どうして夏は「夏バテ」してしまうのか
「夏バテ」とよくいいますが、実はこの夏バテには明確な定義はありません。日本の夏は高温多湿。この暑さのせいで、正常だった体の働きがうまく機能しなくなることから体の不調が起きます。
自分の夏バテの症状は何が原因なのかを正確に判断するのは難しいですが、特に今年は40℃を超える日が続いたほどの酷暑。朝起きたときに熟睡感がない、夜中に何度も目が覚めてしまう、寝つきが悪いと言う場合は、「睡眠不足による夏バテ」の疑いありです。
睡眠不足から起きる様々な身体の不調
睡眠が足りないと、まず起こるのが倦怠感、身体のだるさです。眠ったはずなのに目覚めがスッキリしない……。それに加えて食欲不振、下痢や便秘、立ちくらみ、むくみ、イライラした気持ちになる人も。
会社についても頭がはっきりせず、ランチ後に猛烈な眠気に襲われて仕事にならなかったり。
今年は特に猛暑だったので、多かれ少なかれ睡眠不足になっている人は多いです。こんな症状が出たら、たっぷりぐっすり眠るというのが一番のクスリですが、簡単に熟睡できなかったがゆえに今夏バテを起こしているわけで……。ぐっすり眠るために、寝るときに工夫をしてみましょう。
なかなか眠れない…そんな時に試してほしい快眠方法
シャワーで済ませずお風呂に入る
あまりの暑さにお湯に浸かる気が起きず、毎日シャワーで済ませている人が多いのでは。きちんと湯船に浸かると、昼間に冷房で冷え切った体が温まり、滞りがちだった血流もよくなりますし、1日の緊張を解いてリラックスできるという効果もあります。
毎日とまではいかなくても、最近よく眠れていないな、疲れが取れていないなと感じた時はしっかりお風呂を沸かして湯船に浸かるようにしてみてください。
ベッドルームの室温を朝まで快適な温度に保つ
寝不足の大きな原因の一つに「寝苦しさ」があります。エアコンをつけたままにする罪悪感や、寒くなって風邪をひくかもと言う心配もあり、ついつい夜中に切れるようにタイマーを設定していませんか。
入眠してからの3時間でしっかり眠ることができれば、人は熟睡できたと感じることができるといわれていますので、眠りにつくときに心地よい温度にしておくことはとても大切です。
ですが、今年の夏は夜中や夜明けでも30度近い熱帯夜が多く、朝までのタイマーをかけておかないと、夜中に暑さで目を覚ましてしまうことに。
これではタイマーの意味がありません。貴重な睡眠を途切れさせてしまうのは、とてももったいないので、エアコンは朝まで気持ちよく眠れる温度設定にすることをおすすめします。
エアコンの設定温度は、以前から28度がベストといわれていましたが、実はこの温度には根拠はありませんでした。実際には26〜27度くらいが快適に眠れる温度とも。体感温度や部屋の冷え方には差があるので、寒くもなく暑くもなく気持ちよく眠れる、自分のベストな温度を見つけましょう。
頭を冷やす
とはいえ、やはりクーラーをずっとつけておくのは不安という方や、クーラー独特の冷気が苦手という方もいます。そういう方は、頭を冷やして眠りましょう。頭がひんやりしていれば、体温が上がり、寝苦しくなるのは避けられます。一番簡単なのは「アイスノン」などの冷却枕。しっかり冷やしたものにタオルを巻いて使いましょう。ただし冷やすのは頭だけ。首まで冷やしてしまうと肩こりの原因になってしまうので、首に当たらない位置で使用します。
眠りの邪魔になることを直前にやらない
すでによくいわれていることではありますが、暗い部屋のベッドの中でスマホを見るのは、良い眠りを邪魔にする最も良くない習慣です。ブルーライトは目に見える光の中でも一番波長が短く、目を疲れさせる光です。目が疲れるだけでなく体内時計を狂わせ、睡眠のリズムも狂わせてしまうという報告もあります。つまりベッドの中でスマホを見る=自分の睡眠の質を下げるということに。
忙しいkufura世代の方の中には、このひと時が一人で一番リラックスできる時間という方もいると思いますが、スマホを見るなら、電気をつけた明るい部屋にしましょう。特に睡眠不足で夏バテしている間は、スマホはベッドに持ち込まないと決めてみてください。
少し見るくらい大した違いはないと思っていても、それが習慣になってしまうと、延々とスマホを見て寝そびれてしまい、貴重な睡眠時間をさらに短くしてしまうことになります。寝つきが悪い方は、思い切って机にスマホを置いて寝るようにしてみてください。あっけないほどすぐ眠りにすぐ落ちることに驚きます。まずは2日間だけ、と決めて試してみてください。
またスマホほどの悪影響はないものの、直前にテレビを見たり、満腹になるまで食べてしまうと眠りにはつきにくくなります。どちらも2時間前までに終えておくのがベストです。
快眠を助ける栄養素が含まれる食べ物やサプリとは?
食べたら眠くなる……と言うわけではありませんが、質の良い睡眠を作るといわれる成分はあります。そういうものを積極的に摂ることも良い眠りに繋がります。
トリプトファン
脳で作られ、気持ちを安定させる働きを持つのがセロトニンです。このセロトニンを作るときに必要なのが、必須アミノ酸の一つでるトリプトファンです。トリプトファンが多く含まれるのは、味噌、豆腐などの大豆製品、牛乳やチーズ、ヨーグルトなどの乳製品。 魚や肉、アボカド、バナナにも含まれています。
ビタミンB6
唐辛子やニンニク、生姜、赤身魚、肉などに含まれています。
グリシン
アミノ酸の一つで睡眠のリズムを整えたり、眠りにつきやすくなる働きがあるといわれています。ゼラチンや魚のカツオ、大豆製品に含まれていますが、必要量を食べ物だけから摂取するのは大変なので、サプリから摂ることが多い成分です。
ギャバ
アミノ酸の一つでリラックス効果や抗ストレス効果があるといわれています。発芽玄米に最も多く含まれ、トマトやアスパラガス、漬物などの発酵食品にも含まれています。最近はこのギャバを含むチョコレートなども開発されているので、おやつをギャバ入りのものに切り替えてみても良いですね。
それでも眠れなかったら…本格的な不眠症になる前に対処しよう
生活習慣や食習慣を見直したけれど、やっぱり眠れないという場合もあります。睡眠不足が続いて、眠れない習慣がついてしまうと、それを解消するのはなかなか難しいものです。
そんな時はやはり病院に行き、医師に相談をするのが一番です。たかが夏バテ、そのうちに治ると無理をして本格的な睡眠障害まで至ってしまうと、元に戻すのに時間がかかります。
診察を受け、必要であれば、睡眠導入剤を一定期間使用することで、乱れていた睡眠のリズムは正常に戻すことができます。
眠る薬というと、依存してしまうのではないか、朝起きられないのではないかという心配から敬遠する人が多いですが、今の睡眠導入剤は強さも種類もたくさんあり、自分の症状に合った薬を処方してもらうことができます。
自分のことはもちろん、家族のことも仕事のこともおろそかにできないのがkufura世代。
辛い体調が続くときは、そのまま無理をするのではなく、症状を医師によく話し、うまく使うという考え方で薬を利用してみることも考えてみてください。
夏の疲れを秋まで引きずらないために、寝苦しい夜でもしっかり眠れる工夫をしましょう。
【取材協力・監修】
板橋聖子
東京女子医科大学医学部卒。東京女子医科大学病院にて外科医として勤務。出産と子育てを経て、現在は東京女子医科大学予防学科兼女性科(非常勤講師)と「優ウィメンズクリニック」(http://www.you-wcl.com )にて勤務中。病気の相談はもちろん、女性特有の悩みや子育て、仕事など、患者のバックグラウンドをよく理解した上での診療を行っている。優ウィメンズクリニックは、スタッフは全員が女性の、最新設備が整った女性専用クリニック。