本に落書きするワクワク感を体験してほしい!
nullこんにちは。本日、7月28日に発売する『ぺぱぷんたす006』の校了を全て終え、晴れやかな気持ちでこの連載を書いています。あとは印刷、加工、製本とプロフェッショナルな方々の手に委ね、本ができあがるのを待つのみです(とはいえ、現場の立ち合いはあるのですが)。
前回の連載で、『ぺぱぷんたす』はふつうの雑誌作りとはちょっと違って、「アーティストの方と打ち合わせをしながら、必要なページや紙、加工の有無を検討したり、進めていく中で仕様やページ数を変更していく」ということをお伝えしました。
アーティストの方への依頼の仕方もさまざま。こちらからテーマを限定せず、「こういう本ですが、何かやってみたいことはありますか?」とお聞きすることもあれば、「こんなテーマでお願いしたい」「こんな仕掛けで考えていただきたい」というお願いから始めることもあります。
ぺぱぷんたす001を作るときに、どうしても入れたかった企画「いっしょにつくるえほん」は、後者にあたります。
作家さんが描いたストーリーに読者をいざない、一緒に絵を描きこんでもらう。読者が絵を加えることで、「世界に一つのオリジナルの絵本」ができあがる、という企画。
いっぺんに描き込むお子さんもいれば、少しずつ描き加えていくお子さんもいるでしょう。でも、その子のその時にしか描けない絵が雑誌の中に「掲載」され、綴じ込められて(笑)、半永久的に残るって素敵だなと思うんです。
「本は大事に読みましょう」「落書きしちゃダメ」ではなくて、思いっきり描きこんで欲しい。本に落書きするわくわく感(ふだんしちゃだめ!と言われることをやれるって楽しいですよね!)や、作家さんと一緒に一つの絵本を作りあげる体験をしてほしい、という気持ちもありました。
落書きといえば……余談ですが、私の二人の息子たちが教科書やノートに描いていた落書きは、私にとって、その時の子どもの興味や心の中を知る大切な手がかりとなっていました。
息子たちは授業に集中していない、と先生に呆れられたり、怒られていましたが……。今でも落書きがいっぱい描かれているものは、捨てられないのです。
紙やインク選びは、祖父江慎さんならではのアイディアが!
nullそして、001号の「いっしょにつくるえほん」は、100%ORANGEさんにお願いしました。
祖父江慎さんと100%ORANGEさんとの打ち合わせでは、どのように子どもを誘うか、どうやったらスッとストーリーに入り込み、気負うことなく、躊躇することなく落書きできるか、を考えました。
紙にも印刷にも詳しい祖父江さん。アイディアが次から次に出てきます。
「鉛筆で描きやすいように、紙は藁半紙みたいなやわらかいざら紙がいいね」「100%ORANGEさんの絵も、落書きみたいな、ラフな感じだといいよね」「鉛筆で描くのがいいかも」「あ! 黒のインクと銀のインクを調肉してもらおうよ。そしたら印刷も、鉛筆で描いたみたいな風合いになるよ!」「1色だけだと味気ないから、蛍光インキも使っちゃう?」「読者の子にも、鉛筆と蛍光ペンで描きこんでもらうといいよね!」。
合間合間に、「調肉ってなんですか?」「蛍光インキにも種類があるんですか?」「文字はどうしましょう?」なんて口をはさみつつ、大いに盛り上がって、打ち合わせは終了しました。ストーリーは100%ORANGEさんに、100%お任せ(笑)です。
そして、1か月後……。ラフが送られてきました。
「あるくのも ヘタクソ およぐのも ヘタクソ、なにもかもが ヘタクソ」な「ヘタクソペンギン」の物語です。このダメダメな「ヘタクソペンギン」のゆるさとかわいらしさに一瞬にして心奪われた祖父江さんと私。「何にも問題ありません! 進めてください」と、即答しました。
100%ORAGNEの及川さんもすぐに本画に取りかかってくださり、しばらくして本画が届きました。するとここで問題が。
どうしよう…絵の完成度が高すぎる!
null問題というのは……「ヘタクソペンギン」の完成度が高すぎる、ということでした。「ヘタクソペンギン」がイキイキとして、なんだかカッコいい!
ふつうならとってもよいことなんですが、「ヘタクソペンギン」だし、できるだけ子どもたちがこのページに参加するハードルを下げたかったので、悩みに悩んで、祖父江さんと私と二人で及川さんに「最初に描いていただいたラフを載せてもいいですか?」とお電話しました。
きっとこんなお願いはされたことがないと思いますし、驚かれたと思います。でも、理由を説明すると及川さんは「わかるような気がする。だけど少しだけ気になるところを直してもいい?」と了承してくださいました。
100%ORANGEさんの懐が深く、そして祖父江慎さんとの間で長年培われた信頼関係があってこそのことだと思っています。
そうしてできあがった「いっしょにつくるえほん」。鉛筆と黄色の蛍光ペンを用意すれば、100%ORANGEさんが描いた絵と同じタッチで描くことができ、最後には100%ORANGEさんの絵なのか、自分が描いた絵なのかわからなくなっちゃうところが気に入っています。
001号ができた頃はまだ息子も幼くて、この本で遊んでいました。時間が経ったある日、自宅にあったぺぱぷんたす001号を手に取り、このページを開いた時、その当時の子どもの、その時にしか描けない「その瞬間」がパアッっと本から解き放たれたように思えてハッとしました。
「遊んだ形跡」が残る本っていいな、これは宝物だな、って(自画自賛ですが)思っています。
「いっしょにつくる」シリーズは、毎号のように!
002号は五味太郎さん「らくがき★コラボ」、003号はきくちちきさん「ちょうになった おはなし」、004号は田島征三さん「きみと ぼくの 木」と、作家さんそれぞれのアプローチで、この「いっしょにつくるえほん」は続いています。
004号の田島征三さん「きみと ぼくの 木」では、木の右側は田島征三さん、木の左側は「きみ」が描くようになっています。
そして……!
7月28日発売になる006号は、ザ・キャビンカンパニーさんによる「みえないともだち」。
お子さんたちが描く「おともだち」は、どんなともだち何でしょう。今からわくわくしています。
次号の006(7月28日発売)、予約スタートしています!
7月28日に発売される、ぺぱぷんたす006号も、切ったり、折ったり、くしゃくしゃしたり、紙の楽しさを存分味わえる企画が盛り沢山! 身の回りのもので遊びをぐんぐん広げられるページもありますので、お楽しみに!
ただいま予約受付中です。
『ぺぱぷんたす』編集長・笠井直子
息子ふたり、猫二匹、ウーパールーパーとのドタバタ暮らし。余裕のある生活に憧れるもゆっくりできない性分。20年ほど女性誌を編集した後、幼児誌の編集に携わり、2017年『ぺぱぷんたす』を立ち上げ。帰宅後10分でつくる料理のマンネリ化が、今最大の悩み。