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追悼・鈴木登紀子さん 日本料理研究家として、96歳まで伝え続けた愛おしき「おふくろの味」

kufuraでもたくさんの料理動画に登場いただいていた、”ばぁば”こと日本料理研究家・鈴木登紀子さんが、肝細胞がんのため2020年12月28日に永眠されました。96歳でした。

亡くなる数日前まで「おいしい」と食事をとり、最期はご家族が見守るなか、東京・吉祥寺のご自宅で静かに息を引き取られたそうです。コロナ禍ということもあり、葬儀はご家族だけでひっそりと営まれました。

「素朴なお料理でよいから“食べる人を思った”食卓に」

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つねづね、「今も昔も、私の素性は鈴木清佐(2009年に逝去)の妻であり、3人の子供、5人の孫、7人のひ孫をもつ鈴木家の“主婦”よ」と語り、台所がいちばん落ち着く居場所であり「私の聖地」と言っていたばぁば。

食べることは生きること。命を作り、育み、守るのは栄養のあるものをバランスよくおいしく食べることが基本で、その「命のもと」は台所から生まれる……。

「食材を吟味し、丁寧に仕上げたお料理は空腹とともに心を満たしてくれます。そんな母の料理を食べて育った子どもは、将来お料理を厭わず、しっかりと食べる明朗闊達な子どもに育ちます」

が持論でした。だからこそ、『きょうの料理』(NHK)で日本料理研究家としてデビューしてから約半世紀、「台所はつねに清潔に」から始まり、旬の食材を丁寧に下ごしらえし、和食の基礎であるおだしをきちんと引いて、素朴なお料理でよいから「食べる人を思った」食卓にしなさい……と伝え続けてきたばぁば。

お料理教室の動画や遺作となった『誰も教えなくなった、料理きほんのき』(小学館刊)は、いわばばぁばからの「遺言」。命を守ることが大切な課題となっている今、ばぁばの心がたくさんの人に伝わることを願っています。

昨年11月、私が最後にお会いしたときには開口一番に「元気だった?疲れているようだけれどちゃんと食べなきゃだめよ」と、心配そうに顔を覗き込んでくれました。

ずっと、大切にしていきたい「おふくろの味」。kufuraでこれまで公開してきた数多くの動画の中から、旬を大事にしていたばぁばの冬の定番おかずをご紹介します。

【大根と豚バラ肉のやわらか煮】

「大根の皮が薄くなって、水分たっぷりで甘〜くなると、”冬”を実感するの」と言っていたばぁばが、冬になると必ず作っていた定番のおかず。

豚バラ肉の旨みがしみた大根は格別の味わいです。「根菜は体を温め、抵抗力を高めてくれます。良質なたんぱく質である豚バラ肉と合わせたら鬼に金棒よ」(ばぁば)

別れ際に「コロナが落ち着いたら、またおいしいもの食べに行きましょうね」とウインクしたお茶目な笑顔が忘れられません。心からご冥福をお祈りいたします。

 

 

【参考】

『誰も教えなくなった、料理きほんのき』(小学館)

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