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充電事情は?費用面のメリットは?電気自動車(EV)のいまどき事情を専門家に聞いてみた!

今、車を買い替えようと思うと、必ず候補にあがってくるのが電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)などの、再生可能エネルギーを利用できる次世代エネルギーカー。世界初の量産電気自動車として日産「リーフ」が発売されたのが2010年。そこから13年が経ち、車種の選択肢も増え、EVはより身近なものになりました。
今回は、モータージャーナリストの竹岡 圭さんに、EVの「費用面」、「充電事情」、「走行性」など、購入を検討するときにまず気になる点について伺いました。

電気自動車(EV)って?

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まずは電気自動車(以下EVと呼びます)について。簡単に言うと、ガソリンとエンジンで動く従来の自動車に対して、バッテリーに充電した電気と、電気で動かすモーターで走る自動車のこと。エンジンを持たないことから、走行中に二酸化炭素や窒素酸化物を排出しない、環境に配慮した移動手段です。実はEVの歴史は古いのですが、昨今ようやくエンジン車と同じように使いやすくなってきました。

現在ではEVのほかにも、次世代の自動車には開発中のものも含め、さまざまな選択肢が広がっています。

※環境省「環境にやさしい自動車を選んで、「ゼロカーボン・ドライブ」しませんか?」より

プラグインハイブリッド車(PHEV/外部からバッテリーに充電できるハイブリッド車。電気モーターとガソリンエンジンのイイトコ取りをして効率よく走れる)、燃料電池自動車(FCV/水素と酸素を反応させて燃料電池で発電し、その電気でモーターを回転させて走る)などはすでに市販されています。

気になる購入補助・減税

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国や自治体では、環境に配慮した自動車の普及のために様々な制度を用意しています。購入の際の初期費用や維持費が減らせるのはうれしいですね! 補助金額の枠に上限があったり、年度により(自治体によっては四半期ごとに)変更されたりするので、購入の際は最新の情報を確認してください。

購入費の補助

環境省および経産省では、EVなどクリーンエネルギー自動車を購入する際、最大85万円を購入費の一部として補助する事業を実施しています(※1)。都道府県など地方自治体でも独自の補助金を設定している場合があります。

減税

エコカー減税など、自動車税が免除や減免になる制度も適用されます(※2)。

メンテナンス費用は減る!

「EVはブレーキパッドによる摩擦だけではなく、回生ブレーキという仕組みで減速しています。EVやPHEVなどでは、減速時には運動エネルギーを電気エネルギーに換えて、駆動用バッテリーに戻して再利用することができます。このように減速時にモーターを発電機として活用するのが回生ブレーキです。この回生ブレーキの減速力はかなり大きいため、ブレーキパッドはほとんど消耗しません。

また、エンジンがないということはエンジンオイルの交換が必要ありません。このように、ガソリン車で必要になるメンテナンス費用の一部がEVでは不要というのもうれしい点です」と竹岡さん(以下、「」内 竹岡さん)

※1 経済産業省 令和4年度補正予算「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/automobile/cev/r4hosei_cev.html

※2 国土交通省 自動車関係税制について
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr1_000028.html

航続距離はどんどん延びている!

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EVが、フルに充電した状態でどれくらいの距離が走れるかを「一充電走行距離(航続距離)」といいます。走行速度、エアコンの使用などの条件によっても大きく変化するのであくまで目安の数値ですが、基本的にはバッテリーの容量が増えるほど航続距離が増えることになります。

クラスや車種、電池の種類にもよりますが、現在販売されているEVではバッテリー容量20kWhで航続距離が180km、40kWhで300km、70kWhで500kmなどの航続距離を実現しています。

「バッテリーの容量が大きいということは充電時間もそれだけ長くかかる(また車体の価格も上がることが多い)ので、単純に航続距離が長ければいいということでもありません。近距離でのちょこちょこ乗りが多いか、遠出することが多いか、など使い方に合わせた車選びが重要になります」

「充電は自宅で」がおすすめです!

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さて、では具体的に「EVがある生活」ってガソリン車とはどう変わるんでしょう。まず気になるのが充電問題。「どこで充電できるの?」「充電にどれくらい時間がかかるの?」などの疑問を、竹岡さんに伺いました。

「充電には、大きく分けて、充電ステーションを利用する方法と、自宅に充電コンセントを設置してそこから充電する方法があります。自家用車として使用するなら、自宅で充電するのが基本の使い方です」

充電ステーションで充電する

カーディーラーや駐車場、ショッピングモール、道の駅や高速道路のPAやSAなどで見かけるこのマーク。出かけた先で充電することができる設備です。利用する場合は以下のような点に注意が必要です。

・急速充電器では1回あたりの使用制限時間は30分が原則(※急速充電器については後述します)
・遠出するときなど途中で充電の必要があるときは、フレキシブルに対応できるように充電場所をあらかじめチェックしておく
・食事や休憩の時間に合わせるなど充電時間を無駄にしないよう計画を立てるのがおすすめ

「お出かけ先(ゴルフ場、ショッピングモールなど)に充電ステーションがあれば、時間を有効活用することができます!」

家に設置した充電機器で充電する

住宅用充電設備の例。

車庫から充電ケーブルが届くように、電気自動車用の充電コンセントを設置する工事が必要になります。配線の状況などにもよりますが、10万円前後の費用がかかることが多いようです。

「自宅で充電できれば、就寝時間中に充電するなど、家に駐車している時間を有効に使うことができます。ガソリンスタンドに給油に行く必要がないというのは快適ですよ!」

マンションの駐車場に充電設備を設置する例も増えていますが、共用の充電設備の場合は1台で独占するわけにはいかないので、充電が終わった後は移動する必要があります。

充電時間はどれくらい?

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充電ステーションでの充電の例

充電ステーションには、普通充電と急速充電の2種類の設備があります。

普通充電用充電スタンドの多くは、出力が3kW程度。これは、1時間で充電できる電力量が3kWhであることを指します。6kW以上の出力をもつ普通充電器も普及し始めていますが、車のバッテリーがこの規格に適合しているかを確認する必要があります。

急速充電スタンドでは、出力が20~150kW程度と大きくなります。その分、素早い充電が可能になり、効率よく充電ができます。

例えば、バッテリー容量が40kWhのEVで、電池残量10%から100%まで充電するためには「40kWh×90%=36kWh」の電力量が必要です。

これを3kWの出力で充電するには「36kWh÷3kW=12時間」かかる計算に。50kWhの急速充電器では30分間の制限時間で、必要とされる分の7割程度、25kWh分充電できるということになります。また、ほとんどのEVでは、充電池の保護のため、急速充電器を使用した場合は、電池残量80%までの充電となります。

「実際は、電池使用量に応じて、つぎ足し充電しながら使用することになります。最近は出力の大きな急速充電器や、一度に複数の車を充電できる充電器も増えてきています」

自宅での充電の例

一般的な自宅充電の設備では、200Vの充電用コンセントを使用した場合の充電の出力は3kW程度のものが多く、中には8kW出力できるものもあります。

「かかる時間は上記の普通充電の例と同じですが、時間がかかっても、車を使用しない時間帯に充電できるので負担は少なくなりますね。就寝中に充電できるというのが、何より便利だと思います」

災害時の備えにも!電源として利用できる

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EVに積まれたバッテリーは大容量! 外部給電器を使用すれば、バッテリー内に充電された電気を家庭用の電化製品などに使用することができます。車種によっては車内に100Vの電源コンセントがついているものもあり、そのまま電源として使用できます。

EV用外部給電器の例。

「災害時はもちろん、キャンプのときなどにもとても役に立つ機能です。一般的なポータブルバッテリーに比べて何倍~何十倍もの容量があるので、EVがあればいざという時にとても頼りになります」

どんな使い方をするかよく考えて検討を

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日本政府は、2035年までに乗用車新車販売における電動車の比率を100%とする目標を掲げ、充電インフラの拡充などを推進しています。これからの車の購入にはEVやPHEVが必ず候補に入ってくるでしょう。

「EVの進化は目覚ましく、バッテリーの効率化による航続距離や出力の数値は伸び、充電事情も以前より大幅に良くなりました。自分がどんな車の使い方をしているか、ライフスタイルに合わせて車種を選べるようになってきています。まずは自分が1週間に何kmくらい使用するのかを計算してみて、おおよそ必要になる航続距離を把握します。

・週末中心(近所が多いか、遠出することが多いか)/毎日乗る(通勤通学の距離は?)
・自宅で充電できる環境か、そうでない場合は身近に充電設備はあるか
・メインでの利用か、セカンドカーとしての利用か
・キャンプなどのアウトドア利用は多いか
・何人で乗ることが多いか

などの条件を出し、自分のニーズに合う車種をカーディーラーなどで相談してみましょう」

ガソリン車でも、デザインの好みのほかに、燃費や車のサイズ、使用用途などを決めてから車選びを始めますが、EVも同じ。快適なカーライフを送るためには、自分や家族が車をどう使いたいかを考え合わせた車選びをしましょう。

「また、EVのモーターはエンジンと比べて加速が驚くほど早いのが特徴です。アクセルを踏んだ瞬間スッと加速する、気持ちの良い運転が楽しめます。エンジン音や振動がないので、車中がとても静かで、疲れにくいのもうれしい点です。

また、バッテリーやモーターはとても重いので、必然的に車の重心が低くなり、安定感のある乗り心地が実現されて運転しやすいんです。操作性の面でも、EVはとてもおすすめですよ!」

【参照】

・日産自動車 電気自動車(EV)総合情報サイト:https://ev2.nissan.co.jp/
・環境省 Let’s ゼロドラ:https://www.env.go.jp/air/zero_carbon_drive/
・環境省 環境にやさしい自動車を選んで、「ゼロカーボン・ドライブ」しませんか?:
https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/kaiteki/topics/20220210.html
・東京電力エナジーパートナー EV DAYS:https://evdays.tepco.co.jp/entry/2021/06/16/000011


【取材協力】

竹岡 圭

モータージャーナリスト(自動車評論家)・タレント。
「クルマは楽しくなくっちゃネ!」をモットーに、イベントでのトークショー、各種セーフティドライビングインストラクターなど、カーライフのサポーターとして幅広く活動。また、テレビ番組出演、ラジオのパーソナリティ、雑誌やWeb媒体での執筆、YouTubeチャンネル「圭Tube」の運営など多方面で活躍中。モータースポーツにも長年携わり、レースやラリーにもドライバーとして参戦している。

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