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「歯石取り」ってどんなことをするの? 痛みやメリット、理想の頻度は?自分でもできる?【オトナのための歯科相談室#13】

歯科医院で定期的に歯石を取ってもらっていますか? 出血して不安になったことはないでしょうか? 今回も、地域密着型の歯科医院の院長として、お子さんからご高齢の方まで、歯の健康管理と治療を行ってきた歯科医の山本伸彦先生による大人の歯科相談室を開設! 連載13回目は、「歯石取り」について教えていただきました。

歯石取りってどんなことするの?歯石を取るメリットは?

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歯石とは、プラーク(歯垢、細菌のかたまり)にミネラルが付着して石のように硬くなったもの。歯石は歯磨きでは落ちないため、歯科医院で除去してもらう必要があります。

「歯石ができやすい場所は、唾液腺の出口がある下の前歯の裏側や上の奥歯の外側。これらの場所は、唾液中のカルシウムやリンが歯垢と結合しやすく、石灰化して歯石になりやすい傾向があります」と話すのは歯科医の山本伸彦先生。

歯石取りには、歯肉縁上の歯石やバイオフィルム(※1)を除去する「スケーリング」と、歯周ポケット内部の歯石や歯根表面の汚染されたセメント質を除去し、歯根面をツルツルにする「ルートプレーニング」の2種類があります。歯科衛生士が行うのは、基本的に「スケーリング」まで。より高度な技術を要する「ルートプレーニング」は歯科医が行います。

「わかりやすく言うと、歯石取りは海のテトラポッドについている貝みたいなものをメリッと剥がすようなイメージ。器具を使って根の表面を研いで潤沢化している感じです。歯の表面にこびりついてかたくなった汚れを、超音波スケーラーという機械を使って振動で砕いていく場合もあれば、頑固なものは手用スケーラーという器具を使い、手で除去する場合もあります」(以下「」内、山本先生)

機械を使って行う歯のクリーニングには、「PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)」もありますが、山本先生によると、PMTCは歯の表面が滑沢になるよう研磨するのが目的で、歯石取りとは別物とのこと。歯石を取る主なメリットは以下の3つが挙げられます。

(1)細菌類の棲家を奪うことができる

(2)障害物がなくなるため歯磨きがしやすくなる

(3)口の中の細菌叢(さいきんそう)のバランスをいい状態に保ちやすくなる

「テトラポッドには小魚がいっぱい棲み着きますが、人間の口の中でそういう環境ができると棲み着くのは、歯周病関連細菌あるいは虫歯に関係する細菌などの微生物です。例えば、歯周病関連細菌が棲み着くと、食べかすやプラークを分解して毒素をつくり出すため、防御反応で破骨細胞が活性化され、歯周ポケットはどんどん深くなってしまいます。定期的に歯石を取って、本来の歯の形にきれいに戻しましょう」

※1・・・歯周病菌などの微生物やその代謝物の集合体。プラーク(歯垢)ともよばれる

歯石取りで出血するのは大丈夫?歯石を取るデメリットは?

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歯石取りをしてもらって出血したことはありませんか? 歯石取りをすると、歯や歯茎が傷ついてしまうのではないでしょうか。

「先ほど話したとおり、歯石には微生物が集まっており、中で毒素を生み出します。すると体は敵がいるぞと反応して血管を拡張させて血流が増加するため、歯茎が赤く腫れてくるわけです。これが炎症の初期の状態。こうなると、歯石取りだけでなく歯磨きでも出血しやすくなります」

痛みがないのに歯磨きで血がジワッと出てくるようなら、歯茎が炎症を起こしている可能性があります。まずは、歯医者の予約をして、出血を怖がらずに、より時間をかけて丁寧にブラッシングするように心がけましょう。

「歯科医が行う本格的な歯石取りは、外科的なものに近い処置を行うため、出血や痛みなどを伴うデメリットはあります。ですが、削るというよりも汚れを弾いていく感じですし、結構シャープな刃物を使うため、適切な手技をすれば、歯や根っこが削れることはありません。

むしろ、下の前歯の裏側の歯石を取ったら、舌で触った感じも変わって気持ちよさの方が得られますし、その形を意識してブラッシングもできるようになるのでおすすめですよ」

歯石取りの頻度は何カ月ごとがベスト?費用は?

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歯石取りは自分でできるものではないとのことですが、何カ月ごとに除去してもらうのがいいのでしょうか。毎月はやり過ぎでしょうか?

「人によって差はありますが、できれば3カ月〜6カ月の頻度で行うのがいいと思います。ある程度のセルフメンテナンスができる人は、半年〜1年に1回でもいいかもしれません。ただし、自分で歯石を取るのは、歯や歯茎を傷つけてしまううえ、きちんと取り切れるわけでもないですから、やめていただきたいですね」

では、歯科医院に歯石取りをお願いしたいときは、どのように問い合わせればいいのでしょうか?

「歯石がついているかどうかは自分ではわかりにくく、歯石取りが必要かどうかは、医師もしくは歯科衛生士が判断します。予約をする際は『歯石を取ってください』というよりも、『最近、出血が気になります』とか『歯茎が腫れているようなので診てほしい』と問い合わせてみるのがいいでしょう」

歯石取りの費用は、歯科医院によってさまざま。保険診療として臨むのであれば、何回かの通院が必要になりますが、1回3,000円いかないくらい。メンテナンスとして行う場合は、自費で1回1万2,000〜2万円ほどかかることもあるようです。

 

歯石を放置すると表面に汚れがどんどん付着するため、歯周病菌の温床となり、歯茎の炎症を悪化させ、歯茎を退縮させる原因となります。定期的にチェックして、除去してもらうようにしましょう! 次回は、親知らずについてご紹介いたします。

 

取材・文/清瀧流美

山本伸彦
山本伸彦

やまもと歯科 院長/デンタルネットワーク株式会社代表取締役/歯科医

都立目黒高校卒業後、レストラン勤務を経て、明海大学歯学部入学。1995年、同大学卒業。歯科医師免許を取得。南青山友歯会ユーデンタルクリニック勤務を経て、1999年、やまもと歯科(東京都)開設。2018年、デンタルネットワーク株式会社設立。歯科専門情報サイト「Smile Teeth」を立ち上げ、多くの人に歯科医療に関する正確な情報を提供している。

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