ぺぱぷんたすの第二期スタート
nullこんにちは。ぺぱぷんたすの007号が発売になっています。
1年に1度発売されるぺぱぷんたす。001号はぺぱぷんたすの「ぺ」号、002号は「ぷ」号、と続き、006号でとうとう「す」号まで辿り着いてしまいました。「す」号までいったらどうするんだろう? と思っていた方もいらっしゃるかもしれません。
007号はぺぱぷんたすの第二期と捉え、初心に戻り、新たな気持ちで作ろうということで、再び「ぺ」号になりました(実は2度目の「ぺ」号の「ぺ」は、アートディレクター祖父江慎さん曰く、カタカナの「ぺ」なんだそう。私も本ができあがったときに初めて知ったのですが……!)。
ぺぱぷんたす第二期のキックオフミーティングでは、改めて「ぺぱぷんたす」について話し合いました。
・紙でできること、紙だからこそできることを集めた体験&体感型MOOK
・想像力と感性を育む本
・自分の頭で工夫し、創造する喜び、自分でできる!(という自己肯定感)を味わえる本
・自分の「好き」を大切に、夢中になって遊び込める本
・手を動かして関わることを大事にする本
・正解がない本
・たくさんのものの見方、多様性を知ることができる本。まだ見ぬ世界へ導く本
「今の時代にこそ必要な本だよね」と皆でうんうんと頷きあい(自己肯定感高い!)、新たなスタートを切った007号。
今回は、その007号の表紙についての話をしたいと思います。
「デザイナーが変わった?ってくらい変えちゃいたいよね」と語っていた祖父江さん。その言葉通り、ぺぱぷんたす初の「箔」を使ったキラキラの表紙になりました。
めくったり、見る角度、光やそのあたり方によって色をかえるシルバーホログラムの箔。視点を変えて物事を見ることの面白さを伝えたい、というぺぱぷんたすにぴったりの表紙になったと思っています。でも、実はもともと「箔」を使う案はありませんでした。
まず、最初の打ち合わせで大まかな方向性を決めました。
・参加アーティストの名前をわかりやすく
・スタイリッシュに
・男の子か女の子か、どっちつかずのキャラクターが主人公
・海外ヨーロッパ風
・超シンプル
・キャッチフレーズははっきりと打ち出す
その上でイラストを担当してくださる100%ORANGEさんと、表紙キャラクターの打ち合わせをしました。
100%ORANGEの及川さんへのリクエスト、祖父江さんの第一声はこれ。
「及川さんがペンで描いた絵を見てみたいんだよね。これまでは面的な絵じゃったじゃない。今までにないタッチだったらめっちゃ新鮮じゃん!」
なんと、Gペンとインクが、机の脇に用意されているではないですか! ペンを渡された及川さんと祖父江さんはペンにインクをつけ、描き始めました。
「タッチがイギリスっぽくてもよいんだけど、ていねいなペンでね、こう」とシャッシャッと描いている祖父江さんの絵に、さらに戸惑う一同。
「え、シャドウ??」
「怖くない?」
「ホラー???」
と口からつい驚きの言葉が漏れ出てしまいます。
「えっ怖い? じゃあ、微笑んでるのは?(といって笑っている口を付け足す)。それから、ロゴ隠しちゃうのってどう??」
「……」(私)。
空気を読み、「あっだめだよね。そうだよね。あ、ひょっとしたらここにね、こう、飾り罫とか入れちゃうかもしれない」という祖父江さん。
「あ、ちょっとクラシックってこと?」(及川さん)
まるで謎解きをしているような時間。頭がこんがらがってくる一同。
そこで、イメージできるものとして祖父江さんが持ってきたのが古い新聞や、フェリックス・ザ・キャットの本。
お宝のような古い資料を見ているうちに、各々がなんとなく祖父江さんの言わんとしているイメージをつかみ始めたように思います。
最終的に「色々言っちゃったけど、リアルな手で書いているなっていう感じを大事に、今までない感じの100%ORANGEさんの絵があると魅力的かなって思って。ペンにこだわらなくても全然いいんですよ。えへへ、ずいぶん無茶な依頼をするよね」と。
だいぶ100%ORANGEさんを悩ませた上で、最終的に「お任せ」的な締めくくりをした祖父江さん(きっと100%ORANGEさん、この後さらに悩まれたと思います)。
そこからは線の話でなく、具体的なキャラクターの話になりました。
・状況があるといい
・何か紙との関わりが感じられる
・ストーリーが感じられる
この辺りは、わかりやすい話なので、ちょっとホッ。
でも、具体例として祖父江さんが描き出した絵が「ゴミ箱から出てくるぺぱちゃん」や、「シュレッダーに入っちゃって、途中でもどってくるぺぱちゃん(インクが滲んだタコのような絵)」と、やっぱりちょっと怖くて(ホラー!)、一同大爆笑。
こんなはちゃめちゃな打ち合わせでしたが、100%ORAGNGEさんから届いたモノクロのキャラクターは、ほんとうに新しくて、モノクロなのにみんな楽しそうで、幸せな感じもあって、さすがのかわいらしさ。祖父江慎さんと手を取り合って喜び合いました。
キャラクターが決まればここからはデザインです。
1:ファーストデザイン
祖父江さんがこだわっていた飾り罫が入っているデザイン。素敵だけど、大人っぽすぎるのと、キャッチフレーズが必要。泣く泣く飾り罫を断念。
2 :セカンドデザイン
キャッチフレーズが入ってきました。文字など修正。墨のロゴがこわいので、せめてロゴだけでも色を入れたいと言った私に、祖父江さんから四角い部分は箔を使いたいという提案が。
3:ピンクの箔をセレクト。ピンクの箔はかわいいだろうと期待するも、思っていたよりも落ち着いた印象。
4: ホロの箔に変更することに。あわせてロゴにも箔を使用。ちょっとした手違いでシルバーのホロ箔のつもりがゴールドの箔で出てきてしまう。目立つけれど、ちょっときつくて重たい印象。
5:シルバーのホロの箔に。もう時間がない!という中での校了で、ゴールドホロの上にシルバーホロを重ねたもの(ちょっとコテコテ)、別の部分にシルバーのホロ箔のみを押したものでチェック。軽さとはなやかさがあっていい感じ。
こんな風に、今回の表紙はできあがりました。
みなさんはどんな印象をもたれましたか? 子どもの本なのにモノクロなんて!シンプルすぎる!と思われる方も、もしかしたらいらっしゃるかもしれません。
でも、シンプルで美しいデザインにも、幼い頃から触れて欲しいなと思っているので、ぺぱぷんたすはこれからも新しいチャレンジをしていきたいと思っています。
『ぺぱぷんたす007』(2,300円・税込/小学館)
アートディレクション:祖父江慎
参加アーティスト:100%ORANGE、谷川俊太郎、ザ・キャビンカンパニー、片山健+祖父江慎、ミナ ペルホネン+COCHAE、中村至男、高田唯、junaida、佐藤良明+藤岡拓太郎、tupera tupera、よシまるシン
息子ふたり、猫二匹、ウーパールーパーとのドタバタ暮らし。余裕のある生活に憧れるもゆっくりできない性分。20年ほど女性誌を編集した後、幼児誌の編集に携さわり、2017年『ぺぱぷんたす』を立ち上げ。帰宅後10分でつくる料理のマンネリ化が、今最大の悩み。