「誰と仕事をしたいか」が、作品選びの基準です
nullー横浜聡子監督作品の3回目の出演とのことですが、麻生さんは、どのようにお仕事を選んでいるのでしょうか?
「私は、完全に“誰とお仕事をしたいか”ですね。横浜さんの感覚もすごく好きだったので、『海辺へ行く道』は、脚本を読まない段階でお引き受けしました。具体的に説明するのが難しいんですけど、横浜さんの作品って、脚本と全然違うんです。


あくまでも脚本はガイドのような感じで、もちろんストーリーもセリフもあるんですけど、実際にできあがる作品は、白黒からカラーになるみたいに、ぶわっと広がるイメージ。
世界がパノラマになったかのような、想像していた以上のものが、そこには描かれているんです」(以下、「」内、麻生久美子さん)
ー『海辺へ行く道』が、島を舞台にした不思議な物語なのに対して、春に放映されたドラマ『魔物』は、真逆な世界観で衝撃的でした。
「『魔物』も大好きなプロデューサーさんが手がけられていて、3回目のお仕事だったんです。韓国との共同制作というところにも興味がありました。
その前が『おむすび』のヒロインの母親役だったので、全然違うキャラクターを演じるのは、役者としてはとても魅力的。だから、絶対にこのタイミングでやるべきと思った作品だったんです。お母さん役も好きですけれど、もし違う役ができるなら、そこはチャレンジしておきたいなというのはあります」
仕事でも家庭でも、常にご機嫌でいられることが大事
nullーkufura読者は、麻生さんのようにお仕事と育児を両立されているお母さんが中心です。ふたりのお子さんをもつ麻生さんは、仕事と家事、そして育児のバランスを取る中で、普段気をつけていらっしゃることや、ルールはありますか?
「……ルールか。ルールは、まず私がご機嫌でいられることが大事ですね。それが仕事にも家庭にも、とても影響するので。

夫も、私が気持ちよく仕事ができる環境になるよう気をつかってくれますし、両親も手伝ってくれます。そもそも、私は仕事をしていたほうがよくて、かといってしすぎもダメなので、そのバランスだけは気をつけています。
周りも協力をしてくれますし、私も甘えられるようになりました。子どもはひとりで育てられないですし、ひとりだけで頑張っても、何もよくないので」
ー「甘えられるようになった」のは、何かきっかけがあったのでしょうか。
「上の子がまだ小さいときに、頑張りすぎて、体調を崩しちゃったんです。そのときは、ひとりでも子育てできるだろうと思ってやっていたんですけど、気持ちはそうでも、体がやっぱりついていけなくて。
そこから、無理するといろんなところに影響が出て、よくないなって。それで、みんなに頼ることに決めました。でも素直に甘えて、お願いしてみると、すごくそれが心地よかったんです。
みんなで子どもを育てるような環境は、子どもにとってもいいから。だからこれでよかったのかもなって、ちょっと肩の荷が下りた感じがしました」
子どもたちへの愛情を、口に出して表現しています
nullー今年は特にご活躍されている印象がありますが、普段はどんなふうにリフレッシュされていますか?
「普段は、大好きなカフェラテがあれば大丈夫。ほかにはドライブも好きですし、家には犬もいるし、自分の周りにリフレッシュできることは、けっこうたくさんあるかも。あと、ここ1年半くらい仕事が詰まっていたので、この夏は子どもたちと過ごすと決めていて。いくつか旅行に行く予定です」
ー子どもと向き合うときは、何を大事にされていますか?
「私、子どもたちをすごくかわいいと思ってるので、そこは素直に表現したいと思っています。だからきちんと、それを口に出しています。
基本的に“自分で考えられる子”になってほしいし、自発的に何かをやってほしいと思うから、甘やかしすぎない、口出ししすぎないといったことは考えていますけど、ちゃんと愛情は伝えていきたいな。そこをいちばん大事にしているでしょうか」
取材・文/湯口かおり
写真/松木康平 スタイリスト/井阪恵 ヘアメイク/ナライユミ
衣装/スズキタカユキ イヤーカフ・リング/プライマル

映画『海辺へ行く道』
8月29日より全国ロードショー
アーティスト移住支援をうたう、とある海辺の街。のんきに暮らす14歳の美術部員・奏介と後輩の立花は、夏休みにもかかわらず、演劇部に頼まれた絵を描いたり、新聞部の取材を手伝ったりと毎日忙しい。
街にはあやしげなアーティストたちがウロウロする中、奏介たちに不思議な依頼が次々に飛び込んでくる……。ものづくりに夢中な子どもたちと、秘密だらけの大人たち。海辺の街を舞台に、優しさとユーモアに満ちた、ちょっとおかしな人生讃歌。
原作/三好銀『海辺へ行く道』シリーズ(ビームコミックス/KADOKAWA刊)
監督・脚本/横浜聡子
出演/原田琥之佑、麻生久美子、高良健吾、唐田えりか、剛力彩芽、菅原小春
製作/映画「海辺へ行く道」製作委員会
配給/東京テアトル、ヨアケ