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息子が「高校受験はしない。プロのゲーマーになる!」と爆弾発言。もう泣きたいです…【平野レミの痛快!人生相談#7】

悩み多き人生に楽観と笑顔を! 料理愛好家で人生のエキスパート・平野レミさんが、あなたの「困った」「辛い」「どうしたらいいの?」に痛快&実用的アドバイスでお答えします。みなさんのお悩みも募集中です(詳細は文末参照)。

「中3の息子が高校受験はせず、プロのゲーマーを目指すと言い出しました。せめて高校は卒業してほしいのですが決意は固く、途方に暮れています」(兵庫県在住Fさん/45歳・会社員)

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5年前に離婚し、現在は中学3年生の息子とふたり暮らしです。もともと、おとなしい性格の子で、中学ではサッカー部に入ったものの、半年ほどで“帰宅部”となり、ゲームに熱中。最近では料理にも興味をもったらしく、夕食をつくってくれるなどやさしい子です。 ところが先日、学校で進路に関する面談があり、そこで息子が担任の先生に「高校受験はしません」と爆弾宣言。先生と私はびっくり仰天、顔面蒼白。帰宅してから「せめて高校だけは出ておかないと。高校行かずに何をするつもり!?」と問い詰めると、「プロのゲーマーになる。必要ならバイトする。最終的にはゲームのクリエイターを目指す」と。 もう泣きたいです。なんとか息子を説得する手はないでしょうか?

「お母さんの気持ちも分かるけれど、“自分の夢は高校にはない”と悟った息子君、すごい才能よね!カッコいい」

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高校受験するよう説得する? とんでもない! とても聡明で親孝行な息子君ですよ。

今やゲーマーは立派な“職業”になっているし、成功すれば億万長者も夢ではないらしいわよ。“eスポーツ(esports : コンピューターゲームをスポーツ競技として捉える際の名称)”と呼ばれて、オリンピックの種目にもなった世界規模の人気業界なんですって。

つまり、Fさんの息子君はゲーム界の大谷翔平を目指すって決心したのよね。人生は、好きなことをやって生きるのが一番の幸せ。それがお金になるなら言うことなしよね。高校の卒業資格なんて、必要だと思ったら、いつでも通信制や定時制で取得できるし、最近では、eスポーツ専門の通信制高校もあるみたいよ。いま、そんなに心配する必要ないと思う。

「うちの長男は中学の期末試験前夜、和田さんの古いギターを抱いてぐっすり寝ていました」

もちろん、女手ひとつで大切に育ててきた、ひとり息子の行く末を心配するFさんの気持ちもよくわかります。

うちの息子たちは、和田さん(夫の故・和田誠さん)が「進路は自分で決めさせたほうがいい」という人だったから、勉強が好きだった次男は自ら「進学塾に行きたい」で勉強にいそしみ、高校、大学と志望校へ。その一方で長男(ミュージシャンの和田唱さん)はというと、とにかくギター弾いてばっかりの中学生だった。

明日は期末試験っていう日に、夜になっても帰ってこなくて、「和田さん、明日は期末試験なのに帰ってこないよ、どうしよう」って。そうしたら「へーき、へーき、大丈夫だよ」って。

いや、大丈夫じゃないよ……ってヤキモキしてたら、ギターのパンフレットを山ほど抱えて帰ってきて、「お母さん、どれがいいと思う? どれ買ってくれる?」だって。「何言ってんの! 明日期末試験でしょ? 早く勉強しなさい!」と叱って部屋に追いやったんだけど、しばらくして部屋を覗いてみたら、なんと!和田さんの古いギター抱いてぐっすり寝ていました。

「和田さん、和田さん、勉強してないよ、寝てるよ!」って訴えたんだけど、和田さんはひと言、「それでいいんだよ」。

結局、長男は音楽の道に進んで、自分の好きなことを貫いたの。のちに和田さんは、「あの時、ギターを捨てさせて勉強を強要していたら、彼はこんな楽しい世界を知らずにいたんだよ」と言ってた。偉大な父だったね、和田さんは。

「かつては私も、“好きなことを徹底的にやれ”と父に背中を押してもらいました」

かく言う私もじつは、高校を中退しています。高校生の時に、学校を辞めようと決心し、父(故・平野威馬雄さん。詩人・フランス文学者)のとこに行って正座して、ものすごく緊張しながら「高校を辞めたい」と打ち明けたの。すると父は老眼をパッと外し、私の顔をじっと見て、「辞めろ。徹底的に好きなことをやれ」と。

私はもう、涙が出るくらいうれしかった。父が背中を押してくれたから、私は大好きなシャンソンを勉強してシャンソン歌手になり、私が唄う姿をテレビでみた和田さんとデートすることになって結婚し、笑顔の絶えない家族ができたの。そして今度は和田さんが、私の背中をバンバン押してくれて、大好きな料理で「おいしい」って多くの人に喜んでもらえる“料理愛好家・平野レミ”にもなることができたのよね。

「お母さんの苦労もちゃんとわかってるのよ。だから、息子君の背中を押してあげて欲しいな」

今の世の中、一生懸命勉強して有名大学出ても右往左往する若者がいっぱいいて、大企業に勤めても、ため息をついている人は多いと思う。

そんななかで、中学生で「プロゲーマーになる!」と決心し、ゲームクリエイターというその先の目標もちゃんと見据えているなんて、大した子ですよ。しかも、晩ご飯つくって帰りを待っていてくれるなんて、お母さんの苦労もちゃんとわかってるのよね。思いやりのある素敵な男子に育てましたね、Fさん。

そんな子が今、勇気と希望を胸に、幸せな未来を自分の手でつかもうとしているのです。

ユーチューバーが憧れの職業になる時代なんだもの。「自分の夢は高校にはない」って悟ったのはすごい才能ですよ、すでにね。

カッコいいぞー!  だから、「とことんやってごらん!」と、Fさんにも息子君の背中を押してあげてほしいな。未来のゲーム界のレジェンドを育てているんだもの。一緒にワクワクと“今”を楽しまなきゃ、ソンですよ!

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平野レミ
平野レミ

料理愛好家・シャンソン歌手。1972年にイラストレーターの和田誠さんと結婚後、主婦として家庭料理を作り続けた経験を生かし、「料理愛好家」として活躍。数々のアイディア料理を発信中。また、「レミパン」やエプロン、調味料などの開発も手がける。エッセイ『おいしい子育て』(ポプラ社)は、第9回 料理レシピ本大賞のエッセイ賞を受賞。近著『エプロン手帖』(ポプラ社)『平野レミのオールスターレシピ』(主婦の友社)も好評発売中。https://remy.jp/

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