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祖父母に「子ども乗せ自転車で送迎お願い」に待った!知っておきたいリスクとは…

子ども乗せ自転車を使っての子どもの送迎を人にお願いしたことはありませんか? 祖父母やベビーシッターさんなど、どうしてもという場合には頼ってしまうことがあるかもしれません。でも、もし高齢の方に頼むような場合、注意が必要なようです。

「自転車運転の技術は、60歳を過ぎると急激に低下する」と語るのは、自転車の事故について調査している一般財団法人日本自転車普及協会谷田貝一男さんです。今回は、谷田貝さんに60代を超えた祖父母や高齢の方に関する子ども乗せ自転車運転(電動も含む)のリスクについてお話を伺いました。

50代から60代に年齢があがると、自転車の運転能力が急激に低下する

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60代~70代の祖父母や知人に保育園・幼稚園の送迎をお願いしている家庭もあるかもしれませんが、その場合、送迎手段として、自転車は使用しない方がいいと谷田貝さんは、断言しています。その理由が、運転技術の急激な低下。

「以前、60代~70代の男女741人にアンケートをとったことがあります。『50代の頃と比べて運転技術が低下していると思う』と回答した男女が60代前半で5割超、60代後半で6割でした。

60代前半であれば、元気な方もいらっしゃると思いますが、それでも半分くらいの方が、運転技術の低下を認識されています」(谷田貝さん)

ちなみにこのデータは、普通の自転車を運転する場合のもの。

「体重10キロ前後の子どもを乗せて走行するのは、さらなるバランス能力、筋力、瞬発力を必要とします」(谷田貝さん)

今の60代は、男性も女性も若々しい方が多いですし、体力のある方もたくさんいらっしゃいます。一方で、総合的な運動能力の低下は誰もが避けられない現象です。

高齢者の事故6割超が転倒事故!子どもを乗せているとリスクは上がる

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高齢者の運転は、具体的にどのようなリスクがあるのでしょうか? 谷田貝さんによれば、高齢者の自転車事故の64%は、転倒事故。一口に“転倒”といっても、その理由は様々です。谷田貝さんが独自に高齢者の転倒の原因を調べたところ、多かった原因は、以下のようになっています。

・車両・歩行者と交錯時・・・17.2%

・ハンドル操作の不適など・・・16.4%

・車道と歩道との間の段差・・・13.3%

・乗車・出発・停車・下車時・・・10.0%

・道路上の凹凸など・・・6.2%

・坂道・カーブ箇所・・・5.0%

具体的には、

「前から来る歩行者・自転車を避けようとするときにフラつく」

「走り出すときにフラつく」といったケースが多いようです。また、10キロを超えた子どもを乗せて駐輪したり、動かしたりする際、腕の力で支えきれず、転倒させるリスクも想定されます。

「電動アシスト自転車」なら大丈夫?

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「電動アシスト自転車なら、筋力が落ちていてもスムーズに運転できるのでは?」という疑問が生じるかもしれませんが、じつは、電動アシスト自転車ならではのリスクもあるようです。

「電動アシスト自転車だと、走り出しや走行中はとてもスムーズですが、普通の自転車より重量があり、支えるのが難しく、子どもを乗せたまま倒してしまう可能性があります。また、走り出しの加速でバランスを崩す可能性もあります」(谷田貝さん)

筋力の衰えは電気の力でカバーできたとしても、バランス感覚や瞬発力を要するのは、他の自転車と変わりません。

高齢者が電動アシスト自転車で子どもを乗せて運転するのは、普通の自転車同様避けた方がいいとのことでした。

以上、今回は高齢者による子ども乗せ自転車運転のリスクについてお届けしました。

子どもの送り迎えをフォローしてくれるおじいちゃん・おばあちゃんは本当に心強く、ありがたい存在です。思いもよらない事故を防ぐためにも、送迎を頼む場合は、ベビーカー、徒歩など自転車以外の手段でお願いしたいですね。


【取材協力】

谷田貝一男(やたがいかずお)・・・一般財団法人日本自転車普及協会 / 自転車文化センター学芸員。各地の自転車通行環境や利用状況の調査を基にして事故発生原因と安全利用方法を検討し、その結果を講演や執筆等を通じて広報する活動を行っている。

※  本記事は2018年2月現在の情報です。

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