子育て世代の「暮らしのくふう」を支えるWEBメディア

「3人目の壁」はあった?減少する「3人以上の子ども」がいる家庭に聞いたリアルな実態

最新の「出生動向基本調査」を参照すると、子どもの数が3人以上の夫婦の割合は、1970年代から半分以下に減っています。

一方、子どもの数が2人の夫婦の割合は増加しています。子どもの数が2人から3人に増える際に、どんな“壁”があるのでしょうか。今回は、子育て中の親にとっての「3人目の壁」について探っていきます。

3人に1人は「3人以上欲しい」でも現実は…

null

国立社会保障・人口問題研究所がほぼ5年ごとに公表している「出生動向基本調査」。2021年の最新調査では、妻が50歳未満の既婚男女の“理想”の子どもの数は、以下の通りでした。

【理想の子どもの数】
1人・・・5.2%

2人・・・53.3%
3人以上・・・33.8%

3人に1人は、理想の子どもの数が「3人以上」と回答しています。

続いて、“現実”の子どもの数を見てみます。回答者は、妻の年齢が45~49歳の既婚男女です。

【実際の出生子ども数(2021年調査・妻の年齢が45~49歳の既婚男女)】
1人・・・19.4%(1977年:11.0%)

2人・・・52.8%(1977年:47.0%)
3人以上・・・17.9%(1977年:38.6%)

1977年の初回調査から、子どもの数が「1人」「2人」の夫婦の割合は、ともに増加しています。

一方、子どもの数が「3人以上」の夫婦の割合は、半分以下に減っており、理想と現実のギャップの幅が大きくなっています。

以上のことを踏まえると、現在には、子どもが2人から3人に増えるときに、なんらかの“壁”があると推測されます。

今回『kufura』編集部は、子どもの数が「2人」の男女90人と、子どもの数が「3人以上」の男女25人にアンケートを実施しました。

それぞれの属性の回答者に子どもが2人から3人に増えることについてどんなイメージを持っている(持っていた)のか、質問しました。

子ども「2人」の親に聞いた!「3人目」について

null

まず、子どもが2人いる男女の声をご紹介します。

3人目の子どもが「欲しい」「欲しかった」と感じている人の声です。

【3人目が「欲しい」「欲しかった」理由】

「子育てが落ち着いてきたし、今なら精神的余裕がありそうだから」(40歳女性/主婦/子12歳・9歳)

「子どもはかわいいから」(42歳男性/その他/子8歳・5歳)

「家がにぎやかになるから」(28歳女性/総務・人事・事務/子7歳・3歳)

「子どもはかわいいし、3人目は教育費が安い」(36歳男性/金融関係/子10歳・6歳)

「余裕があればすぐにでも欲しい。“もう一人”と思うが金銭的に叶いません。高くなる物価や税金に、あきらめざるを得ません」(35歳女性/主婦/子11歳・9歳)

「42歳で3人目を流産したので、あきらめました」(47歳女性/営業・販売/13歳・11歳)

3人目の子どもを「欲しい」「欲しかった」理由としては、“かわいい”“にぎやか”といった理由が目立ちます。経済的な理由や、身体的な事情によって、あきらめたというケースも含まれています。

【3人目の子どもを「欲しいと思わない」「思わなかった」理由は?】

続いて3人目の子どもを「欲しいと思わない」と回答した人の声をご紹介します。

「欲しい」のグループからは「かわいい」「にぎやか」など情緒的な回答が目立ったのに対し、こちらのグループでは、具体的な理由が書き込まれていました。

(1) 経済的な理由

「経済的に無理です」(38歳女性/主婦/子8歳・5歳)

「財政的に無理」(24歳男性/技術職/子3歳・1歳)

「養育費が大変」(40歳男性/総務・人事・事務/子5歳・2歳)

「学費の捻出ができない」(46歳男性/研究・開発/子17歳・14歳)

「今は共働きだが、3人目が産まれると妻は仕事ができなくなり、経済的に厳しい」(49歳男性/その他/子16歳・12歳)

(2)3人の子どもを育てる体力・気力がない

「2人でいっぱいいっぱい」(42歳女性/主婦/子7歳・3歳)

「2人でも手一杯だから」(40歳女性/公務員/子5歳・2歳)

「育てるだけの余力がない」(35歳男性/コンピュータ関連/子7歳・5歳)

「子どもはかわいいけど子育てが大変だから」(40歳女性/主婦/子6歳・2歳)

「また1から子育てする自信がない」(42歳女性/主婦/子15歳・10歳)

「もう十分」(33歳女性/会社経営・役員/子11歳・8歳)

「もともと2人目も産む予定はなかった。3人目は現実味がない」(23歳女性/その他/子3歳・0歳)

(3)年齢を踏まえて

「年齢的に無理」(40歳女性/主婦/子11歳・4歳)

「年齢を考えるともう1人産み育てるのは無理だと感じた」(37歳女性/主婦/子12歳・9歳)

今回のアンケートでは、3人目を「欲しいと思わない」と回答した69人のうち、生活費・教育費の不安について言及していた人が33.3%。年齢的な理由をあげていたのが24.6%、育てる余裕・余力がないと回答した人が21.2%でした。

“現在子どもの数が2人の父母”にとっての「3人目の壁」として立ちはだかっていたのは、「お金」「体力・気力」「年齢」でした。

「3人目の壁」は感じた?3人以上の子どもがいる親に聞いた

null

続いて、3人以上の子どもがいる男女に、3人目の子どもを持つときに「3人目の壁」(不安や迷い)は、あったかどうか聞いてみました。

今回、3人以上の子どもがいる回答者が25人と少数だったのですが、「3人目の壁を感じなかった」と回答したのは15人。「3人目の壁を感じた」と回答したのは10人でした。

それぞれの声をご紹介します。

【「3人目の壁」を感じなかった理由】

まず「3人目の壁」を感じなかった、という声です。

「特に不安はなかった。“なるようになる”と思った」(40歳女性/主婦/子10歳・6歳・3歳)

「2人も3人もそんなに変わらないと思った」(57歳女性/主婦/子29歳・21歳・18歳)

「自分が5人きょうだいで育ったので感じなかった」(57歳女性/総務・人事・事務/子23歳・21歳・19歳)

「2人目、3人目が双子だったから」(55歳男性/その他/子25歳・22歳・22歳)

「必死すぎて考える暇もなかった」(47歳女性/その他/子18歳・15歳・13歳)

「お金が大変かもしれないという思いもありましたが“たくさんの子どもがいたらにぎやかで楽しいんじゃないか”という考えの方が強かった」(47歳女性/その他/子17歳・15歳・14歳・12歳・9歳・8歳)

回答者が15人と少数ではありますが、回答を読んでみると、「なんとかなると思った」「深く考える時間がなかった」といった回答が目立っています。ある程度、子どもの手が離れた回答者が多くなっていました。

【「3人目の壁」を感じた理由】

続いて、3人目の子どもが生まれる前に「3人目の壁」を感じた、という声です。

「生活費がかさむから」(39歳男性/技術職/子15歳・11歳・6歳)

「現在の収入で3人を大学まで送ることができるのか不安になった」(49歳男性/営業・販売/子17歳・14歳・12歳)

「3人目の妊娠がわかったとき、絶え間ない世話なしには生きられない赤ちゃんをもう一度育てることの不安と、仕事の制約が生じて収入が減る不安があった。実際に、3人目が生まれたら、かわいくてしかたなかったが、今は教育費のピークが不安」(42歳女性/パート勤務/子15歳・13歳・6歳)

「入学時、卒業時などイベントが重なるときの費用負担が重くなるのではないかと思った」(48歳男性/会社経営・役員/子16歳・13歳・12歳)

「3人目がなかなかできなかった」(51歳女性/主婦/子25歳・24歳・11歳)

「3人目の壁を感じた」と回答したグループでは、10人のうち9人が、“お金”の不安に触れていました。

子どもの数「2人」から「3人」の間に立ちはだかる不安

null

ここまで「3人目の壁」についてのアンケートをご紹介してきましたが、子どもの数が「2人」のグループの不安や心配事を形成していたのが、「お金」「子育ての体力・気力」「年齢」の3つ。

中でも、第1子の子どもの年齢が18歳以下の男女からは、お金の不安が最も多く書き込まれていました。

子どもの数が「3人」のグループから頻出していたキーワードもお金に関することでした。

子どもが3人になると、さらにお金が必要。一方で、子どもの世話に充てる時間が増え、働く時間の確保が難しくなる……。アンケートでは、そんな声も寄せられており、高騰が続く教育費や生活費を十分に用意できるのかどうか、不安が高まっていることがうかがえます。

こども未来戦略 リーフレットより

こうした状況を踏まえてか、少子化対策や子育て世帯の支援の一環として、子どもの数が3人以上の家庭を家計面から支援する施策が拡充されつつあります。

多くの自治体では、第3子の保育料の軽減・無償化などの施策が導入されています。生活コストが特に高い東京都では2024年度から親の所得に関係なく高校の授業料の実質無償化がスタートする予定です。

また、2025年度からは子ども3人以上を扶養する世帯の大学無償化の施策が閣議決定され、国会に提出される予定です。2人目や3人目の子どもが大学生になるとき、第1子が扶養から外れていると無償化の対象外となるなど、対象の家庭が絞られるため、インターネット上の反応は冷ややかな声の方が多くなっています。

先進諸国の中でも子育て支援の公的支出がきわめて少ない国といわれる日本ですが、今後「子どもがいても働きやすく、十分な収入を得やすい」「育児費用の負担を軽減する」ための施策の予算が増える見込みです。

ちなみに、次元の異なる少子化対策を目指す「こども未来戦略会議」が目指す将来像として、以下の4つが示されています。

  1.  こどもを生み、育てることを経済的理由であきらめない
  2.  身近な場所でサポートを受けながらこどもを育てられる
  3.  どのような状況でもこどもが健やかに育つという安心感を持てる
  4.  こどもを育てながら人生の幅を狭めず、夢を追いかけられる

現状は、こうした“理想”とは対極にあるために「理想の子どもの数」と「現実の子どもの数」にギャップがあると推測されますが、具体的な政策によってその差は縮まっていくのか、注視する必要がありそうです。

【参考】
第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)- 国立社会保障・人口問題研究所

こども未来戦略(リーフレット等)- こども家庭庁

こども未来戦略会議

北川和子
北川和子

自治体HP、プレスリリース、コラム、広告制作などWEBを中心に幅広いジャンルで執筆中。『kufura』では夫婦・親子のアンケート記事やビジネスマナーの取材記事を担当している。3児の母で、子ども乗せ自転車の累計走行距離は約2万キロ。地域の末端から家族と社会について日々考察を重ねている。

pin はてなブックマーク facebook Twitter LINE
大特集・連載
大特集・連載