「便秘解消」だけじゃない!食物繊維の働き
nullこんにちは、管理栄養士の宮崎 奈津季です。健康な生活に欠かせない食物繊維ですが、腸の働きを助けるだけでなく様々な作用があります。とり方とあわせてご紹介します。
食物繊維とは?
食物繊維は、炭水化物の一種。人間の消化酵素で消化されない成分です。排便をスムーズにする働きやさまざまな生理作用があり、近年注目されています。食物繊維の種類はいくつかあり、大きく分けると水溶性と不溶性に分けられます。
水溶性食物繊維と不溶性食物繊維
「水溶性食物繊維」は、水に溶ける性質があります。水分を吸収してふくらみ、食べた物の胃の滞留時間を長くする働きがあります。また、吸収に伴う血糖値の上昇がゆるやかになったり、コレステロールの吸収が抑えられ体外に排出されやすくしたりといった効果が期待できます。
果物類、海藻類、葉物野菜などに多く含まれます。
「不溶性食物繊維」は、反対に水に溶けません。摂取することで腸を刺激し、ぜん動運動を促進させます。また、便のかさを増やして排便を促すことで、腸内環境を改善して便秘の予防に役立ちます。
大豆・豆類、きのこ類、根菜類、穀類などに多く含まれます。
近年注目されている「発酵性食物繊維」
食物繊維は消化されずに大腸まで届きますが、一部の種類は大腸で腸内細菌によって発酵・分解されて、短鎖脂肪酸などに代謝されることが近年分かってきました。このような食物繊維は「発酵性食物繊維」と呼ばれることがあり、腸内環境の改善に効果が期待されています。
発酵性食物繊維は、大麦やオーツ麦(オートミール)、バナナ、キウイ、さつまいも、ワカメなどに含まれています。
食物繊維はなぜ必要なの?
食物繊維は、正常な排便を促し腸内環境を整えることで、腸の病気の予防に役立ちます。また、水溶性食物繊維は、血糖値の上昇をゆるやかにしたり、コレステロールの吸収を抑制する働きから、糖尿病や脂質異常症の予防・改善にも効果が期待できます。
食物繊維が不足すると、腸内環境が悪くなり、便のかさが増えないことにより便秘になってしまうことがあります。また、摂取量が少ないと生活習慣病の発症率が高くなることが分かっており、健康面にも影響を及ぼします。
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、生活習慣病予防のための目標量が設定されており、30代・40代女性では1日あたり18g以上となっています。
食物繊維を上手にとるには?
null食物繊維が多い食品
食物繊維は、穀類や野菜、海藻、きのこ類などの植物性食品に主に含まれています。特に、主食として食べることが多い穀類は、1食あたりに食べる量が多いことから大きな供給源となっています。ただし、精白すると含有量は減ってしまうため、食物繊維を積極的にとりたい場合は、白米より玄米や胚芽米、白い食パンよりライ麦パンなどにするのがおすすめです。副菜として野菜や海藻、きのこ類も欠かさずとるように意識しましょう。
食べすぎに注意は必要?
食事で食物繊維をたくさんとることは事実上難しいため、とりすぎることはありません。しかし、サプリメントなどで大量にとると下痢をおこしたり、栄養素の吸収が阻害されるのではないかと考えられています。
また、加工品の中には、食物繊維の一つである難消化性オリゴ糖が添加されているものがあります。このような食品を大量にとると、便がゆるくなることがあるので注意しましょう。まずは、食物繊維が含まれている食品をとることを意識することが大切です。
【参考文献】
・上西一弘「栄養素の通になる第5版、女子栄養大学出版部」(2022)
・飯田薫子、寺本あい「一生役立つ きちんとわかる栄養学」西東社(2019)
・厚生労働省「『日本人の食事摂取基準(2020年版)』策定検討会報告書」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html(閲覧日:2024年7月1日)
管理栄養士・薬膳コーディネーター。介護食品メーカーで営業を2年間従事した後、フリーランスの管理栄養士に。料理動画撮影やレシピ開発、商品開発、ダイエットアプリの監修、栄養価計算などの経験あり。 現在は、特定保健指導、記事執筆・監修をメインに活動中。
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※「崎」は正式には立つ崎(たつさき)です