食生活の乱れは「胃腸の夏バテ」に直結する
暑くて食欲が出ないと冷たい食べ物ばかりになりがちですが、実はこれが夏バテの元になることが多いのです。さっぱりしたもの、冷たいもの、さらさらと入るものばかりを食べ続けると、栄養も偏り、徐々に胃腸が冷えてきます。
胃腸が冷えてくると、消化機能が落ちて食欲がなくなります。そこで「スパイシーなものなら食欲がわくかも」と普段食べないような刺激のあるメニューを選んでしまう人がいるのですが、これがさらに胃腸にダメージを与えることに。
胃腸が荒れて血流が悪くなると、胃痛や下痢を起こし、体に必要な栄養が足りなくなっていきます。胃腸が弱ると体はバテやすくなるので、それがさらなる倦怠感、疲労感という夏バテの症状を引き起こすという悪循環に陥ってしまいます。
倦怠感、食欲不振、下痢…夏バテの症状の解消法
まずは今までの食生活を分析する
胃腸の不調を解消するには、何かを食べて元気になるというよりは、何を食べて不調になったかを分析し、その食生活を改めるのが一番効果的。ここ1カ月の食事を振り返ってみましょう。
何が多すぎたのか、何が足りなかったかを考える
倦怠感がいつまでも抜けない人は、そうめんやうどんなど炭水化物ばかり摂っていませんでしたか? 炭水化物ばかりの食事にはタンパク質やビタミン、ミネラルが不足しているので、肉や魚、野菜をしっかり食べるメニューに戻しましょう。
食欲不振という人は脂っこいものやスパイスの効いたものばかり食べていませんでしたか? もしそうなら食事は消化がよく、薄味のものにして胃腸を休めましょう。
ずっと下痢気味という人はアイスなどの冷たいものをいつもより多く摂っていませんでしたか? 胃腸が冷え切っているかもしれないので、飲み物を温かい物に変え、しばらくはアイス禁止にしてみましょう。
栄養バランスを整える
自分の胃腸の不調の原因は、実は自分が一番よくわかるものです。「原因はあれかな……」と思い当たることを改めていくだけで、夏バテの症状はかなり和らげることができます。栄養バランスのよい食事と良く言われますが、これは炭水化物、タンパク質、ビタミン、ミネラルがきちんと含まれているものを指します。それらが含まれた食事も、できるだけ温かく、消化が良いものにするとより胃腸をいたわることができます。
忙しく、全ての栄養素が入った食事を毎食揃えるのは難しいという場合は、「カロリーメイト」など、栄養をバランスよく含んだもので一食を代用しても。
夏バテを促進するものを食べない
食べ物の中には、栄養バランスを崩してしまうものもあります。中でも注意したいのがインスタント食品です。インスタント食品の中には食品添加物のリン酸塩を含んでいるものがあります。リンそのものは体に必要な成分ですが、リン酸塩は摂りすぎると腎臓への負担、カルシウムの排出、免疫力の低下を招くことがあるので、できるだけ避けたい成分。
忙しい時はインスタント食品をうまく利用するのも大いにありですが、買う時には成分表示のチェックを。夏バテによる胃腸の疲れを悪化させないためにも、リン酸塩が含まれているものは避けるのが◎です。
夏バテの時に頼りたいサプリや漢方薬とは
夏バテで胃腸が疲れているときは、ドリンク剤などに頼らないことも大切です。栄養ドリンクは、飲むと一時的には元気になるけれど、その後どっと疲れてしまうことがあるので、体が弱っている時には飲まないようにしましょう。
また食事で摂りにくい栄養素を補いたい時はサプリも併用してみましょう。自分に不足しているビタミンを一つで補えるマルチビタミンや、ビタミンB群のサプリがおすすめです。特にビタミンB1は糖質を代謝、ビタミンB2は新陳代謝の促進、ビタミンB6はタンパク質をエネルギーに変える、という働きがあるので、ビタミンB群のサプリは夏バテに効果的です。
漢方薬で胃腸の働きを整えてくれるものの中には「補中益気湯(ホチュウエッキトウ)」があります。この漢方薬は、夏バテの症状に多い、だるさが取れない時にも使われる漢方薬です。「人参養栄湯(ニンジンヨウエイトウ)」も栄養状態の改善に使われる漢方薬。こちらは血行をよくする働きがあるので、冷えも感じる人向けです。
副作用が比較的少ないと言われる漢方薬ですが、ドラッグストアなどで購入する場合は、必ず薬剤師さんに相談を。体に合わないものを服用するとかえってマイナスの効果になってしまいます。
夏バテで吐き気が起きたら要注意
夏バテの症状の一つに吐き気があります。辛い症状をできるだけ早く治すために、つい吐き気を止める薬を飲みたくなりますが、吐き気が起きている原因によって飲むべき薬も治療法も変わってくるので、自己判断で薬を飲まないようにしてください。夏バテの吐き気と間違えやすいのは、主に以下の4つです。
熱中症
吐き気を感じる理由はさまざまですが、中でも最も緊急に対処が必要なのは熱中症です。スポーツドリンクなど飲み物を飲む気にならない、気持ちが悪い、めまいがするという場合は、熱中症の可能性があります。早めに病院を受診してください。
胃腸の疲れ
食べ過ぎ、飲み過ぎ、偏った食生活が続くと胃腸が疲れて不調を引き起こします。吐き気だけでなく胃痛や下痢などが起きることも。消化の良いもの、温かいものを摂るようにして胃腸を休める必要があります。
自律神経の乱れ
室内外の激しい温度差で体力を消耗したり、ストレスがたまると自律神経はバランスを崩しやすくなります。心にも体にも不調が出るので、人によって出る症状は違いますが、吐き気の他に倦怠感を伴うことも。
夏風邪
ウイルス性の風邪の時にも吐き気を伴うことがあります。咳や熱などの症状があれば夏風邪が原因ということも考えられます。
生活習慣も見直して早めに夏バテを解消
食生活が乱れたことで起きた夏バテは、その食生活を正しいものに戻すだけでなく、食生活が乱れた原因を解消することも重要です。
忙しくてインスタント食品ばかりを選んでいたり、シャワーで済ませてばかりできちんと入浴していなかったり、寝苦しくて睡眠時間が減っているなど、思い当たることがあれば、それらも改善してしっかり夏バテを解消しましょう。
構成/小野塚美佐
【取材協力・監修】
板橋聖子
東京女子医科大学医学部卒。東京女子医科大学病院にて外科医として勤務。出産と子育てを経て、現在は東京女子医科大学予防学科兼女性科(非常勤講師)と「優ウィメンズクリニック」(http://www.you-wcl.com)にて勤務中。病気の相談はもちろん、女性特有の悩みや子育て、仕事など、患者のバックグラウンドをよく理解した上での診療を行っている。優ウィメンズクリニックは、スタッフは全員が女性の、最新設備が整った女性専用クリニック。