「救命率」が格段に高まるAED!でも、使用率はわずか4.3%
null今回の取材でまず驚いたのが、AEDの「効果」と「使用率」について。
「AEDは、救命において非常に大きな役割を発揮します。ですが、AEDが使用された救命事例は、目撃された“心停止”の総数のわずか4.3%(2022年)に留まっているんです」(以下「」内、『日本光電』小関晶子さん)
なんと! 目撃された「心停止」のうち、AEDの使用率はわずか4.3%だといいます。
一般市民がAEDで心肺蘇生等を実施した場合の「救命率」(=1カ月後の生存率)は50.3%で、実際にAEDを正しく使用できれば、約半数の方が生存できている、ということ。
しかし、病院へ搬送される前に一般市民が心肺蘇生等を一切行わなかった場合、救命率はなんとたったの6.6%。まさに生死を分ける結果となっています。
【AED・心肺蘇生による救命率の変化】(心原性心停止を目撃された2万8,834例中)
119番通報・・・救命率 6.6%/生存者の社会復帰割合 49%
+心肺蘇生術・・・救命率 9.9%/生存者の社会復帰割合 63%
+AEDショック・・・救命率 50.3%/生存者の社会復帰割合 85%
(※総務省消防庁2022年全国集計のデータより)
発見や通報に時間がかかったり、AEDが近くになかったりなど、やむにやまれぬ様々な事情もあるでしょう。ですが「もし残りの95.7%のケースの一部だけでも、AEDが使われていたなら……」そう想像せずにはいられません。
そんなAEDですが、電源をONにすると使い方のアナウンスが流れる仕組みになっており、けして難しいものではないそう。
実際に自分がAEDを使うことになったら? そうイメージしながら、AED使用のポイントを見ていきましょう。
「スポ少ママパパ」は要注意!野球やサッカーでも心停止は起こっています!
nullそもそも、AEDを必要とするのはどんなケースなのでしょうか?
「AEDが必要になる“心停止”は、急性心筋梗塞や、強い圧迫、誤飲・溺れるなどの呼吸不全といった様々な原因で発生します。
例えば子どもの場合、野球やサッカー、バスケットなどの球技の際に、ボールが胸部に強くあたることで“心室細動”が発生し、それだけで、心停止を起こすことがあります。これは身体が未発達な子どもだけでなく、大人の場合でも同様です。
また、野球でバットが胸にあたるなど、ボール以外の原因で心停止が起きるケースも発生しています。
ですから、特にスポーツをやっているお子さんやご家族、コーチの方にとって、AEDの使用方法や救命活動についての知識を持っておくのは、とても大切なことだと思います」
さらにスポーツ以外でも、日常生活のふとした瞬間にも心停止が起こる可能性は潜んでいます。
「例えばお子さんですと、
・お風呂でおぼれる
・重度の熱中症
・車で事故が起こった際にシートベルトやチャイルドシートを装着していない
といったシチュエーションでも、心停止になる危険性があります」
救命活動は個人ではなくチームで!まずは助けを呼ぶこと
null心停止が起きたとき、命を救えるかどうかは時間との勝負。でもいざ、目の前で人が倒れたり、そういう現場に遭遇した場合、「これは心停止?」「AEDが必要な状態?」といった判断ができるのか……不安になってしまいます。
「救命活動は個人ではなく、チームで行うのが基本です。実際にそういったケースに遭遇した場合、近くに人がいる環境なら、まずは周囲に助けを求めましょう。あわせて119番への通報を。119番では電話口から指示を仰ぐこともできます。
周囲に助けを求めたら、医療関係者の人がいるかもしれませんし、力になってくれる人がいれば、“個人戦”ではなく“チーム戦”になります」
ひとりだと対応に躊躇しますが、たしかに周りの人と協力すれば行動できそうです。
小関さんに教えていただいた救助の手順がこちら。いざというときに実践できるよう、しっかり頭に入れておきたいですね。
【人命救助のステップ】
1:倒れている人も、自分も、安全な場所を確保する / 周囲に人がいれば声をかけ、チームを作る
2:「119番」通報 / AEDを探す
→AEDの場所は、駅や大きなビルなどのほか、携帯アプリ(日本全国AEDマップ)でも探せる。
3:心臓マッサージ(胸骨圧迫)をなるべく早くスタート
→胸やおなかの動きを見て呼吸がない場合、すぐに心臓マッサージをスタート、AEDが届くまで続ける。(呼吸があるか判断がつかない場合も、心臓マッサージを開始してよい。)
心臓マッサージ:胸が約5㎝沈む程度の強さで、1秒に2回弱ほどのテンポ(1分間に100回~120回のテンポ)で押し続ける。「アンパンマンのマーチ」と同じくらいの速さ。
(※技術と意思があれば人工呼吸も。その際は、心臓マッサージ30回と人工呼吸2回を交互に繰り返す。)
4:AEDが届いたら電源を入れ音声ガイドの指示どおりに
→電気を流す必要があるかどうかは、AEDが倒れている人の心電図を解析して判断してくれるので、「本当は必要ないのに“間違えて”使ってしまったら?」という心配は不要です。
ちなみに、AEDは対象が子どもでも使えるのでしょうか?
「はい、使えます。未就学児には付属されている未就学児用パッドや未就学児用モードを使用します。
切り換えがない機種の場合、小学生~大人用パッドを使用してください。その場合は、2枚のパッドが触れ合うことがないように注意が必要です」
女性の応急手当を男性が行うことに抵抗感がある……という意見もあります。
「命を左右する状況なので、とにかく1秒でも早く応急手当をすることが最優先です。AEDについても、適切に使わないと、助けられるはずの命も救えなくなってしまいます。
ただ、AEDのパッドは胸の素肌に貼るので、周囲に女性がいれば代わってもらったり、人目にさらされないようにするなど、(スピードを優先しつつ)可能な範囲で心遣いをしたいところです。そういった意味でも、周囲に声をかけチームで対応したいですね」
活用したい「アプリ」や「付録」も!AEDをもっと身近に
null「皆さんは、普段よく足を運ぶ場所のどこにAEDがあるか、ご存じですか?」
今回の取材の際、小関さんからこのような問いかけがありましたが、筆者も担当編集もすぐに答えることができませんでした。
どこにAEDが設置されているか知る方法として、小関さんのおすすめは、アプリやWEB上でチェックできる「日本全国AEDマップ」。すべてのAEDが登録されているわけではないそうですが、自分の活動圏にあるAEDを手軽に見つけることができます。
「AED自体は広く知られていて、設置数も増加しているのですが、“身近な設置場所は?”と聞くと、知らない人もまだ多いんです。ぜひ、アプリをダウンロードして、身近なAEDを探してみてください。
それに加えて、実物を触ったり、中身を見たりすることも、いざという時の使用のハードルを下げることに繋がります。老若男女問わずもっとAEDに慣れ親しんでもらうことが重要だと感じています」
その一環として、発売中の幼児誌『幼稚園』では、日本光電とのコラボレーションによる付録「おやこで!AEDたいけんセット」が登場しています。
日本光電製の「普及タイプAED」をほぼ同じサイズで忠実に再現した組み立て工作で、胸に貼るパッドや、レバーを引いてフタを開けるギミックまで再現されているんだそう。
「AEDの使用率の低さを少しでも解消するために、小さい頃からAEDをもっと身近に感じて欲しい。今回の付録にはそんな想いが込められています」と小関さん。
なかでも最大のポイントは、本物のAEDで使用されている実際のガイダンスを使用した音声が流れること!
「パッドを青いシートからはがして図のように右胸と左わき腹にはってください」「体から離れてください。点滅ボタンをしっかりと押してください」など、AEDを使うときの手順が音声で流れます。
「音声は付録にあわせて30秒ほどですが、ガイダンスの速度は同じです。実際はもう少し詳しいガイダンスが流れますが、“AEDを使うとこんな音声が流れる”ということを知ってもらうのにぴったりな、リアルな仕上がりになっています。
また、レバーを引くとフタがパカッと開く仕様となっている点もこだわりです。
メーカーや製品にもよりますが、日本光電のAEDではフタが開くとすぐに音声ガイダンスが流れるようになっています。付録ではそこまでは再現できず、音声ボタンを押す仕組みですが、“まずはレバーを引いてフタを開けるんだ”と知ってもらえたら」
〈遊んでいる様子はこちら!音声もしっかり流れます〉
親子で一緒に付録をつくって「救急活動ごっこ」をするなかで、親もAEDの仕組みを一緒に学ぶことができます。
「実際にAEDを使って救急活動をするのは大人ですが、子どもたちに一番伝えたいのは命の大切さ。
AEDを通して親子でコミュニケーションを取りながら、人の命を助けることはもちろん、自分自身の命も大切なんだということを学ぶ手助けになればと考えています」
今年は一般市民のAED使用が認可されてから20年の節目の年。この20年間で、少なくとも8,000人が、その場に居合わせた人のAEDによって救われたんだそう。
自分もしくは大切な家族や友人の命が危険にさらされた時、もしかしたらAEDを使うことで助かるかもしれない。偶然遭遇した状況で、知らない誰かを助けられるかもしれない。皆さんもぜひ、その事実を知ってほしいと思います。
まずは「日本全国AEDマップ」をダウンロードして、最寄り駅や職場、学校など、身近な場所にあるAEDの位置を確認してみませんか? 筆者もさっそくチェックしてみたところ、近所のドラッグストアに設置されていることが分かりました。
いざという時に落ち着いて行動できるよう、日頃から備えていきたいですね。
【取材協力】日本光電
【画像提供】日本光電、AED20周年記念企画実行委員会、日本全国AEDマップ事務局
【撮影協力】JR東日本
【参考】(最終確認日 2024/09/24)
日本光電のAED情報サイト「AEDライフ」 https://www.aed-life.com/
AED20周年記念企画実行委員会「AED20周年記念サイト」 https://aed20th.com/
総務省消防庁「令和5年版 救急・救助の現況」 https://www.soumu.go.jp/main_content/000924645.pdf
総務省消防庁「AEDの基本的な使い方 一般市民向けWEB講習」 https://www.fdma.go.jp/relocation/kyukyukikaku/oukyu/01futsu/05shinpai/01_05_11.h
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『幼稚園』10・11月号(発売中・税込み1390円・小学館)
4・5・6歳の幼児誌『幼稚園』、今回の付録は医療機器メーカー『日本光電』とコラボした「おやこで! AEDたいけんセット」。AEDがどのようなものか、実際に手を動かしながら知ることができ、「身近な場所で、どこにAEDがあるか探してみよう!」など、親子でAEDのことを知るきっかけにもなります。
最新キャラクター情報はもちろん、楽しく学べる知育記事も充実!
(※売り切れになる場合があります。)
東京都出身、千葉県在住。短大の春休みより某編集部のライター見習いになり、気が付いたら2022年にフリーライター歴25年を迎えていた。現在は雑誌『DIME』(小学館)、『LDK』(晋遊舎)などで取材・執筆を行うほか、『kufura』などWEB媒体にも携わる。
執筆ジャンルは、アウトドアや子育てなどさまざま。フードコーディネーターの資格も持つ。