｢夫の暴言がひどく、一緒にいるのが苦痛。でも、離婚には踏み切れず…」【平野レミの痛快！人生相談#9】

数年前から自営業の夫（63歳）がささいなことで怒り出したり、“お前の料理はまずい””お前はのろい”などと暴言を吐くことが増えてきました。言い返すとネチネチと嫌味が続くので我慢するしかありません。とにかく、夫と同じ空間にいること自体がストレスです。子どもふたりはすでに独立していて、離婚も考えましたが、私はパート勤めで自分の貯金もあまりなく、実家は頼れず……で、なかなか踏み切れません。

イヤねえ、ご主人…。まあ、短気で怒りっぽくなる歳ごろなのかしらね。外では吐き出せないストレスをKさんにぶつけているのかもしれないわよね。

だからって、Kさんがそんな怒りん坊の夫に我慢する必要や義務は一切ないのよ。「俺が食わせてやっている」という思いがあるから、「料理がまずい」だの「のろい」だのと暴言が出るんだろうけれど、子どもが巣立った後は、夫婦ふたりで楽しく暮らすことを考えなくちゃね。

そのためには、言動にも工夫が必要ね。Kさん、あなただってパートタイムで仕事もしているんです。どっしり構えて、対応してみてはどうかしら？　「料理がまずい」と言われたら、「あらそう？私にはおいしいけど」って、ひとりでパクパク食べちゃえばいいのよ。あるいは、食卓に調味料を全部並べて「好きな味にどうぞご自分でご調味ください」って。とにかく、グチグチ言い出したら、さっとその場を離れちゃう。

そんな風にあしらいながら、この先、どう生きたいかを考えてみてはいかがかしら。人生100年の時代になってきているじゃない。子どもたちにも相談しながら、とにかく“自分”を最優先に考えてみる。限りある人生時間、ため息をつきながら生きてはもったいないわよ。

ただ、Kさんに「夫と仲よく暮らしたい」という気持ちが残っているなら、これはちょっと演技力が必要だけど、不機嫌な夫を“好き好きオーラ”で包み込む作戦も試してみてはどうかしら？

和田さんが亡くなってもう4年になるんだけど、生前、「本当に私でよかったの？」って真剣に訊いたことがあるの。

和田さんは毎朝、「じゃ、行ってくる」と仕事場へ出かけるときは、仕事と家庭をきちんと分けていたのね。私も「じゃあ、私も好きなことしなくちゃっ！」って決心して今に至るわけだけど、ごはんだけは欠かさずちゃんと作っていたわね。家族の健康を守るのは私の役目だと思ってたから。和田さんが仕事から帰ってきて、たまに私が原稿を書いていたりすると、疲れているはずなのに「何か手伝うことない？」って原稿を直してくれたり、私に元気がないと察知すると、靴も脱がずに「どこかに食べに行こうか？」って連れ出してくれたり。

ホントにいい人だった和田さんは、私と結婚して幸せだったのかしら……。そんな私の問いに「よかった、よかった」って笑っていた。

1年前までは夫婦関係がうまくいっていたなら、Kさんのご主人も悩み事があってイライラしているのかもしれないし、男性にだって更年期症状があるらしいわよ。

だから、「あらー、おかずが口に合わなかったかしら？ごめんなさい。じゃあ、今日は外食にする？」とか、帰宅したら玄関で出迎えて、「おかえりなさーい！今日のおかず、ちょっと頑張ってみたんだけど、味見てくれない？」とかね、笑顔で応えてみたらどうかしら。口撃を笑撃をもって受けて立つの。それでもダメなら、Kさんのなかで結論も出るんじゃないかと思います。

私は、来世も和田さんと一緒になる！と決めています。そして次回は、絶対に私が先に逝くの。私を遺して逝っちゃうなんて酷いことされたんだもん。どんなに私が淋しくて苦しかったかということを、和田さんにも思い知ってもらわなくちゃいけないからね（笑）。

構成・文／神史子　イラスト／やまなかゆうこ