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その洗濯槽、カビてますよ!? ハウスクリーニングのプロが教える掃除術【洗濯機編】

カビが生えやすい梅雨シーズン。湿度と気温のため、水回りはあっという間にカビが生えてしまいます。実は、目に見えないところでもっとも汚れているのが洗濯機。一見キレイにみえますが長い間放置しておくと、洗濯槽や排水ホースの中はカビや汚れがびっしりと溜まってしまうといいます。
そこで今回はハウスクリーニング専門家として活動している一方で「日本洗濯機クリーニング協会」の理事兼事務局長としても活動している春日富士さんに、洗濯機掃除の重要性とコツについて伺いました。

目に見えないのが厄介…洗濯槽は想像の10倍は汚れている

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この汚れが服についたら赤信号!

お風呂編では「梅雨の環境はカビが生える環境とほぼ相関関係にある」というお話がありましたが、カビが生えるのはお風呂だけではありません。実は春日さんが「梅雨に一番汚れる場所」と断言するのは、洗濯機。お風呂と違って見た目で汚れ具合がまったく分からない部分ではありますが、普通の人が想像する10倍以上は汚れているといいます。

「見た目では分かりませんが、洗濯機の洗濯槽は梅雨時季のジメジメした環境だと、一瞬にしてカビだらけになります。黒カビは1回ついてしまったらどんどん根を張っていくので、なかなか取れません。危険なサインとしてはまず、洗濯機の蓋を開けたときに、嫌な臭いがする。こうなると100%、洗濯槽はカビだらけです。

さらに深刻なのは、洗濯物に黒いワカメみたいなカスがついている状態。これは洗濯槽にカビが何層にもなって張り付いていて、限界となってはがれているのです。

でもどちらも相当危険なサインなので、それが出る前に対策をしてほしい。しかし深刻にならないとサインは出ないので、定期的に期間を決めて掃除をするしかないですね」(以下「」内、春日さん)

春日さんが推奨する洗濯槽を掃除する目安はなんと月に1度。かなり多いような気がしますが、それほど洗濯槽の汚れは溜まりやすいのだそうです。

洗濯槽クリーナーの選び方…日本洗濯機クリーニング協会が推奨している商品とは?

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洗濯槽の汚れを研究すべく、春日さんのオフィスには10台以上の洗濯機がならぶ。

洗濯槽を掃除する方法としては、プロのハウスクリーニングに依頼する方法もありますが、一般的なのは市販の洗濯槽クリーナーを使うこと。こちらもお風呂洗剤と同様にたくさんの種類がありますが、どんなものを選べばいいのでしょうか?

「お風呂洗剤と同様に大きく分けて、塩素系と酸素系のクリーナーがあります。塩素系はカビ汚れにはとても優れていますが、洗濯槽もすすぎ残した洗剤や柔軟剤の汚れなどもあり、こちらには効果はありません。一方で酸素系クリーナーは発泡することで汚れと物質の間に泡が入り、汚れを泡で剝がしていく力があります。総合的ないろんな汚れを物理的に剥がし取る力があるので、個人的には酸素系がオススメです。また酵素系は、見た目にも汚れが浮いてくる様子がすぐに可視化されるところもポイント。やはり『こんなに汚れが溜まっていたんだ!』という様子を見てみたいじゃないですか(笑)」

春日さんは「日本洗濯機クリーニング協会」の理事兼事務局長としても活動しており、ドラッグストアなどで売られている主要な洗濯槽クリーナーを10商品使い比べたことがあるそうです。その時に一番総合力が高かったのが、「カビトルネード」(リベルタ)という商品でした。

「『カビトルネード』の特徴はA剤と呼ばれる洗剤を入れてから水を張り、B剤を入れると一気に発泡します。その泡の力でカビなどの汚れを一気に落とす仕組みです。汚れ落ちもいいし、塩素系よりも時短ができる、何より可視化ができて気持ちがいいです」

可視化された発泡の力で剥がれた汚れ。

洗濯機で汚れるのは洗濯槽だけじゃない…意外な盲点は排水ホース

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しかし、洗濯機で汚れているのは洗濯槽だけではありません。春日さんによると、洗濯機につながっている「排水ホース」もかなりの汚れが溜まっている部分だといいます。

「洗濯機に取り付けられている排水ホースは中に溜まった水を排水する排水口と洗濯機をつなぐものです。洗濯機は脱水をすると中の水が排水口に流れていきますが、排水ホースの中の水は全部抜けるわけではないんです。

つまりホースの中には常に水が溜まっている状態で、放置すると腐敗してヘドロ状になってしまう。ひどい状態だとヘドロでホースがふさがってしまうことも珍しくありません。お客様の中には『洗濯槽を何度掃除しても臭う』という人がいますが、そういった場合は排水ホースが汚れていることが多いです」

つまり洗濯機をキレイにするには洗濯槽だけではなく、排水ホースもキレイにする必要があるのです。

近年大注目!排水ホース専用のクリーナーもある

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(左から)リベルタ「カビトルネード ダイナマイトバブル 排水ホースクリーナー」803円(税込)、「カビトルネードNeo 洗濯槽クリーナー 縦型用」803円(税込)、「カビトルネードNeo 洗濯槽クリーナー ドラム式用」803円(税込)

先ほど紹介した「カビトルネード」を販売している「リベルタ」は、洗濯機の排水用ホースを洗浄することができる専用洗剤「排水ホースクリーナー」も展開しています。

「これは日本洗濯機クリーニング協会として『リベルタ』に働き掛けて、商品化されました。排水ホースも洗濯槽と同様、定期的に洗浄する必要があるのに、これまで注目する人がいなかったんです。実際に僕たちハウスクリーニング業者がお客様に洗濯機の掃除を依頼された際、洗濯槽は汚れていないのに排水ホースにヘドロがたまっているというケースはたくさんありました」

とはいえ春日さんによると、排水ホースの洗浄は洗濯槽ほど頻繁に行わなくてもいいそうです。

「つねに排水ホースには水が溜まってるとはいえ、ホースの内部はあまり空気がありません。カビやヘドロが発生するには空気も必要になるので、洗濯槽ほどのスピードでは汚れないですね。ですから我々は半年から1年ごとに洗浄剤を使っていただければいいかな?とお客様に伝えています」

家の中で一番汚い!? 日本の家庭の洗濯機が汚れる理由

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洗濯したのに匂う……それはカビのせいかもしれません。

春日さんによると、梅雨に限らず「家の中で一番汚いのは洗濯機」だそう。特に日本の梅雨時期は、冬と比較して倍以上汚れるといいます。

「私の会社は台湾にも支社がありますが、日本以上に高温多湿の台湾でも、日本ほど洗濯機は汚れていないんです。なぜだろう?と僕もずいぶん研究したのですが、おそらくランドリールームの広さが影響していると考えています。日本は狭い脱衣場に洗濯機を押し込んでいる家庭が多く、洗濯機まわりの空気が循環しないんですね。ですから高温多湿で洗濯機がどんどん汚れてしまうんです」

とにかく洗濯機をキレイに保つ環境としては良くない条件がそろっているのが現在の日本の状態といえそうです。普段肌に身に着けている衣類は、やはり清潔な場所で洗濯したいもの。どんなにオシャレな服でも洗濯機が汚れていたらニオイも気になるし、目に見えない雑菌も気になります。

もし10年以上洗濯槽や排水ホースの洗浄をしていない人でも、今やれば遅くはありません。どんな状態でもやらないよりやったほうが絶対にいいのです。本格的な夏が訪れるこのタイミングでぜひ一度、洗濯機をキレイにしてみてはいかがでしょうか?

 

撮影/黒石あみ(小学館)


春日富士さん。

【教えてくれた人】

お掃除アドバイザー・ハウスクリーニング専門家 春日富士(かすがふじ)さん

清掃代行 NAGAREBOSHI 本部事業統括・一般社団法人 日本洗濯機クリーニング協会理事。20年以上にわたりハウスクリーニングの現場に携わり、さまざまな清掃分野に知見を持つ。エアコンクリーニングや水回り清掃を中心に作業従事するかたわら、2015年に国内初となる「洗濯機分解クリーニング」を公式サービスとして提供開始。以降約10年の間、国内洗濯機クリーニング取扱高全国1位。2020年から全日本消毒業協会理事としても活動している。

高山恵
高山恵

東京都出身、千葉県在住。短大の春休みより某編集部のライター見習いになり、気が付いたら2022年にフリーライター歴25年を迎えていた。現在は雑誌『DIME』(小学館)、『LDK』(晋遊舎)などで取材・執筆を行うほか、『kufura』などWEB媒体にも携わる。

執筆ジャンルは、アウトドアや子育てなどさまざま。フードコーディネーターの資格も持つ。

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