初公開作品も多数! 天才絵師の大回顧展
null現在の東京都 墨田区に生まれた葛飾北斎は、19歳のときに浮世絵師・勝川春章の弟子となり、20歳で勝川春朗の名前でデビュー。以降90歳で亡くなるまで約30回の改号を繰り返し、約70年の間、画風も大胆に変えて自らをUPDATEしながら第一線を走り続けました。
ちなみに、名前を変えるのが大好きな北斎は引越しも大好き。生涯で93回も引越しを行ったことも一因なのか、売れっ子絵師であったにもかかわらず常に貧乏だったとか。
「新・北斎展 HOKUSAI UPDATED」はそんな北斎の画業について、近年発見された作品や初公開作品なども含めた約480件(会期中展示替えあり)という膨大な作品とともに振り返る展覧会。
たとえば下記の『円窓の美人図』や『向日葵図』は、アメリカのシンシナティ美術館の調査により発見されたもの。88歳のときに描いた肉筆画『向日葵図』は日本初公開です!
「あれ? 北斎ってこんな絵も描くの?」と思われた方も多いかも知れません。そうなのです。そこが、北斎の面白いところ。
北斎は錦絵(「神奈川沖浪裏」のような、多色刷り木版画の浮世絵)だけではなく、肉筆画(筆で直接画材に描いた絵)や読本の挿絵、奉納絵馬など多岐にわたるジャンルの作品を残しているのです。そして、全部上手い!
もう東京では観られない!? 膨大な「永田コレクション」
null「新・北斎展 HOKUSAI UPDATED」の展示作品のなかでも特筆すべきは、世界的な北斎研究の第一人者であり、監修も務めた永田生慈(ながたせいじ)さんの2,000件を超えるコレクション。永田さんは小学生のときから北斎に魅了され、生涯を北斎研究に費やされた方。浮世絵を専門とする『太田記念美術館』の設立にも携わりました。
残念ながら永田さんはこの展覧会を見ることなく昨年2月に逝去されましたが、彼の最新の研究成果が随所に詰まっていることも見どころのひとつです。
展覧会で展示される作品のうち、件数だと約7割、点数では約9割(連作など複数枚でひとつの作品である場合、まとまりの単位で数えるときは「件」、ひとつずつ数えるときは「点」を使います)が永田さんによるコレクション。
上記写真の、鎌倉への道のりを描いた『鎌倉勝景図巻』も永田コレクションのひとつ。こんな静かな印象の絵も描くとは、北斎は本当に芸達者です!
永田さんはこのコレクションを2017年に故郷の島根県に一括で寄贈されました。そして永田さんの遺志に基づき、「新・北斎展 HOKUSAI UPDATED」終了後、永田コレクションは島根県のみで公開されることになります。
つまり、この機会を逃すと東京では観られない作品も多くあるのです。これは観に行かないわけにはいきません!
代表的な錦絵の構造がわかるコーナーも!
null展覧会では、北斎の生涯を6つの章にわけて展開しています。各章のタイトルは、北斎の代表的な画号からとり、「春朗」期(20〜35歳頃)、「宗理(そうり)」期(36〜46歳頃)、「葛飾北斎」期(46〜50歳頃)、「戴斗(たいと)」期(51〜60歳頃)、「為一(いいつ)」期(61〜75歳頃)、「画狂老人卍(がきょうろうじんまんじ)」期(75〜90歳頃)。
下記のように、北斎の錦絵がどのようにして作られたのかがわかるコーナーも設置。ダイナミックな「神奈川沖浪裏」は、いくつもの版で刷られていたんですね。
このコーナーを観てから数々の錦絵を鑑賞すると、改めてその素晴らしさがわかります。
展覧会の最後を飾るのは、北斎の最晩年最大級の肉筆画『弘法大師修法図』。
東京都足立区の西新井大師(五智山 遍照院 總持寺)が所有する『弘法大師修法図』は、本来は毎年10月の第1土曜日のみ公開される作品。「新・北斎展 HOKUSAI UPDATED」では、会期中いつでも観られるのがうれしい!
今回ご紹介した以外にも、誰もが知っている錦絵から、ちょっと怖い絵、面白い絵など展示の内容は実にバラエティ豊か。「北斎がこんな絵も描くなんて!」と驚く方も多いことでしょう。
天才浮世絵師の多彩な画業、じっくり時間をかけて観賞されることをオススメします!
【展覧会情報】
会場:『森アーツセンターギャラリー』
東京都港区六本木6–10–1 六本木ヒルズ森タワー 52階
会期:2019年1月17日(木)〜2019年3月24日(日) ※会期中、展示替えあり
開館時間:10:00〜20:00、火曜のみ10:00〜17:00(最終入館は閉館の30分前まで)
休館日:2月19日(火)、2月20日(水)、3月5日(火)
最寄り駅:
東京メトロ日比谷線「六本木駅」よりコンコースにて直結、都営大江戸線「六本木駅」より徒歩約4分、東京メトロ南北線「麻布十番駅」より徒歩約8分