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もう準備はできた?「新NISA」を賢く運用する秘訣をファイナンシャルプランナーに聞きました

NISA(少額投資非課税制度)の制度内容が2024年1月から一新されます。非課税保有期間が無期限になる、2種類の投資枠の併用が可能になるなど、旧NISAよりも自由度を高めた内容が特徴となっており、これからNISAを始めたい人にとっても絶好のタイミングといえます。

一方で、「損をしないか心配」「手続きが煩雑」「内容がしっかり理解できていない」など、始めたいけれどハードルが高いと感じている人も多いのが現状です。

ファイナンシャルプランナー・風呂内亜矢さんと、みずほ銀行 ライフプランアドバイザーインストラクター・平田葉奈子さんに、新NISAの特徴や、ライフスタイルに合ったおすすめの運用法などについて話を伺いました。

そもそもNISAってどんな制度?新NISAはどう変わる?

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新旧NISA比較(画像提供:みずほ銀行)

従来のNISAは、つみたてNISAが最長20年間、一般NISAが最長5年間、税金が非課税になっていましたが、新NISAでは非課税期間が無期限になります。

また、制度期間が恒久化され、年間投資枠も拡大したことから、今まで以上に長期的な視点に立った資産の形成、運用が可能になりました。

「新NISAにはいくつものポイントがありますが、“制度が恒久化され、自分の都合の良いタイミングで始められるようになったこと”、“非課税保有期間が無期限化されたことで、預けたお金を無期限、非課税で運用できること”、の2点が特に大きなポイントです。

NISAでは『つみたてNISA』か『一般NISA』のどちらかを選ぶ必要がありましたが、新NISAでは『つみたて投資枠』と『成長投資枠』の併用ができるようになります。

毎月コツコツ積立てて、ボーナス月の余裕があるときは多めに投資するといったように、新NISAではかなり柔軟に投資ができるようになります」(風呂内さん)

NISAを始めたいけれど始められない理由があった

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売れっ子FPの風呂内さん。

全国の20代~50代の男女720名を対象とした投資とNISAに関するインターネット調査では、新NISAを機にNISAの開始を検討している・始める予定の人が男性の18.3%に対し、女性では20.3%と、女性の方がNISAに積極的になっているということがわかりました。さらに女性の中でも20代が23.3%と他の年代よりも高くなっています。

その一方で、NISAを始めようと思ってもすぐに始められなかった人は、20代は約32%30代は約28%と、若い世代ほど機運の高まりとは裏腹に足踏みをしている様子が伺えます。

一番多かった理由が「損をしないか不安になった」、次いで「内容がしっかり理解できなかった」「手続きが煩雑でわからなかった」。20代では「周囲に相談できる人がおらず、不安になった」という項目も高くなっています。

NISAについてどれくらい理解できているかという質問に対しても、「名前を聞いたことがあるくらい知らない」が男性42.5%、女性が58.6%と半数以上になり、約6割がNISAを知らないということがわかりました。

「名前を聞いたことはあっても、その先の一歩が意外とハードルが高いという印象です。投資は預けたお金がどうなるかわからないという印象があるかもしれませんが、リスクコントロールで一番重要な、投資する金額を自身で決められるのがNISAなんです。

NISAに投資する金額のアンケートを見ると、3万円以上の積極的な投資をされている方が多い中、5,0001万円未満で投資をしている方もいます。リスクが怖くない少額で始められる、金融庁も推奨している長期積立分散である、金額のコントロールができるというポイントを押さえると始めやすいかもしれません」(風呂内さん)

みずほ銀行の平田さん。

ネット証券で口座を開設する人も増えていますが、申し込みをすると様々な書類が届き、それらに記入する必要があるため、煩雑で書き方がわからないと挫折してしまう人も少なくないそうです。

「口座開設の方法がわからない、口座開設したけれど何に投資すればいいのかわからないといった理由で、NISAを活用していない方も多く見受けられます。

みずほ銀行ではライフプランアドバイザーが全国の窓口におりますので、実は気軽に相談することができます。ふらっと窓口に来ていただいてそのままNISA制度のご相談になることも多くあります。

口座開設が面倒という方でも、銀行に来ていただければ、手続きを対面で行えますので、スムーズに口座開設ができます」(平田さん)

タイプ別新NISA活用シミュレーション

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新NISAの運用のヒントとなる、タイプ別の女性をモデルにしたシミュレーションを紹介します。

【ケース1:バリキャリ パワーカップル女子(37歳)】

画像提供:みずほ銀行

【設定】年収は700万円。夫と2人で世帯年収は1400万円。現在の貯蓄は普通預金が200万円、定期預金が700万円、株式が100万円、保険が300万円。金融や経済の情報には日頃からアンテナを高くしており、人並み以上には知識も投資経験もあるつもり。

「新NISAは年間で投資できる枠が360万円と大きくなり、つみたて投資枠と成長投資枠を併用できますので、成長投資枠をまとめて買うことも、積立で購入いただくことも可能です。

夫が生活費等を全て賄っている場合なら、月30万円をつみたて投資枠と成長投資枠を併用して運用、今のうちに先取りで貯蓄をする仕組みを作っておくことが良いかもしれません。積極運用では成長投資枠の株式投資がおすすめです」(平田さん)

【ケース2:家族が第一!仕事と家庭を両立女子(41歳)】

画像提供:みずほ銀行

【設定】年収は100万円、世帯年収は800万円。夫と小学生と幼稚園の子ども2人。貯蓄は普通預金が100万円、定期預金が200万円、夫名義の住宅ローンあり。子どもの生活リズムに合わせられる範囲内で家計の足しになるようにパート勤務をしているが、子ども1人育てるのに2000万円以上かかると聞いたこともあり、今のままで足りるのか不安。

「高額な教育費など不安に思っている方は多いと思いますが、このケースではまだ子どもが小さいので、そこまで学費がかからないうちに貯める仕組みを作ることをおすすめします。

時間をかけない仕組みであれば、つみたて投資枠で自動的に貯めるのがいいですね。自身の資金に加えて、児童手当を原資にすれば、児童手当をNISAで管理して子どものために貯めていくことができます」(平田さん)

「子育て世帯は時間がない方も多いので、時間をかけないような運用ができるとよいでしょう。児童手当は親御さんの名義に振り込まれますので、2023年のジュニアNISA終了に伴い、今までジュニアNISAで運用していた方にも親の枠が広がりますから、それを運用に回すとスムーズかと思います」(風呂内さん)

【ケース3:自己投資大好き!ミーハー女子(28歳)】

画像提供:みずほ銀行

【設定】独身、年収は500万円。現在の貯蓄は普通預金が300万円、定期預金が200万円、つみたてNISAが月3万円。昨今の物価上昇による化粧品の値上がりに伴い出費が増え、30代に向けて美容医療にも関心を持ちクリニックに通っているため、月の美容代が大幅増。美容資金確保も踏まえ、投資には以前よりも関心を持っている。

「今後に備えて、まずは月々の積立金額をもう少し増やしてみるのがいいかもしれません。

NISAでは成長投資枠とつみたて投資枠が別になるので、お金も使いたいこの方のケースでは、成長投資枠を使ってまとめて投資をして、その利益で美容の費用に充てるのもいいと思います。

NISAは、一度売却して利益が出た場合、枠の再利用が可能になりますので、少し利益が出たら、その利益でワンランクアップの美容液を買うなど、今後に備えつつも、楽しみを残しながら貯蓄をしていただくといいと思います」(平田さん)

「お金を使いたいタイプですので、使えるお金と将来のためのお金をしっかり分けておかないと際限なく使ってしまう可能性があります。思い切って使うためにも、将来のためのお金と、今使っても大丈夫なお金をきちんと切り分けされることが重要かと思います」(風呂内さん)

【ケース4:親子で推し活命!友達親子女子(38歳)】

【設定】年収は600万円。小学生の子どもがいるシングルマザー。現在の貯蓄は普通預金が500万円、定期預金が1000万円、外貨預金が50万円、積立にひと月1万円、学資保険が300万円。シングルで子ども1人を育てる中、現状は収入に不足を感じてはいないものの、これから学費など子どもにかかるお金が増えると思うと不安になる。

「普通預金、定期預金としっかりと資金を持っているので、新NISA制度のつみたて枠を活用して積立金額をもう少し増やしてみることをおすすめします。もし10万円以上積立ができる場合は成長投資枠も使ってコツコツと貯めていくのがいいかもしれません。

子どもの教育資金や、親子で推し活が趣味とあるので、そうした費用に使う資金と老後に備える資金を新NISAでは同時に貯めることができます。コツコツ貯める資金を作っていただきながら、推し活で資金が必要となった場合は引き出すこともできるので、新NISAを活用していただくのがいいと思います」(平田さん)

「収入も高いですし、備えもたくさんされていますが、長い目線で見ると、シングルということは公的年金が夫婦より少なくなります。今は学費についても何とか捻出することはできても、老後も見据えて何か対策を取られるといいのかなと思います。

NISAの良い点は長くもできるし、途中で売却して使うこともできること。自分の用途に合わせて超長期の運用もできれば、中期ぐらいの運用で、いったん利益を自分の手元に戻すこともできますので、柔軟に使われるといいのかなと思います」(風呂内さん)

投資&新NISAについての素朴な疑問を風呂内さんに聞きました!

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質問1:そもそも投資って必要なの?

30年近くデフレが続いたので、わざわざ投資をしなくても困らないと必要性を感じなかった方も多いかもしれません。

しかしこの12年で物価が急激に上昇し、預貯金のみだけだと資産の価値が下がる可能性があります。しかし、一部を投資にまわせば、アップダウンはありますが、預貯金よりも利益が多く出ることもあります。違う性格のものに持ち分けることで資産の価値を維持する。このために投資は重要なのです」(以下「」内、風呂内さん)

質問2:新NISAのデメリットは?対処法や心構えについて教えてください

「年間投資額が拡大したことによってリスクが上がるのではと言われますが、年間360万円まで投資できる人はそう多くはありません。年間投資枠の額いっぱいまで投資しなくてはいけないという思い込みはまず捨てた方がいいですね。

NISAは自分に適切な金額からスロースタートして、後から増やすことができます。いきなり大きな金額で投資してしまうのが一番の失敗だと思うので、運用する金額は無理のない範囲にしましょう。

NISAも投資ですからアップダウンはあります。目先の変動に惑わされず、多少の損は起こり得ると考えた上で、少し下がったくらいなら慌てて売らずに、上がった時だけ売っていくという捉え方をした方がいいでしょう。マイナスになっても焦らずにぐっと堪えて長期運用の観点で行えば失敗が少なくなります

リスクヘッジ(リスクを予測して対応する)をするために、自分で金額をコントロールでき少額投資のNISAは適切な資産の置き場所です。預貯金とは別に持ち分けるような感覚で、資産を預けていただくといいのかなと思います。

初心者で不安という方は、金融機関の相談窓口に行かれるのがいいかもしれません。NISAは意外と文言の難しさでつまずくケースが多いんです。そのあたりがクリアできずに始められないという悩みも、店舗で相談すれば解決できます。

NISAの内容をしっかりと理解できているかが重要なので、専門家に助言をしてもらい、投資金額が適正なのかなど、自身で判断するための材料にするスタンスがいいかと思います」

質問3:口座は新NISAが始まる前に開設した方がいい?

「できれば年内に口座を開いた方がいいと思います。証券口座は開設すること自体がすでにハードルが高いものですので、始めたいと思った時にそこにつまずいてしまい、投資を始めるのが半年後になってしまう可能性もあります。

年内に口座を開設しておけば、それを11日から新NISAの口座にできます。特にきっちりと均等に投資したいと思っている方には1月からスタートするのが始めやすく、気持ち的にもだいぶ楽になるかなと思います」

わかりやすく説明してくれる風呂内さん。

みずほ銀行の相談窓口では、当日に口座開設が可能。印鑑を登録しなくても、マイナンバーカードを持参すればその場で口座開設できます(※)。マイナンバーカードがない場合は、通知カードと免許証等の顔写真付きの証明書を持っていけば開設の手続きができます。その場で運用する枠の設定もでき、1時間ほどで手続き完了。年内は窓口が開いている1229日まで対応可能とのことです。

女性はライフイベントの変化によって働き方や収入が大きく変わってきます。NISAは自由度が高いため、ライフイベントの変化にも対応した資産運用ができます。早いうちから資産形成を始め、時間を味方につけた運用で将来に備えたいですね。

 

取材・文/阿部純子

【取材協力】みずほ銀行

 

※みずほ銀行で既に口座をお持ちの場合など、お手続きにご印鑑が必要なケースもあります。

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