の唐辛子も手に入れることができて、仕込みへの準備が着々と整い始めました。
材料1〜2品のために1日を費やすなんて、全く効率という世界からはかけ離れているけど、小さい子どもと暮らしているとそういう小さなミッションが一番気持ちが燃えたりするので不思議です。
ひたすら切って混ぜるヤンニョム作り
nullプチ食材探しの旅を経て、いよいよ仕込み当日。材料が揃えばあとは簡単。ひたすら大根を切り、リンゴや生姜、ニンニクをすり下ろし、シジミや煮干で取っただし汁を白玉粉で糊状に伸ばしてキムチのりを作り、調味料と混ぜてヤンニョムを作りました。
行程自体はさほど難しくないのですが、ひたすら大量に刻んだりすり下ろしたりと地味な作業が続きます。韓国のおばちゃんたちは寒い日に肩を寄せあい、ペチャクチャおしゃべりしながら作っているんだろうな、と本場のキムチ作りに思いを馳せながら仕込みました。むせ返るような真っ赤な唐辛子の粉末を大量に投入する瞬間は圧巻でした。
出来上がったヤンニョムは1日も待たずに汁が出始め、すでにいい感じに仕上がってきました。そのヤンニョムを夫は酒のあてにそのまま小皿に盛って食べていました。一つまみしただけで額にうっすら汗をかくほどの辛さで、それがまた酒に合うんだと満足げな顔をしていましたが、私にはちょっと辛すぎて次の箸を進められないほどだったので、ハチミツを入れて混ぜ込みました。
数日後に食べてみると味がまろやかになり、とても美味しいヤンニョムに仕上がっていました。そのヤンニョムを干した白菜と混ぜ、念願のキムチが完成です。
キムチはそのまま食べても美味しいし、豚キムチにしたり、味噌と混ぜてタレとして使ったり、料理にも大活躍です。そして最後はキムチ鍋にしたいと目論んでいるのですが、その前になくなってしまいそうな予感……。美味しい白菜が出回っているうちにもう一度くらい仕込みたいと思っています。
【著者】
清土奈々子
都内から階段100段を登った高台の一軒家「野ざらし荘」に移り住み、夫と4歳の子と暮らす。編集・ライター、ギャラリー「野ざらし荘」運営、絵描きのtoiとともにユニット「村のバザール」を組みライブイベントの企画や装飾、デザインワークなど行う。ミュージックビデオなど映像制作も。
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