小豆島(しょうどしま)はすばらしくて、こんなところで暮らせたらなと
nullー『海辺へ行く道』は、香川県の小豆島でオールロケだったとのことですが、何か印象深い思い出はありますか?
「撮影をしたのは2年前で、私は小豆島に2回行ったんです。2泊3日くらいでスケジュールも詰まっていたので、観光はできなかったですね。でもロケ地はとにかくすばらしくて、景色もいいですし、おうちのセットも素敵でした。こんなところで暮らせたらなと思いながら、お芝居していました」(以下、「」内、麻生久美子さん)
ー風景から衣装、インテリア、アートなど、すべてがきれいで、観ていて心地よかったです。ところで本作は、子どもたちが主役の物語ですが、主演の奏介役だった原田琥之佑(こうのすけ)さんと共演された感想を教えてください。

©2025 映画「海辺へ行く道」製作委員会
「なんだか、すごくしっかりされてて、どっちが大人?という感じでした(笑)。少年らしさもちろんあるし、ピュアな部分もあるんですけど、ちゃんと自分の意見もしっかり言えて。心がきれいなんだなというのも表情に出ていて、とても存在感がよかった記憶があります。
今の若い子ってみんな、しっかりしているんですよね」
普通の会話を重ねることで、ふたりの関係性が表現できたら
nullー撮影中は、どんなお話をしたのでしょうか?
「お芝居の話はしませんでしたね。でも作中に登場するたくさんのアートには、実際に原田さんが描いた作品も使われているので、その話はいっぱいしました。
かといって、私は別に絵に詳しいわけでもないですし、描くのも下手なので、『どういうときに描いてるの?』とか『この作品のためにどれぐらい描いたの?』とか、本当に普通の会話ですね。『食べ物は何が好き?』とか。

©2025 映画「海辺へ行く道」製作委員会
寿美子という女性は謎が多くて、親子ではないのに、どうして奏介と一緒に暮らしているのかといったことも、ちゃんとした答えがないまま演じていたんです。
だから、ふたりがどういう関係性に見えるかわからないけれど、気をつかわない間柄ではあるということを、そういった会話の中でつくっていった感じですね」
子どものときは、大人ってなんでもできると思ってました
nullー物語は、自由奔放に生きる子どもたちと、嘘や秘密にとらわれた怪しい大人たちが対極的に描かれていますが、麻生さんは子どものころ、大人をどんな存在だと思っていましたか?
「子どものころは“大人”って、なんでもできる人だと思っていたけれど、実際自分がその年齢になると、そんなことないなっていうのに気づきました(笑)。

やっぱりしっかりした大人になるためには、それなりの勉強もしないといけないし、それなりのものを積み重ねてこないといけないんだな、ただ大人になるだけじゃダメだったんだなって、がっかりした記憶があります」
ーそれは、どんなタイミングで?
「30代のときに、ふと考えたんですけど『でもまだ子どもか、まだ言い訳できるか』なんて、そのときは自分をなだめていたんです。けど40歳を過ぎてからは、誰がどう見ても大人だなと思って、そこからは言い訳せずに、ちゃんと大人らしいふるまいや発言を考えるようになりました。
どういうふうに人と接するかとか、自分の子どもとどう向き合うかを大事にしていますね。大人として幻滅されたくないので。大人としてどうあるべきかみたいなものを意識し出したのは、40代からです」
と、ふっと二人の子どもの母親としての一面が垣間見えた麻生さん。インタビュー後編では、仕事と家庭の両立や、ご自身のリラックス法についてお聞きしました!
取材・文/湯口かおり
写真/松木康平 スタイリスト/井阪恵 ヘアメイク/ナライユミ
衣装/スズキ タカユキ イヤーカフ・リング/プライマル

映画『海辺へ行く道』
8月29日より全国ロードショー
アーティスト移住支援をうたう、とある海辺の街。のんきに暮らす14歳の美術部員・奏介と後輩の立花は、夏休みにもかかわらず、演劇部に頼まれた絵を描いたり、新聞部の取材を手伝ったりと毎日忙しい。
街にはあやしげなアーティストたちがウロウロする中、奏介たちに不思議な依頼が次々に飛び込んでくる……。ものづくりに夢中な子どもたちと、秘密だらけの大人たち。海辺の街を舞台に、優しさとユーモアに満ちた、ちょっとおかしな人生讃歌。
原作/三好銀『海辺へ行く道』シリーズ(ビームコミックス/KADOKAWA刊)
監督・脚本/横浜聡子
出演/原田琥之佑、麻生久美子、高良健吾、唐田えりか、剛力彩芽、菅原小春
製作/映画「海辺へ行く道」製作委員会
配給/東京テアトル、ヨアケ