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【泌尿器科医が解説】すぐトイレに行きたくなる人と、長く我慢できる人は何が違う?「オトナ女性」の素朴な疑問を聞きました

年齢とともに気になってくる排尿の悩み。とはいえ、友人や身近な人にも意外と相談しづらいもの。そこで「排尿や泌尿器疾患について正しく知ろう!」という連載をスタートします。教えてくれるのは泌尿器科のドクター、京都の二条城エリアにある「いぬいクリニック」の院長、乾将吾先生です。
まずは、排尿の仕組みについてお話しいただきました。

そもそも「尿」って何からできている?

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私たちは毎日、当たり前のように排尿しているものの、自分の体の中でどんなことが起こっているのか、正しい知識がある人は少ないのではないでしょうか。私自身、自分の尿の回数や量などについて、じっくりと考えてみたことがありません。
乾先生、そもそも尿って、一体何ですか?

「体中を巡っている血液から、タンパク質など体に必要な成分が取り除かれたものが尿です。体の中にある余分な水分と、代謝によって出てくる老廃物が含まれています」(乾先生、以下同)

尿は、体の中のいらないものを出している、というイメージはありましたが、もともとは血液だったんですね。では、私たちはどんな仕組みで排尿をしているのでしょうか。

「尿はちょうど腰の辺りにある腎臓という臓器で作られます。腎臓は左右に1つずつあり、血液中から余分な水分や老廃物を取り分ける働きをしています。そうして作られた尿は、尿管という細い管を通って、膀胱にたまります。

膀胱に尿が一定量たまってくると、神経を通って脳に指令が届き、尿意を感じて排尿する、という仕組みです」

腎臓で尿が作られ、それが膀胱にたまる。私たちは“膀胱に尿がたまった”という脳への指令を受けて、トイレに行っているんですね。

すぐトイレに行きたくなる人と、長時間我慢できる人は何が違うの?

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では、膀胱にどのくらい尿がたまると、尿意を感じるのですか?

「最初に排尿がしたくなったときのサインを『初発尿意』といいますが、膀胱に100~150mlほどたまると、人はトイレに行きたくなります。ただ、この量はあくまでも平均値なので、人によってはもっと多い人もいれば、少ない人もいます」

確かにすぐにトイレに行きたくなる人と、長い時間、我慢できる人がいますよね。膀胱の大きさによって、ためられる尿の量が違うのでしょうか?

「そもそも尿がたまっていない膀胱は、空気が入っていないしぼんだ風船のようなもの。ペットボトルのようにもともと容量が決まっていて、そこから溢れそうになると尿意を催すのではなく、空気で風船を膨らませるように、尿がたまることで膀胱が膨らんでいくイメージです。

膀胱にためられる尿の量は、その人の膀胱の大きさにもよりますが、実際にはその人が普段どれだけ水を飲んでいるかという習慣や、膀胱から神経を通って脳へ送られる信号との相互作用によって変わるんです。

膀胱が尿で満たされる速度や、尿意を感じる強度の感覚には個人差があり、これらは健康状態や生活習慣によっても影響されます」

ということは、普段どれだけ水を飲んでいるかによって、膀胱にためられる尿の量が変わるということでしょうか?

「そうですね。水を多く飲むと、膀胱にたまる尿の量も増えます。膀胱は伸縮性があるので、尿の量に応じて大きくなり、ためられる量が一時的に増えるんです。ただ、その大きさはずっとキープされるわけではなく、水を多く飲み続けたからといって、もともとの膀胱の容量が大きくなるわけではないんです」

膀胱が伸び縮みするとは、知りませんでした! 尿の量が増えれば、それだけ膀胱が膨らんで、ためられる量も増えるのですね。

そして、膀胱が伸び縮みするということは、その伸縮力は、膀胱を作っている組織の性質によるということですよね。膀胱は尿の量に応じて伸びることができるけれど、加齢やカラダ全体の健康状態によっては、その機能に変化が生じてくることもある、と。年齢を重ねるにつれてトイレを我慢しづらくなる人もいる、というのも納得です。

尿の「量」や排尿の「回数」は、どのくらいが正常?どこからが「頻尿」?

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では、1回の排尿ではどのくらいの量が出ているものなのでしょう?

「最初に排尿がしたくなる初発尿意は100~150mlで起こりますが、そこから尿がたまって、排尿時には250mlぐらいになります。一般的には多くても500mlまでといわれていますが、なかにはそれ以上ためられる人もいます。1日の総量の平均は1000~1500mlくらいです

とはいえ、実際にどのぐらいの量を排尿しているのか、量ったことがない人がほとんどです。

「1回に出る量が少なければ、それに伴って排尿の回数が増え、頻尿(ひんにょう)といわれる状態になります。ただ、排尿の症状は主観的なものが多いので、排尿の量や回数よりも、ご自身が困っているかどうかのほうが重要です。もし生活に支障が出るなど、お困りのことがあれば、泌尿器科を受診しましょう」

なるほど。平均的な回数はあくまでも目安として、日常生活に支障を来すようであれば、泌尿器科を受診するのがよいのですね。

普段、自分が1日に何回トイレに行っているのか、意識することはあまりありませんが、一般的にはどのくらい行くものですか?

1日7回以下が平均です。ただ、それより多いからといって、すぐに病気かというと、そんなことはありません。例えば、1日にたくさん水を飲まれる方は、当然、排尿の回数も多くなります」

回数の多い、少ないだけで、神経質になる必要はないとのこと。安心しました。

尿の色が濃いときは「体に水分が足りてない」サイン

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尿といえば、色も気になるところ。濃い、薄いなど、注意して見たほうがよい点はありますか?

「水をたくさん飲んでいる人は、どんどん透明に近い薄い色になっていきます。反対に飲む量が少ない人は、オレンジに近いような濃い黄色に。

体の中の老廃物を体外に流すのが尿なので、摂っている水分が少ないと老廃物の割合が高くなり、濃い色になります。尿の色だけを見て、疾患の有無を判断することはできませんが、尿の色を見れば、体が脱水状態かどうかの目安になります」

乾先生によると、尿は熱中症かどうかの判断の目安にもなるそうです。

「熱中症は症状が出るまでなかなか気付きにくいものですが、尿が黄色く濃いときには脱水気味です。尿の色の変化に気付いたら、意識して水を飲みましょう」

人の体の50~60%は水分でできているといわれています。体内の水分量をコントロールすることは体の基本的な働きに関わることで、とても重要です。体内に十分な水分が行き渡っているのかどうか、尿の色や量を見ることで判断することができると、乾先生は言います。

今の40代女性は知っている人も多いと思いますが……一時期、水をたくさん飲むと痩せる、というダイエット法が流行ったことがありました。水は飲めば飲むほど体に良いのでしょうか?

「水を飲むと腸が刺激されるので、排便しやすくなり、便秘が解消されることがあります。それが結果的に痩せることにつながるかもしれません。ただ、水は飲めば飲むほど体に良いというわけではなく、1日に2ℓも飲めば十分です。運動量の多い方や、半身浴で汗をかきたいときなどは、たくさん飲んでも問題ありませんが、無理して多く飲もうとする必要はありません」

そうなんですね。子育てや家事、仕事などで忙しいと、つい水分を摂ることを忘れがちになる私たちオトナ世代の女性たち。でも、日ごろから尿の色や量を見ることを習慣にしながら、適量の水分摂取を心がけていきたいです。

知れば知るほど奥深い、「尿」の世界。次回は「頻尿と尿もれのお悩み」についてお届けします。


 

【取材協力】

乾将吾(いぬい しょうご)先生。
いぬいクリニック院長、日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医・指導医。
2009年、京都府立医科大学卒。卒業後、同泌尿器科に入局。京都府立医大病院のほか京都市内の複数の病院で勤務後、在宅医療にも従事し、より広範な医療現場を経験する。
2022年「いぬいクリニック」を京都の烏丸御池・二条城エリアに開院。

クリニックを診療の場としてだけでなく、人々が集うコミュニティへと発展させるべく、フラットスペース「いぬいのいこい」をクリニック2階に設けワークショップなどを開催。

いぬいクリニックwebサイトはこちら。

安藤梢
安藤梢

フリーランスのライター。専門分野は医療。
出版社での営業職を経て、「人の話を聞く仕事がしたい」という思いでライターに転身。病院や医師の取材を中心に、医療系の雑誌、Web、広報誌、企業のオウンドメディアなどでインタビュー&ライティングをしています。夫と猫との2人+1匹暮らし。ライフワークは医師の人生についての聞き書き。

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