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【いまさら聞けないグルテンフリーの基礎知識】グルテン悪者説ってホント?管理栄養士が解説します

最近耳にする機会が増えた「グルテンフリー」。取り入れたら体調がよくなったという感想のある人もいるようですが、結局グルテンフリーってなんだっけ? どんな意味があるの? という点について、管理栄養士の宮崎 奈津季さんが基本から解説してくれます!

グルテンフリーって?

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こんにちは、管理栄養士の宮崎 奈津季です。今回のテーマ「グルテンフリー」について、まずは用語を解説していきましょう。

小麦に含まれるたんぱく質「グルテン」

「グルテン」とは、小麦に含まれるたんぱく質である「グルテニン」と「グリアジン」が結合したものです。グルテンには弾力や粘り気を与える性質があり、パンやパスタなどのもちもちとした食感を生み出すのに影響を与えています。小麦以外に、大麦やライ麦などの穀物にも含まれています。

「グルテンフリー」はもともと食事療法

「グルテンフリー」とは、グルテンを一定のレベルで摂取しないという意味で、グルテンを含む食品をとらない食生活のことです。

もともとグルテンフリーは、自己免疫疾患の一つである「セリアック病」の患者に対して生まれた食事療法です。セリアック病の患者さんは、グルテンを摂取すると免疫反応が正常に機能しなくなり、腸に炎症が起こります。その結果、腹痛や下痢などの症状が出るとされています。

欧米では有病率が1%程度という報告がありそれほど珍しい病気ではありませんが、日本では極めてまれだといわれている病気です。

小麦アレルギーとの違い

グルテンフリーと混同されがちなのが、「小麦アレルギー」。実際は完全に同じものではないため、注意が必要です。

小麦アレルギーとは食物アレルギーの一つで、小麦に含まれる特定のたんぱく質に体が過剰に反応して、皮膚や胃腸などに症状が起きます。

グルテンフリーの食品は、小麦アレルギーの方でも食べられると思われているかもしれませんが、必ずしもそうではありません。小麦アレルギーを誘因するたんぱく質は、グルテン以外にも存在しているからです。

食物アレルギーは、人によってどの範囲まで摂取できるかが異なるため、個別に確認が必要になります。

「グルテンフリー」はなぜ流行しているの?

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グルテンって体に悪いの?なぜそう言われがち?

グルテンフリーが注目されたのは、有名なアスリートやセレブの発信が影響しているといわれています。グルテンフリーを実践したことで、「体の調子がよくなった」「痩せることができた」といった発信が増え、なんとなくグルテンが悪いものだという認識が広まったのではないかと考えられます。

しかし、食品安全委員会ではセリアック病以外で、グルテンによる健康への影響を示唆するには十分な資料がないと報告しています。

「なんとなく健康によさそう」といった認識で、グルテンフリーな食生活を実践しても、期待する結果を手に入れるのはなかなか難しいのではないでしょうか。

バランスのよい食生活がベスト!

特定の成分を極端に排除することは、逆に何かの摂取量を極端に増やすことにつながりかねません。そうではなく、規則正しくバランスのとれた食事をとるにはどうしたらよいかを考えることが大切です。いろんな食品を食卓に取り入れながら、食べるのを楽しむことができたらとてもいいですね。

 

【参考文献】

・小倉有子、庄林愛「過剰なグルテン除去が与える影響について」安田女子大学紀要 ,2021,vol49,p297-304
・食品安全委員会「令和2年度食品安全委員会が自ら行う 食品健康影響評価の案件候補について(案)」https://www.fsc.go.jp/fsciis/attachedFile/download?retrievalId=kai20210204ki1&fileId=110
(閲覧日:2025年2月10日)
・農林水産省「組織におけるグルテンフリー表示に係る調査報告書」https://www.maff.go.jp/j/seisan/keikaku/komeko/attach/pdf/index-63.pdf(閲覧日:2025年2月10日)

宮崎 奈津季 
宮崎 奈津季 

管理栄養士・薬膳コーディネーター。介護食品メーカーで営業を2年間従事した後、フリーランスの管理栄養士に。料理動画撮影やレシピ開発、商品開発、ダイエットアプリの監修、栄養価計算などの経験あり。 現在は、特定保健指導、記事執筆・監修をメインに活動中。

HP:https://www.mnatsuki.com/

X:https://twitter.com/NatsukiMiyazak1

※「崎」は正式には立つ崎(たつさき)です

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