子育て世代の「暮らしのくふう」を支えるWEBメディア

「老眼」ってどんな状態?ならない人もいる?「老眼の基礎知識」を眼科専門医に聞きました

『kufura』世代の女性が気になり始める「老眼」。なんとなく“年齢が上がるとなるもの”くらいの意識しかなく、分からないことも多いのではないでしょうか。そこでシリーズ2回目となる今回は、眼科専門医の平松類先生に、老眼の仕組みや対処法について伺いました。Q&A方式で紹介していきます!

Q. 「老眼」はどういう状態?

null
Adobe Stock より、編集部で作成

A. 加齢による老化や偏った使い過ぎでピントを変える力が衰えた状態

「“老眼”とは、目のピント調整を担う毛様体筋の働きと、レンズの役割を果たす水晶体の柔らかさが失われ、手元を見るときにピントが合わせにくくなる状態を指します。つまり、遠くは見えるのに手元などの近くが見えにくくなるのです」(以下「」内、平松類医師)

その原因は加齢による老化もありますが、スマホなど近くのものばかりを見て目を酷使するなど偏った使い過ぎも原因となるよう。

「最近では20代30代でもスマホによる目の酷使が原因の“スマホ老眼”になる人も増えてきていますが、一般的な老眼は、加齢による生理現象のひとつ。老化は“衰え”ではなく、自然な“変化”と捉え、対応していくことが大切です」

Q. 何才からなる? 一生ならない、という人もいるの?

null

A. 老眼を自覚する基本年齢は45歳。誰もが70代までになる

シリーズ1回目で、老眼にまつわるリアルボイスを調査したところ、「50歳」で老眼を自覚したという人が多数でした。しかし一般的には、老眼を自覚する基本年齢は「45歳」なのだとか。

「ピント調整力は20代から落ち始め、70代以降は進行しなくなります。そして、見えづらくなったと最も実感しやすいのが40代、というわけです」

いつ老眼になるかという質問は、いつしわができる? と聞くのと同じで、個人差はあるものの誰もがいつかは必ずなるのだそう。

「近視の人はなりにくいなどと言われますが、それも関係ありません」

Q. 老眼かどうかがわかるセルフチェック法はある?

null

A. 物がはっきり見える“最も近い距離”を測ってみる

「腕をまっすぐに伸ばした状態で本を持ち(指を立てるのでもOK)、ゆっくりと顔に近づけ、焦点が合わなくなった場所と目の距離(近点距離)を測ります。眼鏡やコンタクトレンズはつけたままで行いましょう。30cm以上だったら老眼が疑われます

個人差はあるものの、近点距離は10歳で7cm、30歳で14cm、40歳で22cm、50歳で40cm、60歳で100cm……というように加齢とともに延びていくといいます。

シリーズ1回目のリアルボイス調査によると、
「PCやスマホ、本が見づらくなった」(53歳女性/パート)
という意見がよく見られ、手元が見えにくくなることで老眼だと気づく人が多いようです。スマホと目の距離は平均約20cmですから、老眼になったのかどうかチェックするのに、スマホはちょうどいいといえます。

Q. 老眼の進行は止められる?

null

A. 改善はできないが、進行は遅らせることができる

「老眼は加齢による自然な変化でもありますが、酷使によるところも大きいので、生活習慣を改善したり、エクササイズで進行を遅らせることはできます

おすすめのエクササイズが、ピント調整機能を回復させる『毛様体筋ストレッチ』

「手元を見すぎると、目のピント調整を担う毛様体筋が緊張しすぎて硬くなり、ピントを合わせる働きがスムーズに行われなくなります。そこで、意識的に近くと遠くを交互に見ることで、ピントを調整する力を回復させられます。

やり方は簡単。片手を握って指を立て、爪の部分を目から30㎝ほど離してそこにピントを合わせます(眼鏡やコンタクトレンズはしたままでOK)。次に指の爪から視線を外し、2m以上先のもの(時計、カレンダー、観葉植物などなんでも)にピントを合わせます。

ポイントはただ視線を移すのではなく、遠近ともにしっかりとピントを合わせること。これを毎日朝晩、交互に5回ずつ繰り返すのがおすすめ。ただし、疲れたら無理することはありません」

(1)片手を握り親指を立て、親指の爪が目から30cmの距離になるようにする。親指の爪にピンとを合わせる。
※『目の老化を自分で防ぐ!』(著・平松類/内外出版社)を参考に編集部で作成。
(2)(1)の状態のまま、視線だけを2m先の何か(花瓶やぬいぐるみなど)にピンとを合わせる。(1)と(2)を交互に5回ずつ繰り返して1セット。1日に何セットやってもよいが、疲れたら無理せずにやめること。

また、下記の習慣をひとつでも多く守ることも大切だそう。やれることから始めてみたいですね。

□スマホやタブレットは1日4時間以上使わない
□寝転がってスマホを見ない
□2年に1回は眼科で視力検査や眼鏡の度数チェック、眼底検査をする
□見えづらいまま放置せず、老眼鏡や遠近両用眼鏡を活用する
□外出するなどしてなるべく遠くを見る時間を増やす
□室内にいるときは、1時間に1回、2~6m先を20~30秒眺めるようにする
□夏の晴れた日はサングラスをかける
□洗眼液を多用しない
□目をこすらない
□目を押してマッサージをしない
□うつ伏せで寝ない
□こまめな水分補給は必要だが、眼圧が上がらないよう一気飲みはしない(1回200㎖が目安)

意識的に遠くを見る時間を持つのも大事。

次回も引き続き、眼科専門医に話を聞き、「老眼鏡」にまつわる基礎知識を紹介します。


【取材協力】

二本松眼科病院副院長・平松類さん

眼科専門医・医学博士。福島県郡山市今泉西病院、昭和大学病院勤務、山形県米沢市三友堂病院眼科科長、彩の国東大宮メディカルセンター眼科部長を経て、現在は二本松眼科病院 副院長。Youtube登録者25万人以上の「眼科医平松類チャンネル」をはじめ、各種テレビメディアにて目の健康情報を提供する。主な著書に『1日3分見るだけでぐんぐん目がよくなる!ガボール・アイ』(SBクリエイティブ)、『目の老化を自分で防ぐ!』(内外出版社)など多数。

嶋田久美子
嶋田久美子

エディター/ライター。大学卒業後、出版社に勤務し、その後、フリーの記者として主に週刊誌の編集・執筆に携わる。歴史や美術をはじめ、マネー・車・健康・ペット・スピリチュアル・夫婦関係・シニアライフスタイルといった多岐にわたる女性向け実用情報を手掛ける。1児を持つシングルマザーで、趣味は漫画・アニメ鑑賞、神社巡り。

pin はてなブックマーク facebook Twitter LINE
大特集・連載
大特集・連載