親子でそれぞれ違うポイントで楽しめ、同じ時間を共有出来る
nullMEGUMIさんが映画『ねこのガーフィールド』で、声優のオファーを受けた決め手はなんだったのでしょうか?
「ガーフィールドは息子が小さいころに365日、毎日観ていたキャラクターでした。朝起きて(アニメ専門チャンネルの)‟カートゥーンネットワーク”をつけると『ガーフィールド・ショー』が流れていて。私がご飯をつくり、息子はそれをぼーっと観ている。そんな風に朝のルーティーンに組み込まれていた数年間がありました。
息子が大きくなった今振り返ると、かけがえのない時間だったな……と思わせる作品で。参加させていただけるのは、あの朝の景色を思い出させるという意味でもとてもエモーショナルなことでした。息子に自慢も出来るなと(笑)」(以下、「」内MEGUMIさん)
だからこそ、ガーフィールドの魅力をよく知るはずです。
「ウィットに富んでいて、なんとなく中身がおじさんみたいですけど、ねこで。怠惰なのに達観したようでもあって、ダメなのに本質を突いていたりする。アメリカンコミックらしいキャラクター設定があって、ワードセンスに笑え、ストーリーの展開が速い。そういうところに子どもも惹かれていたのかなと。
今回はじめに台本を読ませていただいたとき、スケールアップしている!と感じました。あの頃デイリーで観ていたアニメーションは家の中で起きるお話が大半でしたが、今回は‟家族愛”をテーマに、よりドラマティックになっていて。世界観もグッと大きくなった印象でした」
そう語るMEGUMIさんは完成した映画を観客として観て、「親子で楽しめる作品」と思ったそう。
「お子さんは面白いキャラクターや展開の速さでストレートに楽しめ、親御さんは、子どもへの愛に涙が出ちゃうかも。くすぐられるんですよ。親にとって、子どもというのはどうしても弱点ですから。心配とか怒!とか、自分の感情がいちばんあらわになってしまう。
それは全世界の親御さんに共通するのではないでしょうか。そうした視点でも感動するはずで、それぞれ違うポイントで楽しんでいるけど、同じ時間を共有出来る。そんな、数少ない作品だと思います」
物理的な距離が、母としての自分を正気に戻す
null自分磨きに余念がなく、自ら立てた目標を確実に手にしていくMEGUMIさん。「子どもが弱点」というのは、意外にも思えます。
「ちょっと熱を出しただけで、大きい病気では!?と、他のことではありえないほど、badな方向に妄想してしまいます。
ちょっと成長を感じられただけで泣いちゃったり、優しくされたことをいつまでも覚えていたり。振り回されている感じがすごくあって。他のことで、すぐ泣いてしまうことなんてないのに。感情のコントロールが効かず、好き過ぎて苦しい……という感じで」
まるで純粋すぎる恋愛について語るよう。息子さんが15歳になって海外留学中の今、その‟純愛”は更に加速し、新たな局面を迎えているようです。
「寂しいです……。寂しいですが、離れていかなきゃいけない年齢でもあります。でも、今こうして物理的に距離が離れているのはとてもいい。以前は私も、良かれと思って言い過ぎていました。‟レールを敷きたい。これがいいはず!”とあれこれ押し付けてしまっていたのかもしれないなと。
でも物理的に距離をとったことで、どこか正気に戻りました(笑)。息子も、久しぶりに会うと信じられないくらいに成長していたりします。離れているからこそ、自分から会いに行って一週間なりを過ごすときは毎日毎日、朝から晩まで一緒にいるのですが、それはあの年齢で日本にいたら絶対にないことだろうなと。
そうした現実をかみしめるように餃子をつくったりして、お母さんの時間を取り戻しています。それもまた、あと2~3年で終わってしまうのでしょうけど。彼女なんて出来たら、またもう一段階、離れてしまいますから。今、この時だけ、一生の思い出をつくっているのだなと。寂しいけど、しょうがないですね」
母親としての深い愛と、自分を客観的に見つめる厳しいまなざしと。「正気に戻った」というのがMEGUMIさんらしい。
「思いが強いあまりに自分の感情が抑えられなくなるけど、それは相手にとって迷惑なんだと。‟うるせえよ”という態度に、そりゃうるせえよな……って(笑)。
子どもにとって、自分で失敗して気づかなければいけない、そういう経験が絶対に必要だから、そこは本当にこらえて。‟そっちに行くと失敗するんだけどな……”等と言いたいことがたくさんあるけど、その1%も言わないように。今は見守って、必要なことだけをせっせとしてあげるという感じです」
子育てで、後悔していること
nullそんな風に、愛情深くて賢いお母さんであるMEGUMIさんでも、子育てを振り返り、「こうしておけばよかった」と思うことはあるのでしょうか。
「サマースクールとか近所の方でもいいのですが、もうちょっと外国の人に触れさせておけばよかったなと。これからを考えると、本人の可能性を広げるには海外に行くことを考えないとマズい時代じゃないかと個人的に思うんです。そのとき、“海外の人は怖い”という思いがあると、ハードルがひとつ上がってしまう。
息子は英語も学校の授業で勉強した程度で留学してしまったので、今とても大変だと思います。これ以上ないほどの大変さを乗り越え、既にたくさん成長してくれました。この先どうなるかはわかりませんが、現時点では行ってくれてよかったなと」
具体的に、どう成長したのでしょう? 気になるところです。
「‟何か食べる?”‟××する?”と、日本にいると相手を気遣ってくれたりしますよね。でも外国では、こちらから話しかけないと、コミュニケーションは生まれない。自分からキャラクターを発揮しなければ、人間関係は築けません。そのせいか、コミュニケーション能力は劇的に上がったように思います。
それからレディファーストになったんですよ! ‟(荷物を)持つよ”、とか。日本にいるときはそんなことはまったくなかったので、え!? と驚いてしまって(笑)。私の周りのスタッフからも‟変わりましたね”と言われ、とても誇らしくなりました」
文/浅見祥子 撮影/田中麻以(小学館)
【PROFILE】
MEGUMI(めぐみ)
1981年生まれ、岡山県出身。俳優・タレント。2020年『台風家族』『ひとよ』でブルーリボン助演女優賞受賞。最近の主な出演作は『映画 おいハンサム!!』、ドラマ『季節のない街』『おいハンサム!! 2』『東京タワー』等。プロデューサーとして『完全に詰んだイチ子はもうカリスマになるしかないの』『くすぶり女とすん止め女』等を手掛ける。昨年刊の『キレイはこれでつくれます』(ダイヤモンド社)は48万部を突破、今年『心に効く美容』(KODANSHA)を発売。
映画『ねこのガーフィールド』(配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)
監督:マーク・ディンダル(『チキン・リトル』)
声の出演:クリス・プラット、サミュエル・L・ジャクソン
日本語吹替版:山里亮太、MEGUMI、花江夏樹ほか
8月16日(金)より全国の映画館で公開
(あらすじ)
飼い主のジョンに愛されて、親友の犬オーディと‟幸せ太り” な毎日を送ってきた家ねこのガーフィールド。ラザニアが大好きで、月曜日とお風呂は大嫌い。そんなガーフィールドの前にある日突然、生き別れた父さんねこのヴィックが現れた! ずる賢いボスねこ・ジンクスに追われているというヴィックを渋々助けるために外の世界へ飛び出すガーフィールド。ジンクスとその仲間の狙いは? 涙あり、爆笑あり、わんぱくモフモフなニャンダフル・アドベンチャー。
映画ライター。映画配給会社勤務を経て、フリーランスに。二児の母。
『ビーパル』(小学館)、『田舎暮らしの本』(宝島社)などの雑誌、「シネマトゥデイ」などのWEB媒体で映画レビュー、俳優&監督インタビューを執筆。
『バカ卒業 ~映画「釣りバカ日誌」のハマちゃん役を語ろう~』(小学館)、『芸能マネージャーが自分の半生をつぶやいてみたら』(ワニブックス)を担当。