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逆効果になってない?「片付けられない子ども」にイライラしないふたつの工夫…教育評論家・親野先生に聞きました#3

小学校教師として23年間、教育評論家として17年間、多くの親子を見てきた親野智可等さんに、“毒”にならない子育てについて聞く本連載【もしかして、毒親!?】。前回は、人格や存在を否定するような強い言葉ではなくても、「ダメ」「また」「なんで」と日常的に叱り続けると、子どもが自己肯定感を持てず親子関係も悪化するというお話を聞きました。

3回目の今回は、暮らしの中でありがちな“片付け”のシーンでの、子どもとの関わり方を教わります。

片付けられないのは、誰のせい?

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「大前提として、子どもが片付けや整理整頓ができなくても、自分=親のしつけが悪いからだと思い過ぎないでください。“自分のせいだ!”と思えば思うほど、子どもへの言葉が厳しくなってしまいます。

前回もお話ししたように、生まれもっての要素が大きいですし、大きくなってからの方が自らの意思でやれるようになる可能性が高い。だから、小さいうちにできるようにしようとして、強く叱り続ける必要はないのです。

だからといって放任するわけではなく、いま親ができることは、“工夫”をすること。『方法の工夫』と『言葉の工夫』についてお話しします」(以下「」内、親野さん)

「方法の工夫」・・・仕事なら工夫できるのに、子どもは叱っておしまい!?

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「教員時代から痛感しているのですが、“子どもが整理整頓できない”と嘆くお母さんほど、『方法の工夫』をしていないことが多いんです。自分でビジネスをしているお母さんとお話ししたときに、顧客対応やクレーム対応などとても工夫していて感心したのですが、さて、我が子のこととなるとぴしゃっと叱って簡単に済ませている。

ワンタッチ収納にする/ラベリングをする/物を減らす

など、子どもが片付けしやすくなる情報をいくらでも集められる時代です。まずは、仕事で生かしている工夫の力を、ぜひ子育てに生かしてみてください」

「言葉の工夫」・・・子どもを咎めず、明るく楽しい言葉で伝えよう

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「忙しくて片付けやすい工夫をする時間がないときは、せめて『言葉の工夫』をしましょう。もちろん両方やるのがベストですが。とにかく明るく楽しく、子どもが聞いていて気持ちがいい言葉で声をかけます。

さあ、片付けよう/お母さんと競争だよ/5秒でやっちゃおう

“また片付けてない!”“なんで片付けないの!”“片付けなきゃダメでしょ!”など、咎める要素を入れないように気を付けてくださいね。

何度も繰り返しますが、片付けができないのは、あなたのお子さんのせいでも、あなたのせいでもないので、叱ったり咎める必要はないのです」

ふたつの工夫も通じないときの奥の手は?

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一緒に片付けたり、親が片付けてあげても大丈夫です。

“いつまでも自分でできるようにならないのでは?” “自立の妨げになりませんか?”と必ず聞かれるのですが、片付けができないことで叱り続けて、親子関係が悪くなるほうがその後の弊害が大きい。

発達心理学の研究でも、大人に叱られ続けた子どもよりも、褒められて手伝ってもらった子どもの方が、結果自分のことを進んでやれるようになることが明らかになっています。

ただし、やってあげるなら、ひとつ条件があります。

●あなたが片付けしないから、お母さんが忙しいのよ!

●片付けもできなくて、どうするの!?

など、いちいち叱ったり嫌みたっぷりに文句を言わないこと。

子どもは、やってもらったのにちっとも嬉しくないし、感謝する気にもなれません。さらに、“やっぱりぼくはダメなんだ”と自己肯定感も持てず、親が片付けてあげたことが台無しになってしまいます」

今回は片付けを例にしましたが、何ごとも同じです。子どもがどうしてもできないことは、明るく楽しく、親子の触れ合いの一環だと捉えて手伝ったりやってあげたりして、少しでもできたときは褒めてあげる。その繰り返しのなかで、子どもはお父さん、お母さんのことがどんどん好きになるし、自信もついて、自ら行動できるようになる。そうやって子どもは成長していくものです」

日常の物事だからこそ、片付けひとつとっても子どもへの接し方や言い方を間違えると“毒”になる可能性が潜んでいるんですね。

ただ、めまぐるしい毎日の中で自分に余裕がないと、明るく楽しい声かけやこまめに褒めることが難しい時もあります……。次回は、そんな方におすすめしたい“褒め方のルール”について教えてもらいます。


 

【取材協力】

親野智可等(おやのちから)

長年の教師経験をもとに、子育て、親子関係、しつけ、勉強法、家庭教育について具体的に提案。著書多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても著名。TwitterInstagramYouTubeBlog、メルマガ、各種メディアの連載などで発信中。オンライン講演をはじめとして、全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。詳細については「親力」で検索してHPから。

駿河真理子
駿河真理子

大学卒業後は銀行に就職するも、大好きな雑誌の世界に飛び込む。『女性セブン』(小学館)で、編集兼ライターとして10年間、エンタメ系の誌面に携わる。第2子出産後、5年ぶりに『kufura』のライターとして復帰。今後は、育児や暮らしにまつわる記事を発信していきたい。

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