今回は、編集を担当した草柳佳昭さんにメダカ人気の背景や飼育のコツ、メダカの飼育を通じて学べることについてうかがいました。図鑑制作の裏側に興味があるかたは【知られざる「図鑑の豆知識」7選】も必見ですよ!
近年のメダカ人気の背景は?
null―この数年で、ホームセンターやペットショップでいろんなメダカの品種を目にする機会が一気に増えました。
草柳さん:メダカは、日本人にとって身近な魚で、観賞魚としても人気です。2000年代から品種改良がさかんになり、さまざまな品種が生まれ、飼育する人が増加しています。
―メダカ人気の理由は?
草柳さん:メダカの原種はもともと日本に分布しているので、あまり水温を気にする必要がなく、一年中外で飼うことができます。そのような飼育を始めやすい点も、人気の理由かもしれません。
―『kufura』編集部でもメダカの飼育率、高いです。
草柳さん:この図鑑を出版してから、いろんなところで「実は、うちもメダカを飼っています」という声を聞くようになって、メダカ飼育率の高さを実感しています。
子どものためにメダカを飼ってみたら、大人がメダカ飼育にハマってしまったと言う声もたくさん聞きました。
メダカの「飼育のコツ」や「おすすめグッズ」は?
null―子どもが室内でメダカを飼育しているのですが、なかなか繁殖がうまくいきません。
草柳さん:メダカは、基本的に屋外のほうがかんたんに飼育できます。屋外のほうが成長に必要なビタミンDが体内でつくられるので、丈夫に育ちやすいと言われていて、産卵もしやすくなります。ただし、暑さの厳しい時期には、すだれをかけて日かげを作る、コンクリートに直に置くのを避ける、ゲリラ豪雨対策をするなどの工夫が必要です。
ちなみに、メダカが産卵するのは、昼の長さが13時間以上で、水温20度以上となる時期です。
産卵期には、メスが卵を産みつける“産卵床”を用意するといいと思います。産卵した後は、親が卵を食べてしまうので、産卵床と親の容器は別にします。
―メダカ飼育のおすすめのグッズはありますか?
草柳さん:個人的には、水面に浮かべるタイプの水温計がおすすめです。一目で水温がチェックできるので便利です。
メダカって、水温によって活動量が変わるんです。「10度を下回って、動きが悪くなってエサもあまり食べないな」「20度を上回ったら、活発に動くようになったな」というように、水温とメダカの動きを結び付けて観察することもできますよ。
メダカを通じて開かれる「自然科学」の扉
null―メダカの飼育を通じて、子どもはどんなことが学べると思いますか?
草柳さん:メダカは研究の世界でも大活躍しています。生物学の研究では、よく実験などに用いられる生物がいます。メダカは「体が観察しやすい」「小さな設備でも飼いやすい」「繁殖サイクルが早い」など、研究に向いた特徴を持っているので、生物学の世界で重宝されています。
小学校の理科で必ず習うのも、そのためなのではないでしょうか。家で飼っていても、先ほどの水温ももちろんですが、どんな親からどんな子が生まれてくるとか、どんな飼い方をしたらたくさん卵を産むかなど、さまざまな発見があると思います。
―図鑑NEO『メダカ・金魚・熱帯魚』は、メダカの産卵・繁殖の解説の後に、放流の問題も解説されており、よく練られた構成だと感じました。
草柳さん:メダカの世界は、環境問題や生物多様性の問題とも地続きです。図鑑では、メダカの種類、飼育、産卵後の稚魚の育て方はもちろんですが、飼育魚を放流してしまった場合の自然環境への影響も取り上げ、読者の多角的な視点を養うような構成を心がけました。
とくにメダカのような淡水魚は、川や地域ごとに遺伝子が異なります。
繁殖して飼育しきれなくなったからといってむやみに放流すると、生態系に大きな影響を与えかねません。メダカの飼育が流行っているので、こうした問題も踏まえながら飼育を楽しんでほしいと思います。
―メダカの飼育を通じて見えてくることがたくさんありそうですね。
草柳さん:メダカを飼ってみると、図鑑のようにうまくいかないこともあるかもしれません。でも、実際に飼うことで、いろいろな発見があって、親子で楽しめると思います。
図鑑の中には、夏休みの自由研究のテーマにつながることもたくさん散りばめてあります。興味のある方は、ぜひ活用してほしいと思います。
撮影/田中麻以(小学館)
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