子育て世代の「暮らしのくふう」を支えるWEBメディア

我が家の鍋は母から受け継いだ「水炊き」一択。麺を入れるタイミングは…【お米農家のヨメごはん#40】

こんにちは。富山県の黒部市というところで、お米だけを作っている小さな小さな農家の濱田律子です。旦那とココ(娘・12歳)と3人で、地道に真面目にコツコツとお米を作りながら、仕事に子育てにドタバタもがきつつも楽しく暮らしている、そんな私たちの食卓周りの日常を、皆さんにお伝えする連載の40回目。
今回は、日に日に冷え込んできたのでお手軽な鍋料理についてと、久しぶりのマルシェ出店の様子をお伝えしたいと思います。

お鍋の季節がやってきた!

null

日に日に冷え込みが厳しくなってくる季節。
朝晩はもうストーブなしでは過ごせなくなってきて(我が家の暖房は昔ながらの石油ストーブ)、 窓から見える山々はすっかり白く雪化粧されている。 平野部では紅葉が見ごろを迎えようとしていて、我が家の庭の木々も美しく色づいてきた。

今年もやってきた、お鍋の季節だ。
簡単でヘルシーで、もう毎日お鍋でもいい!という人も多いだろうお鍋だけれど、 私は全くお鍋のレパートリーがなく、いつも決まってこの、水炊きばかり。

お鍋の素というのを、恐らくこれまで一度も使った事がないのは、 実家の母親が作るお鍋が水炊き一択だったのと、 その水炊きが最高に美味しくて違うお鍋を作らなくてもいいと思っているからだと思う。

大人になってから福岡で食べた水炊きは、鶏ガラでしっかり取った白濁したスープで驚くくらい美味しくて、さらにはシメの、柚子胡椒を添えたスープ入りの麺は今でも忘れられない。今でも思い出しながらビール1杯飲めそうだが、大阪出身の母が作る水炊きは、名前通り、そのまんま水から炊くお鍋だ。昆布でお出汁くらいとってもいいのに、それさえもしない。

水を沸騰させて鶏肉やお野菜をどんどん加える。 一般的にはシメとされる麺(だいたいが、うどんだった)も最初から投入。 お肉とお野菜から十分にお出汁が出るので、味付けは各々好きなように、お醤油を少々たらすだけだったり、ポン酢だったり、七味を振りかけたり、柚子胡椒を添えたりと、好きなようにできるのもまたいい。

麺は取り合いになるくらい最初から大人気。 実家でも昔からそうだったし、我が家でもやっぱりそう。 だから皆さんも是非、最初から麺を入れてみてほしい。

1人暮らしをしていた大学生の時、私は本当にお金がなくて日々の暮らしに困窮していた(仕送りは一切なかった!)。

時代は平成だったのに、花の女子大生が築数十年の4畳半風呂なしアパートで、古き良き昭和の、まるで『神田川』のような世界観……と書いても、おわかりいただける方は少ないかもしれない。

ともあれお金がなかった私の日々の食事は、バイト先の賄いと、この水炊きだった。具は、お肉屋さんで買う100g・98円の鶏肉100gと、八百屋さんで買うネギ1本48円、そして冷凍うどん1玉。これだけを片手鍋で炊いて、あとは市販のお手頃ポン酢でいただく。 これでも十分に美味しかった。

実家で食べた水炊きも、貧乏学生だった時の水炊きも、今こうして食べている水炊きも、どれも大好きだ。

今回は、大分の方から送っていただいたカボスのポン酢と、追いカボスでいただいた。

お手製のポン酢は、大手の商品やこだわって作ったであろう商品とは全く違う味わいで、それはやっぱり、人が作った温もりがちゃんと伝わってくるからだと思う。

シンプルな水炊きだからこそ、ご馳走に感じられた。

水炊きをした翌日の楽しみは、雑炊だ。

この雑炊を食べるために水炊きをしているのか、水炊きをしたから雑炊を食べているのか、もうこれは、卵が先か鶏が先か問題と同じ(?)くらいかもしれない。

お肉と野菜の旨味がしっかり溶け込んだスープを捨てずに取っておいて、翌日、塩胡椒と少しのお醤油で味付けして温め、冷ごはん(できれば冷蔵庫で硬くなったご飯)を投入、少し粘りが出るくらいまで温めてから、たっぷりの溶き卵とネギで仕上げ。

これで十分に満足な朝ごはんになる。

前の日に宿題を終わらせていない娘は、慌てて朝ごはん時に、雑炊を食べながら宿題をしていた。

昨日のうちにしっかり宿題を終わらせておけばいいのに、と思いつつも、私の宿題ではないのでそこは放置。

娘は自分がやらなくてはいけない事とやらなくてもいい事の区切りや、タイムマネジメント能力はあるようなので、忘れものと部屋の汚さにさえ目をつぶれば大体のことは大丈夫な方だ。

娘もいつか大人になって家を出た時に、1人暮らし先の部屋で、またはシェアハウスのルームメイト達と、もしかしたらキャンプでのアウトドアクッキングで……お鍋を作る時にこの、水炊きを作ってくれるかな。これが一番美味しい、うちのお鍋はこれだって。

そんな事を思いながら、パジャマ姿で宿題をする娘を見守った。

久しぶりのマルシェへの出店

null

さて農業の方はというと、今回は農作業ではなくマルシェ出店について。

このご時世で春先から多くのイベントが流れてしまっていたけれど、少しずつ富山でも開催の流れになってきた。 地元の黒部で関わっているマルシェも、半年ぶりくらいに再開。

まだ開始時刻前から多くの方が行列に並んで、お目当ての出店者さんの商品を買い求める姿もあった。

私たちも久しぶりにマルシェの雰囲気を楽しんだ。

相変わらずお米はさっぱり売れないけれど(笑)、座っている暇もないくらい、次から次へとお客様や知人・友人が遊びに来てくれた。

マルシェはやっぱり、人と出会う場所だなぁとつくづく思う。

ネットで何でも買える便利な時代だけれど、人と会って人と目を合わせて人とお話をしてという行為は、人としてとても大事な生活行動なんだと思う。

今は東京のマルシェやファーマーズマーケットには行きづらい状況だけれど、こうして地元で出店して、また来年こそは東京出店できたらな、と思います!


濱田律子

愛知県生まれ、千葉(スイカの名産地・富里)育ち。大学卒業後カナダへ。バンクーバー、カムループス、バンフと移り住み、10年間現地の旅行会社で働く。カナダの永住権を取得したにも係らず、見ず知らずの富山県黒部市で農家に転身。米作りをしながら、旦那とココ(娘)と3人で日々の暮らしを楽しんでいます。濱田ファームのHPはこちらから。

pin はてなブックマーク facebook Twitter LINE
大特集・連載
大特集・連載