何が「小4の壁」を作っているのか?
null2023年1月に『kufura』編集部が子育て中の109人の女性にアンケートを実施したところ、18.3%が「小4の壁を感じたことがある」と回答しています。
編集部は2020年から毎年「小4の壁」についての同様のアンケートを実施しておりますが、“小4の壁“を実感した母親の割合は、2割程度で推移しています。
また、インターネット空間の“小4の壁”への関心の高さもうかがえます。
2022年末、ヤフー株式会社が提供する事業者向けデータソリューションサービスが、検索ワードから保護者の子育て関連の関心事を分析したレポートを公開したところ、「小学4年生」を検索しているユーザー群において“小4の壁”は2番目に多い検索数でした。
一方で、この言葉に対する感覚は、家庭ごとに異なっています。
“小4の壁”という記事に対しての反響は毎回さまざまで、実際に直面した親の声がある一方で「うちはそんな壁はなかった」「壁を越えてこそ成長するもの」「壁を勝手に作らないで」という反響も見受けられます。
親の就労形態、学級の雰囲気や環境、友人関係、一人ひとりの個性や学力によって、“壁”の有無や高さは異なっているようです。具体的にはどんなことが“壁”となっているのでしょうか。
1:子どもの「居場所確保」について
null1つめは、共働き家庭が直面する長期休暇の“居場所確保”問題です。
「トワイライト(学童のような居場所)に行きたくないといい、家で一人で留守番しなくてはならなくなり、特に夏休みが困った」(49歳・営業・販売)
「長期休みの間の預け先がないこと。しょうがなく、鍵と携帯を持たせることになった。日中は1人のため、注意する大人もいないためゲームや動画ばかりになり、さらに仕事中で出られないのにやたらと電話をかけてきて困った」(48歳・主婦)
「夏休みなどの長期休みの間のお弁当(学童)が大変だった」(36歳・主婦)
「学童がなくなり会社を辞めた」(52歳・主婦)
放課後や夏休みを過ごす場所として、重要な役割を担う学童。近年、利用者が増加を続けており、新4年生は退所をせまられるケースもあります。厚生労働省の調査でも、学童の待機児童が最も多いのが、4年生という結果になっています。放課後の数時間は留守番できるものの「夏休みの居場所がない」「学童に行きたくないと言う」などの声が聞かれました。
過去記事では、適した習いごとを探す、近所に祖父母がいる場合には頼る、夏休みには父親か母親が休んで一緒に過ごす、などの対策が寄せられています。どの対策も難しい場合には、就労スタイルを変えるか、子どもを留守番させるかの二択になってしまうケースもあるようです。
どこかで安全に遊ぶ場所があればいいのですが、最近の4年生、忙しい子が多いんですよね……。
2:「勉強の難易度」があがり「学力格差」が顕著に
null今回のアンケートで最も多く寄せられたのが、学習習慣・学力に関する悩みでした。
「学習難度が上がると同時に自我が強く芽生えて親の言うことがスムーズに聞けない」(41歳・主婦)
「漢字が覚えられなくなってきた」(33歳・その他)
「宿題が多すぎて下の子たちを見ながら、宿題を見るのが大変」(36歳・主婦)
「算数が急に難しくなってきた」(43歳・主婦)
「算数が全く理解できていなかった」(36歳・主婦)
“ゆとり教育”は今は昔。現在は小4で学ぶ漢字に都道府県の漢字が追加され、算数の小数計算、図形問題などは思考力が求められ、外国語活動が本格化するなど、学習の密度が高まっています。
また、新学習指導要領がスタートし、これまでの学習内容だけでなく、“生きて働く知識および技能”“学びに向かう力”といった漠然とした能力も求められるようになっています。
学力や専門的なスキルが重要視される社会においては「勉強が苦手でも、生きていける。あなたはあなたのままでいい」とは、言い難いのが実情です。筆者は以前、中学受験雑誌の仕事に携わっていましたが、一部地域では受験熱の高まりにより、小4から本格的に勉強する子とそうではない子の差も顕著になっています。
3:子どもの情緒の揺らぎ
null3つめは子どもの情緒面の変化や生活態度についての回答です。
「学校に行きなくない(勉強したくない)」(47歳・主婦)
「ゲームばかりしたがり反抗するようになった」(30歳・会社経営・役員)
「友達関係に悩んだ」(48歳・総務・人事)
この時期を表す“9歳の壁”という言葉があります。客観的な物の見方が少しずつ身につくと同時に、劣等感を抱きやすくなる時期であるといわれています。子どもの情緒面や親子関係においても、変化が訪れやすい時期だと言えます。
勉強やスポーツ、友人関係を通じて自尊心が削られた経験、皆さんにもありませんでしたか?
過去のアンケートでは、子どもの話を傾聴する、スクールカウンセラーに相談する、などの方法で、少しずつ状況が好転した、という体験談が寄せられてました。
今回は“小4の壁”についてお届けしました。
おそらく“小4の壁”は、テレビゲームによく登場する“見えない壁”のようなもの。難なく通過できる人がいて、そうではない人もいます。
もし、直面したら、子どもの声に耳を傾けて、ときには家庭外の人の力も借り、壁を“迂回”したり、子の背中を支えたりしながら、心穏やかな日常が訪れますように。
【参考】
自治体HP、プレスリリース、コラム、広告制作な