「紙育」雑誌を作る企画は通ったけれど…
nullぺぱぷんたすのキャラクターから「はじめまして」のごあいさつ。
ぺぱぷんたす003に収録した「パラパラまんが」より
2016年「紙育本」の企画が通り、「やったー!」と天にも舞い上がる気持ちになった私ですが、それは一瞬。はっと我に返り、今度は青くなりました。
「一体、何をどこから?どうしたらいいのだろう?」。企画を通すことに一生懸命だった私は、丸ごと1冊雑誌を作るということが、どんなことかをよくわかっていなかったのです。
20年以上雑誌に携わってきたし、単行本を作ったことはあっても、ゼロから雑誌を作る、そんな経験はしたことがありません。やりたいこと、イメージ、企画はとにかくいっぱいある。でも、それを現実に落とし込んでひとつの形にまとめるのは、とても難しく、果てしない道のりのように思いました。
特に、紙や印刷、加工にまでこだわる本となると、いろいろな知識も必要です。これはひとりでは作れない……。
そうだ!祖父江慎さんに頼んでみよう!
そんな時に頭に思い浮かんだ人は、ブックデザイナーの祖父江慎さんでした。
自由な発想とコドモゴコロを持っていて、紙にも印刷にも加工にも製本のことにも詳しくて(その偏愛っぷりたるや!)、子どもに媚びないデザインでありながら子どもを惹きつけるデザインができて、困難な過程も楽しんでくれそう。そんな人は祖父江さんしかいないと思いました。
こちらも、ぺぱぷんたす003から「パラパラまんが・おさんぽ」
同号に収録された、作者・100%ORANGEさんのコメントは……
『久しぶりにパラパラ漫画を描いてみました。といっても小学生の頃から教科書の端に描いてたので馴れたものです。自分の教科書への落書き、少しくらいいいじゃないですか。落書きがこうして将来役に立ってる人間もいるのですから』
ちょうどその頃、祖父江さんの展覧会、『祖父江慎+コズフィッシュ展:ブックデザイ』が開催されていて、その展示を見て、「やっぱり祖父江さんしかいない!」と確信。
とってもお忙しい方なので、無理かなあ、でも当たって砕けろ! とお電話したところ、「それは面白いね! そんな本ないもんね。やろうやろう」と。
そこから最初は二人三脚でスタートしました。やりたいこと、アイデアは山ほどあり、どんどん膨らんでいきます。まだ最初の打ち合わせの段階で「もう、これは6冊はできちゃうね!」って祖父江さんが言っていたのをものすごくよく覚えているのですが、まもなく、その予言(?)通り、6冊目ができあがります。
それでも、企画やアイデアはまだまだ尽きることがありません。つくづく紙ってすごいな、って思います。
タイトル「ぺぱぷんたす」誕生の裏には…
nullさて、「ぺぱぷんたす」というタイトルが決まったのは、かなり後のことでした。
ずっと「ぺぱぴぽ」(ペーパーとピープルの略語)でいこうと思っていたのですが、すでに商標登録がされていて。本のタイトルに使うことは問題なかったのですが、「せっかく新しい本を作るんだから、真新しい名前がいいよね」ということで、新たに考えることになりました。
ペーパーの「ぺぱ」か「かみ」はつけたいなと思って、思いつくものをあれやこれやノートに書き並べていたのですが、なかなかピンときません。そろそろ決めないといけない、という時、祖父江さんが私のノートを覗き込んで、「これなに?」って目をつけたのが「ぺぱぷんたす」。(ペーパーの「ぺぱ」にスペイン語で先端、とか岬という意味の「ぷんた」をくっつけた造語です) 。
「これいいね!」って、祖父江さんはその場で(しかも深夜、オフィスの外で)「ぺぱっ! ぷん! つす!」ってボイパ(ボイスパーカッション)を始め、ノリノリで踊り始め……(ラッパーのように)。近所の人から苦情が来ないか気が気じゃありませんでしたが、それがものすごく面白くて! 「このタイトル、いいかも。なんだかよくわからない感じや、毎回言い間違えそうなところも、この本らしい」とその時に初めて思いました。(これはないかな、とちょっと控えめに書き出していた名前だったんです)
表紙のキャラクターは、100%ORANGEさんにお願いしました。「紙の本にふさわしい、かわいいキャラクターをお願いします」という漠然としたお願いで、大変悩まれたようです。私たちは、100%ORANGEさんの絵なら間違いない!と信頼してお願いしていますが、考えてみれば、本の今後の運命をも担う、大事な表紙キャラクターですから、おそらくプレッシャーも大きかったに違いありません。